横溝正史 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

ここんとこクラシックミステリーがちょっとブームになっていて
海野十三の「蠅男」
とか
江戸川乱歩の「黒蜥蜴」
とか
横溝正史の「悪魔の手毬歌」
なんかをとっかひっかえ読んでいたら、
限界集落でものすごい事件起きましたね。
タイミングよすぎてかるくびびりました。

これらの小説の時代背景は、だいたい戦後、でしょうか。
何がいいって、
人物がみんな綺麗な言語を扱うのが心地いいのですね。
ごんたくれのおっつあんだって
目上筋にはちゃんと則に沿った態度とったりするものだし。
もちろんプロの作家が一から創った物語なんだから
キャラクターの口が滑らかなのは当たり前かもしれないけど
娘を殺された夫人がとつとつと心情を訴えるシーンなんぞ
因で始まったことを
果に収め入れる手段の鮮やかなること

端正な数式読んでるみたいですよ。

そこ行くと今は酷いですよね、やっぱり、
言語が。
話題ちゃうけど特攻隊で出撃されたかたの最後の手紙とか
剃刀みたいに正確な文章ですもの。

それにしてもこの時代の文章を読むと
農村部に住んでいる人達が
いかに互いに差別や侮蔑感を感じかつ与え合っていたかよく分かって興味深い。

農家でいっても
一番位が高いのは米つくり農家で、
野菜や馬草を作る家は身分が低かったとか。
さらに農家でもなく代々温泉でお風呂屋さんを開いていた家なんか
まるで人外の者みたいに軽んじられていたとか。

そして戦争が終わってそういった仕組みのもろもろが吹っ飛んでしまった時
長年たまりに溜まった被差別者の鬱憤が
無自覚な人達を根こそぎ焼き尽くすほどの熱量で噴出する。

すさまじい世界だなと思う。

それ自体は今でも変らないんだろうけど。
戦後はけして過去ではないのだ。