十二国記 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

言わずと知れた人気作。
「十二国記
月の影・影の海」

一度手を出したらあと引いて面倒になるから
手ださんとこ
手ださんとこ

とおもっていたこの一大スペクタクルアジアンファンタジーに
先日とうとう手を出してしまいました。

シリーズ一作目(エピソード0もあるようですが)
にあたる
「月の影・影の海」上・下では、

一般普通の女子高生が意図せずして異界に迷い込み、
怯え、戸惑い、傷つき荒み、身も心もぼろぼろになりながらも
本来の自分を取り戻すまでの前哨戦


といったお話が綴られます。
(わかりきっとるわい、という方が多いでしょうなあ、大人気作だから)
殊もりもとが印象深かったシーンがあります。

右も左も分からない異世界で生死の危険に晒され続ける主人公が、
偶然手にした宝剣の魔力(?)によって元の世界のようすを垣間見る。
その時、
主人公の居なくなった世界では、突如として姿を消した彼女に対し
学校の教師や友達だと思っていた同級生が
実に辛辣に彼女について評価するわけです。

家出するなんて不良だ、陰でなにやっているか分ったものじゃない、大人しそうなふりしてたのに本性を出したんだ、もう死んでるかも知れない。

とうぜんこの言い草は孤独な彼女の心をさらに追い詰めていきます。

自分がこのくだりを読んで連想したのは、
北朝鮮の拉致被害者家族である横田夫妻のことでした。

御息女が若干13歳で姿が見えなくなったとき、
こんなふうに口さがないことを言う近所の人も 多かったのではないだろうか。

中学生が急に居なくなったら家出だ、不良仲間と出て行ったんだ、可愛い顔して本性だしたな

実際そうだったら取り残されたご両親がどれだけ苦しめられたことだろう。

我々の敵は常に、
海の向こうからミサイル飛ばしてくる人じゃなくて、
隣で手を握ってくれているあなたなのかもしれない。

みんななかよく元気よく、けんかしないで毎日たのしく。

この不文律によって私は自分の嫌悪を外に出せないまま胸空で養い続けてしまう。

あんたの敵を愛せ
と言ったのはイエスだそうだけど、
いっそのこと 
お前の友人を嫌え 
くらいのスタンスがこれからは必要でないだろうか。

誰も彼も腹の中を見せ合わない。
本心を語るということがない。
結局誰とも仲良くできない。つまらない。何かの解決を期待するというわけでもない。
でもきちんと仲良しになろうと思ったらどうしてもこう云わねばならぬ。

私は
あなたのことが嫌いだ。