◆田島かおりさん インタビュー◆

【プロフィール】

田島 かおり(たじま かおり)

東京都生まれ。武蔵野美術大学視覚デザイン学科卒業。

デザイナーを経て、あとさき塾にて絵本を学ぶ。

著作に、『NEIGE』(Lirabelle)、『ボクはせっけんくん』(教育画劇)など。


(写真:『おべんとうはママのおてがみ』(教育画劇)原画展@トムズボックス+ギャラリー 15/3/3撮影)


2015227日~34日 東京・吉祥寺のトムズボックス+ギャラリーにて『おべんとうはママのおてがみ』(20153月 教育画劇刊)絵本原画展が開かれました。田島さんにとって、国内絵本として初めての出版です。

インタビューの場には「二人三脚で作品を作り上げた」(田島さん談)という編集ご担当の清田さんも加わってくださいました。




『おべんとうはママのおてがみ』(田島かおり作 教育画劇刊)
 〈お弁当をつくるすべてのママへ 「ありがとう!」をいおうよ!〉(帯文より)





◆「絵本へのきっかけ」


東條:田島さんが絵本を作るようになったきっかけをお聞かせください。 


田島さん:私は美術大学を出ているのですが、当時絵本に関する分野は専攻していませんでしたし、絵本を作ろうなどと考えてみたこともありませんでした。

卒業後、池田あきこさんが代表を務める「わちふぃーるど」へ入社。ハンカチやバッグ、カレンダーなどのデザインを手掛けました。絵本作家である池田さんの下で働いている時も自分で絵本を作るなんて想像すらしていませんでした。

 

入社して数年後、「アメリカで暮らしてみたい」という子どもの頃からの夢を叶えるため渡米を決心。

アメリカでシルクペインティング(=絹絵。染料を使って直接シルクに描く。クッションカバーやスカーフなどの製作に用いられる画法。 田島さんの作品HPにありますに出会いました。

商業デザインの現場ではどうしても小さな枠の中に描く必要があったので、シルクの布という大きなキャンバスに描けることがうれしくて、しばらく夢中で学びました。

 

帰国後は古巣の「わちふぃーるど」さんでそのシルクペインティングの仕事をさせていただいたり、カフェでアルバイトなどもやりながらイラストを描いていました。

 

その後、ふとしたきっかけで、絵本作家養成ワークショップあとさき塾に通うようになりました。そこでフリーの編集者さんである土井章史さんや小野明さんから厳しい指導を受け、絵本というものについて初めて目を見開かされました。

 

この当時描いていた絵本のラフのひとつが、のちに『NEIGE』(邦訳:ゆき 仏Lirabelle社刊)邦訳:ゆき 仏Lirabelle社刊)

のタイトルでフランスから出版されることになりました。

2011年、イラストレーターの仲間と行ったイタリア ボローニャのブックフェア ボローニャのブックフェアでフランスの出版社を営むご夫婦の目にとまったのです。2014年にはスペイン語版の『LA NIEVE』(邦訳:ゆき)も出してもらいました。


  

一枚一枚が手描きの紅葉、雪の白。

ふゆごもりのため、おともだちはだれもいなくなっちゃったけど・・・

鮮やかな色彩に漂う静謐。大判の美しい絵本。




田島さん:ボローニャへ飛んだのは震災から本当にまだ日も浅い時期

大きなショックから覚めず、日本を離れていいものか迷いもありましたが、このブックフェアへ参加することによって私自身、ようやく平常を取り戻すことができました。忘れられない出来事です。





 

◆編集者の目にとまったイラスト展

 

東條:新刊『おべんとうはママのおてがみ』(教育画劇)はどういった経緯で生まれたのでしょう。 

田島さん:フランスで出版された後、いろいろな絵本関係のグループ展に参加していました。その頃ある展示をご覧になった清田さん(教育画劇 編集者)から「紙芝居を描いてみませんか」というお話をいただいたのが最初のきっかけです。

 

清田さん(編集担当):その当時、ちょうどしつけをテーマにした年少向けの紙芝居を企画していたのですが、教育的な内容ではあるけれども、幼い子どもたちにも分かりやすく、かわいく、楽しんでもらえるお話じたての紙芝居にしたいと考えていました。田島さんの描くやわらかい優しい雰囲気の絵が、私のイメージする紙芝居にぴったりだと思い、お声がけしたのです。



『ボクはせっけんくん』(田島かおり作 教育画劇刊)


「ボクは、せっけんくん。
つるつる気まぐれなボクだけど、
大事に両手で包んで
まあるくやさしくこすってくれたら、
みんなをピカピカ綺麗にするよ!」

(教育画劇Hpより)




◆“お弁当にこめられた思い”に焦点をあてた絵本


田島さん:読み手に投げかけたいテーマをもとに、紙芝居を作りあげていくことはとても新鮮な作業でした。それから編集の清田さんとは、何かまた楽しい絵本も考えたいですね、とお話するようになりました。

 

清田さん(編集担当):あるとき、いま日本のお母さんたちの作る楽しくて美しいお弁当が国内外でとても注目されている、という話題になりました。忙しい時間をやりくりしつつ、ニンジンをハートや星に型抜いたり、おにぎりをサッカーボールにしたてたり…。絵本では「キャラ弁」としての仕上がりの美しさというより、ふたを開けた瞬間、子どもに驚いてほしい、喜んでほしい、というお母さんたちの“お弁当にこめた子どもたちへの思い”に焦点をあてた作品を描いて欲しいなと思ったのです。それからいろいろ2人で話し合って絵本という形にしていきました。

(原画展会場には絵本に登場するお弁当レシピがずらり。これは嬉しい♪)



「ブロッコリーはゆでて、おにぎりもちゃんと作ってみてから描きました。

「生のブロッコリーとの違いは歴然」と言われて(笑)」(田島さん談)


(上記写真すべて『おべんとうはママのおてがみ』原画展会場にて撮影 15/3/3


(②へ続く)