Q262)

下の過去問に出会いました。

京都橘大学2022年度学校推薦型選抜

⒝ Tactile paving is bright yellow so that people with weak eyesight can recognize it easily.

問3  ⒝ の内容を表す英文にするために、次の英文中の(C)と(D)に入れるの に最も適当な組み合わせを、次の中から 1 つ選び、番号をマークしなさい。

 

Tactile paving is bright yellow( C )people with weak eyesight( D )easily.

 

  ① (C)for (D)to recognize them

  ② (C)for (D)to recognize   

 

当然、答えは、「②(C)for (D)to recognize 」となっているのですが、

待てよ、どっかでもう一度目的語を入れている文を見たような…と思い、調べてみました。

下記の、Otto Jespersenの一部を見つけたのですが、判然としません。

 

① (C)for (D)to recognize themの場合でも可能なのでしょうか?

 

現代英文法講義 (安藤 貞雄)には、こうあります。↓

[F] too/enoughのあと(<目的>を表す副詞的用法)

 (26) This book is easy enough for you to understand.

(この本は、君にもわかるほどやさしい)

(27)This box is too heavy for you to lift.

(この箱は重すぎて君には持ち上げられないよ)

上例において,to understand と to lift はそれぞれ文の主語を論理的な目的語としている、遡及的不定詞(retroactive infinitive)の例である。

 

また、高等学校の授業で使う、「チャート(数研出版)」や「Best Avenue(エスト出版)」でも、解説の表現は多少違いますが、to recognize them という表現はありません。

しかし、Otto Jespersenの中に、下のような「部分」を見つけました。

ただ、「部分」しか見えないので、下のように、「it」や「them」を伴ってもよい、と書いてあるのかどうか、判然としません。

Otto Jespersen.

this wood is too hard for me to attempt to pierce it .

Benson N 273

the mysteries of it all are too great for me to attempt to pierce them.

11.67.

(上の部分が見える、検索結果↓)

https://www.google.co.jp/search?client=safari&sca_esv=022465d531b21f4c&channel=iphone_bm&q=The+mysteries+of+it+all+are+too+great+for+me+to+attempt+to+pierce+them.%C2%A0&tbm=bks&source=lnms&prmd=ivsbnmtz&sa=X&ved=2ahUKEwjzxtK21tyEAxUkQPUHHeF1AfAQ0pQJegQICRAB&biw=414&bih=714&dpr=2

 

私見ですが、Jespersenの、上のほうの文でいうと、

This wood is too hard for me to attempt to pierce it.

が成立するなら、

≒ It is too hard for me to attempt to pierce this wood.

となり、これを同意と解釈するのが奇妙に見えます。

宜しくお願い致します。

 

A)    まず、遡及(的)不定詞について整理しましょう。コンサイス英文法辞典(三省堂)のp.702にこうあります。

 

<文献1> retroactive infinitive(遡及不定詞)

 Jespersoneの用語。不定詞内の目的語に該当する名詞句を欠き、その不定詞に先行する名詞句が、論理的な目的語として、さかのぼって解釈される不定詞のことをいう。論理的目的語として解釈される名詞句の位置によって次のように分けることが可能である。

(1)  不定詞関係詞節

いわゆる形容詞的用法の不定詞。

The greatest thing to remember is this. 覚えておくべきことで最も重要なことは、このことである。

(2)  be+to不定詞

He is to blame. 彼は責めを負うべきだ。

(3)  形容詞+不定詞

この構文は、形容詞によって表される意味に対して、不定詞が補助的な限定を加える方面指定の不定詞といわれるものの一つである。

The path is easy to find. その道は見つけやすい。

(4)  目的を表す不定詞

通例、主節の目的語が、不定詞の目的語として解釈される。

Audrey kept this letter to show Paul. オードリーは、この手紙をポールに見せるためにとっておいた。

 

遡及不定詞で入試問題で頻出なのは、<文献1>の(3)に分類される、tough構文と、それと類似のtoo…to do構文・…enough to do構文である。

 

ジーニアス英和辞典の第6版のtooの1の[語法]にこうあります。

<文献2>

[語法](2) too… (for O) to do 構文について

a)      主語と同じ(代)名詞が不定詞の意味上の目的語となる場合、too…to do構文でそれを示すのは不可:This table is too heavy to lift(×it). このテーブルは重くて持ち上げられない。

too…for O to do構文では意味上の目的語は示さないことが多いが、つけても間違いではない。: This quesiton is too difficult for me to answer (it).この問題は私には難し過ぎて答えられない。

逆に、主語が人で…に副詞が用いられているときは、目的語をつける方がふつう。:Ben ran too fast for me to catch him. ベンはあまりにも速く走ったので、私には捕まえることができなかった。

 

この<文献2>の「too…for O to do構文では意味上の目的語は示さないことが多いが、つけても間違いではない。」がポイントですね。

 

 問題文に戻りましょう。

⒝ Tactile paving is bright yellow so that people with weak eyesight can recognize it easily.

この文をto不定詞の副詞用法の目的を使って、単文にするのですね。

そうすると、(c)になります。

(c) Tactile paving is bright yellow for people with weak eyesight to recognize (it) easily.

選択肢が、下記の二つしかないので、②が正解になります。

  ① (C)for (D)to recognize them

  ② (C)for (D)to recognize   

仮に、③(C)for (D)to recognize itがあれば、それも正解になります。

おそらく出題者は、③(C)for (D)to recognize itを出すとそれも正解になってしまうので、itをthemに変えたのでしょう。選択肢を作る際によくやる手です。

 以上です。

 

なお、ご質問がある方は、以下のルールを踏まえてお願いします。                                              

 

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