長編お話「東尾言語」の39 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

私はみかちゃんから借りた
『超古代はハイテクノロジー社会だった!』
と言うペーパーバックの本を面白く読んでいた。
みかちゃんはピラミッドの研究だけじゃなくて古代遺物とかオーパーツなんかの話題が好きだ。でもちょっと不思議な感覚でそれらを愛しているのだ。
みかちゃんの言葉、

「私のライフワークはオーパーツ崩しなの!!」

オーパーツ崩し。
オーパーツと言うのは“出土した年代にはどうしても不可能な技術で作られた遺物”
と言うものらしいのだけど、彼女は

「あるからにはどうにかしたら作れてるはずなの。おかしな技術があった訳じゃないよ。どうにかして作れてるんだもん。」
と言う。
オーパーツを不可能な技術ではなくて、
どうかこうかしたら人の手で作れるものじゃないのか、と証明するのが夢なんだそうだ。
小学生の時に、大ピラミッドを今の技術で作ろうとしたら何人で何日掛かりますか?
と近所の石屋さんに取材に行ったと言うのだからすごい。
因みにその時石屋さんも何日掛かるか分からなかったそうだ。
この間は
「ヴォイニック写本が手の込んだイタズラだと断定されたってニュースで言ってた!」
と喜んでいたし。
「私あの本すごく好きなの。レプリカでいいから販売してくれないかなあ。」
みかちゃんは夢想していた。


私はみかちゃんから借りた本をベッドを置いている壁に凭れて読んでいた。
『銅鐸に刻まれた紋様は電子回路であり叩いて空振させることによって情報が空気を伝って波及し、
遠隔地との通信を可能にしていた。』
なんて書いてある。

「んなわきゃない。」
とみかちゃんは言う。
「でも遠隔地とどうにかして通信してたってことは、無いことも無いんじゃないかと思うのよ。」
と本を返した時に話してくれた。
今度の連休に黒俣山に登ってくるのが楽しみだ。とうきうきしている。

そんなみかちゃんと遊んでいると、なんだろう、私は人に誇るほど夢中になっているものってないなあ、なんてことを思う。

夏休が終わって大学に戻ってきてから、

もう、カケを手にはめることもないだろうな。
と感じていた。弦が切れてしまったのだ。私の中で、弓の弦は永遠に切れてしまった。

となると何か外のことにエネルギーを使いたい欲求が頭を持ち上げてくる。
私も何か新しいことを始めたい。

今度の休みにみかちゃんみたいに私も何処か旅に出てみようかな、等と思い旅行ガイドが読みたくなって終夜営業の本屋さんサンダル履いて出掛けた。