PITTI SNAP by BEAMS 2016A/W スーツ編 | ELEMENTS OF STYLE

PITTI SNAP by BEAMS 2016A/W スーツ編

 

前回のジャケット編に続き、今回はPITTI SNAP by BEAMS 2016A/W スーツ編です。

 

クラシックなスタイルが再注目される中、しばらく新しいトピックスのなかったスーツも様々な変化が見られます。

 

コーディネートを紹介しながら、今シーズンのスーツスタイルのおさえるべきポイントも解説しましたので、最後までじっくり読んでいただければと思います。



 

 

 

ヘリテージ感漂うソルト&ペッパーの3ピースは、この角度からは見えませんが、チェンジポケットが付いています。

本人から直接聞いたのですが、このスーツはミラノのサルトリアで仕立てたモノだそうです。

 

 

 

 

ヘリテージ感のある素朴な生地なので、コーディネートを間違えると野暮ったくなりますが、ノータイで襟元に赤いバンダナを巻いたり、ソックスを赤にしたりして、彼なりにアレンジを加えて野暮ったくならないようにコーディネートしています。

シャツの襟がラウンドカラ-というのがポイントです。

このようなバンダナ サイズの巻物を巻く人が少しづつ増えています。

スーツに赤いソックスなどは賛否の分かれるところだと思いますが、彼のキャラクターを考えれば個人的にはありかなと思います。





 

 

大柄のグレンプレイドのダブルブレストのスーツは、恐らくフィレンツェのサルトリア リベラーノ&リベラーノで仕立てたモノでしょう。
 

 

シャツはブルーのオックスフォードBD、ネクタイはブルーのカシミアタイと、大柄のスーツを着る時の基本的な合わせですが、シャツがボタンダウンと言うのがポイントです。

イタリアと英国とアメリカのテイストを上手くミックスしてコーディネートしているのは、彼が英国人でニューヨークに住んでいて、イタリアのドレススタイルに対する変な先入観もなく、年齢も20代で若い感覚を持っているからだと思います。

ある意味、新しい世代のインターナショナルな感覚を持ったクラシックスタイルと言えるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

このコーディネートも英国とイタリアとアメリカのミックススタイル。

 

 

 

スーツはイタリアのあるブランドのモノで、芯地の入っていない柔らかい仕立てのジャケットにプリーツ入りのパンツの裾幅を細くして穿いています。

スーツは完全なイタリアンスタイルです。

シャツはネクタイブランド DRAKE’S のシャツで、英国のシャツメーカーCLEEVE OF LONDONで作られています。

英国製ですが、シャンブレーのBD と言うのもポイントです。

ネクタイは ドレイクスのニットタイ です。

 

タイドアップした時にボタンダウンの襟のボタンを外すのはイタリア人がよく使うテクニックですが、英国人の彼もイタリア的なテクニックを使っています。

靴はALDENのスエードのチャッカブーツ

 

彼の父親はTURNBULL & ASSER のデザイナーだったという、言わば英国ファッション界のサラブレッドとも言えますが、英国モノで全身を固めるようなことはありません。

彼もまだ30代ですが、彼もまた新しい世代のインターナショナルなクラシックスタイルを実践するひとりであると言えます。





 

 

この4枚の画像に共通しているのが、ダブルブレストのスーツにタートルネック、そしてブラックカーフのタッセルスリッポン。

 

偶然撮った画像がダブルブレストばかりでしたが、スーツにタートルネック というコーディネートがかなり多く見られました。

 

 

 

 

 

昨年はジャケットにタートルというスタイルが多く見られましたが、スーツにタートルネック というスタイルが完全にポピュラーになりました。

コーディネートに悩んだときなど、手持ちのスーツにタートルを合わせるだけで、そこそこサマになるので、お助けコーディネートとも言えます。

上の画像のようにベルトレスのパンツにはタートルの裾をインするコーディネートも多く見られました。

 

それにしてもブラックカーフのタッセルを履いた人が異常に多いです。

以前はストイックすぎるという理由で、イタリアでは履く人が少なかったブラックのシューズですが、その定説も完全に変わりました。

 

今はブラックカーフのシューズを履く人が急激に増えているというのが実状です。

 

そして、スーツにタートルというリラックス感のあるスタイルには、スリッポンの中で最もエレガントさを感じさせるタッセルを合わせる人が多いのも理解できます。

 

 

 

 

 

今シーズンのトレンドでもあるモノトーンのコーディネート。

 

 


黒に近いチャコールグレーの3ピーススーツはサルトリア仕立てでしょう。

2インプリーツのパンツも雰囲気がいいです。

ジレのボタンをスーツと同じ生地でくるんでいるので、フォーマルスーツのようにも見えます。

 

ネクタイも白黒の千鳥格子、まるでウェディングに出られるようなシックな装いですが、今シーズンはグレーを基調にしたモノトーンのコーディネートも多いというのが傾向です。

靴はブラックカーフのセミブローグです。


 

 

 

 

ライトグレーに見える4つボタンのダブルブレストのスーツは、よく見るとグレンプレイドに赤いウインドウペンという、かなり英国感のある生地。


彼はプーリアのサルトリアなので、スーツもサルトリア仕立てです。

 

 

 

ネクタイはブラックタイで、ホワイトのシャツはボタンダウンの襟のボタンを外しています。

 

イタリア人だと、このコーディネートの場合、ネクタイは濃紺の無地と言うケースが多いのですが、彼はブラックのタイを合わせています。

クラシック系のイタリア人でブラックタイというのは珍しいです。

彼らは新しい世代のサルトリアなので、感覚も従来のイタリアのサルトリアスタイルとは違うという印象です。

 

彼も靴はブラックカーフのキャップトウです。



 

 

 

グレーの無地に見えるスーツは、良く見ると細かな柄が入っているピンチェック。

上の画像と同人物の別日のコーディネートです。

 

 

 

やはりサルトリア仕立てなので、パッチポケットがダブルポケットという変わったディティールになっています。

こういう仕様も感覚の若いサルトリアならではです。

老舗のサルトリアにこんな仕様を頼んだら確実に怒られます。(笑)

 

パンツは2インプリーツでハイウエスト気味のベルトレスです。

スーツもインプリーツが少しずつ増えて来ています。

シャツはやはりボタンダウンの襟先のボタンを外しています。

 

この日もブラックタイ。

おそらくブラックタイが彼の最近のマイブームなのだと思います。

 

靴はこの日もブラックカーフのキャップトウ。

以前は色モノの靴を履くことが多かった彼も、最近はブラックカーフの靴を履くことが多くなっています。



 

 

 

スーツスタイルもプリーツ入りのパンツが多くなっているのはジャケットと同じ流れです。

クラシックなスタイルが戻ってきてから、急速にクラシックなディティールも戻ってきているというのがスーツにおいても言えます。

画像を見てもわかると思いますが、元々サルトリアのスーツは着丈が短めなので、パンツのスタイルが変わっても着丈の長いスーツは出て来ていません。

ナローラペルでヒップの半分が出るようなジャケットは元々の出所が違うので、クラシックなスーツの傾向とは全く別なモノだという事をご理解ください。

また、仕立てに関しても柔らかくナチュラルな仕立てという傾向は変わっていませんので、肩パッドが入ったような構築的なジャケットが戻ってくるというような傾向は今のところありません。

クラシックな既成のスーツであってもサルトリア仕立てのスーツであっても、上の画像を見ても分かる通り、柔らかなショルダーラインのスーツが主流であることがわかると思います。

 

英国調というキーワードが出ると、すぐにサビルロウのようなスタイルや仕立てを連想される方も多いのですが、我々が考える英国調と言うのは、ディティールやアイテムや素材や柄からイメージされる英国的なテイストを取り入れることであって、80年代の英国調ブームの時のような、リアルな英国スタイルをそのまま真似するようなことではありません。

それは、今のPITTIで打ち出される英国調も同じです。

 

BEAMSでもそこを勘違いしているスタッフも多かったので、しっかりレクチャーしました。

それもクリエイティブディレクターである私の仕事です。
 

 

 

 

 

 

そして、スーツスタイルにブラックカーフの靴を履く人が急激に増えていることは間違いありません。

先にも述べましたが、イタリアではブラックの靴はストイックすぎるという理由で、ダークスーツにもブランウンのシューズを合わせるのが今まではポピュラーでしたが、これだけイタリアでブラックのシューズがポピュラーになるのは、私がバイイングをするようになって20数年で初めての事です。

それだけ、ブラックカーフの靴が現地でも新鮮に感じられるのだと思います。

 

こうやって見ると、ブラックカーフのタッセルとブラックカーフのオックスフォードの靴は、今シーズンのマストアイテムと言えるのだと思います。

 

 

 

 

 

 

長く続いたドレスクロージングのカジュアル化の波も収まり、再びドレススタイルが戻ってくると同時に、スーツスタイルもステレオタイプのイタリアンテイストではなく、英国やアメリカのテイストも取り打入れながら進化したクラシックスタイルとなって戻ってきたという印象です。

そして、その流れは単に一過性のトレンドとして新たに出てきたものではなく、過去にクラシックの世界で流行ったものが、時代性を取り入れリバイバルしているというのが今の流れではないかと思います。

 

見たこともないモノが色々出てきて戸惑っている方も多いと思いますが、これもカジュアル化の傾向からドレスへの移行期であるので仕方ないことだと思います。

 

 

 

 

 

 

と言うことで、英国、米国、イタリアのクラシックを一巡している私は、今の流れは何も違和感もなく疑う余地もないので、こんなスーツをオーダーで作りました。
 

大柄のグレンプレイドの3ピース。

 

 



チェンジポケットを付けました。

 

 

 

 

 

 



パンツは2プリーツです。

もちろん、ブラックカーフのドレスシューズもスタンバイしています。

 

昔買ったモノを磨いただけですが・・・(笑)

 

フルブローグとタッセルは揃えたいですね。