絵本・『パパ、ママ、バイバイ』 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

※珍しい感情的なこと書きます。
薄い背表紙に、
ミイラ状に全身包帯で巻かれた小さなこどものイラスト。
あまりの只ならなさに、 思わず立ち読みしました。
立ち読みして、
森本泉は普段あんまそういうことはしないんですけど、
めそめそ泣きました。 人前で。
育ちのいいお嬢さんみたいに、 30面が、
雛鳥みたいなぴやぴやした声で、 ずーっと泣きましたよ。
周りに人居るのに。

『横浜米軍機墜落事故』。
1977年、森本も生まれてない頃の出来事ですから、
もうほとんど人の記憶に残っとりませんでしょうや。
住宅地に、トラブルを起こした米軍の偵察機が墜落して、
エンジンが爆発、燃料に引火して炎上。
お母さんと幼子二人が全身をほとんど焼き尽くされる重症を負った。
そこへ颯爽と降り立った自衛隊ヘリ。(↓ここからはあえて意地悪に書きましょう)
のこのこ歩いてきた米兵をピックアップしたら、
またかっこよく飛び去っていきました。
お母さんたちには近所の方が救急車を呼んだそう。

ねえ、隣近所の国の方は、
『日本が原爆落とされたのは天罰だ』
いうとられるそうですね。

これも天罰でしょうや。
三つ四つの子どもやものも言えない赤ちゃんが、
バーベキュー見たいに丸焦げになって、
あまつさえ、 それで死ねずになお生き延びて、
その間水も飲めず身動きも取れず、
激痛で泣きわめいて、
で力尽きて亡くなったと。
これも天罰でしょうや。

自分がこの本を読んで思ったのは、
その辺を歩いている中国人留学生のチンさんをとっつかまえて
納屋に引きずり込んで
竹箒でぼこぼこになるまで叩いて、
で正座させて、
「この本を一万回朗読せい!!!」
てやりたいということだけど別にしませんよ、
チンさんが悪いわけじゃないし。
(そもそもチンさんなんて居ねえ)
でもね、何が言いたいのかと言うとね、

やられっぱなしはこっちも同じだ。

確かにかつて「鬼のような日本兵」が
お宅の赤ちゃんをバーベキューみたいに火で焼いて、
それで面白がったりしたでしょうや。

あるいはマクロな視点で見るということも出来るでしょう。
国内で米兵が事故を起した時、
対応に問題があるとあちらとの外交上
なんだかんだ言われる恐れがあったなど。
その上で、自衛隊のヘリ操縦していた方は
忸怩たる思いでその場を離れたことだろうと。
あるいはこういう書籍を発行することで、
当時の政権与党にああだこうだ言ってやる
格好の材料ができたということでもあったでしょう。
政治的戦略意図というやつでしょう。

そういうことは、理解出来る。
森本泉はひらがな読めますから、
そういうことを言われたら理解は出来るのです。
理解するのと納得するのは違います。
しかし納得することができなくても、
理解はするんです。

理解もしなけりゃ
納得もしないで
隣近所の国のひとは
何を言っているつもりになっているのか。
分かっていっているのなら
いったい何を分かっているのか。

珍しく居もしない相手に向かって怒りをぶつけています。
天に向かって吼えています。
しかし物分りよくお行儀よく空気を読んで対処するのは、
人たるものの「マシーン」が担当するものです。
「動物」である人の本分は、
ただこのやるせない出来事に
吼えたりわめいたりすることだと自分は疑いません。


早乙女勝元 「パパママバイバイ」


横浜米軍機墜落事故