2015年8月19日(水曜日)
【東京都】 中野新橋
川田君の家を出たのはお昼前だった。
二日酔いがひどい…………
たいして飲んでないのに気持ち悪くて体がだるくてたまらん……………
ふらふらしながら駅に向かって歩くんだけど、今日もまた真夏の日差しがアスファルトを焼いていて、歩くだけで汗が流れてくる。
うー、気持ち悪い。
肩にかけているバッグがかさばって歩きにくい。
何がこんなにかさばってるのかと見てみたら、そこには昨日伊藤親分から受け取った大事なものが入っていた。
昨日のこと。
伊藤親分のところに行ったのはただお寿司をご馳走になるためではなく、大事な話をするためだった。
伊藤親分は俺たちが会社に到着すると、すぐにあるものを取り出した。
リコーダー。
日本人なら誰でも吹いたことのある楽器。
このリコーダーを見て小学校を思い出す人がほとんどだと思う。
なぜ伊藤親分が僕にリコーダーをくれたのか。
そろそろこの話をブログに書いていいころだと思います。
あれは僕がインドを旅しているころ。
コルカタの路上で1人の物乞いの女の子と仲良くなった。
僕はその女の子に音楽を教えて、一緒に金を稼ごうと思った。
その方が物乞いのするよりも確実に稼げるからだ。
ただお金をくれと哀れに懇願するよりも、絶対にいい。
町の雰囲気もきっと良くなる。
そう考えて、女の子に歌を教えようとした。
しかし女の子はあまり興味をもってくれず、そして僕も旅中だったので時間がなく、路上で一緒に演奏することは叶わなかった。
あれから日本に帰国して、生温い飽食の生活を送っているわけだけど、どうしてもあの時の出来事が頭から離れなかった。
いつか必ずまたインドに行って、今度はじっくり時間をかけてストリートチルドレンたちに音楽を教えて金を稼いでやろうという想いは強くなっていった。
そんなある日、ショータ君の紹介でカデルというインド人と知り合った。
カデルはインド南部の町、チェンナイで学校を経営する一族の跡取りだった。
エリートで、頭が良く、礼儀正しいジェントルマンだ。
そんなカデルに僕の計画を話してみると、カデルはうちの学校でやったらいいじゃないかと言ってくれた。
信じられない展開。
まじか?こんなにトントン拍子に行くのか?
必ず行くよ!!と言うと、カデルはすぐにご両親に連絡をとってくれ、ご両親もまたいつでも僕らのことを待ってるからねと言ってくれた。
最高の巡り合わせだった。
しかし忘れてはいけないのは、この学校に通っている子供たちはある程度裕福な家庭の子供だということ。
わざわざ僕が稼ぎ方を教えるような育ちはしていない。
あくまで僕が本気で関わりたいのはストリートチルドレンたちだ。
カデルの学校で子供たちと交流しつつ、チェンナイの町のストリートチルドレンたちに音楽を教える。
これをやっていきたい。
では楽器をどうしようか。
ギターを持っていくか?
インドで調達するか?
それとも他の楽器?
なかなか金がかかる。
僕も僕の出来る範囲でしかやれない。
自分がお金を儲けるためにやることではない。
そうやっていろいろと悩みながらどうしようか考えているときに、ある人がすごいアイデアをポンと出してくれた。
それが伊藤親分だった。
「あのなぁ、リコーダーはどうだい?リコーダーなら日本人の家に必ずあるだろ?学校でやったんだから。リコーダーは軽いし壊れないし、小さいから持ち運べるだろう?これをたくさんの人から集めて持っていけばいいんだよ。」