長編お話「東尾言語」の45 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

「じゃあその東尾言語って人についてピラ研の先輩に聞いてみるからね。
折り返し電話するからちょっと待ってて。」
私は、ありがとう、と言ってみかちゃんの電話を切った。
床に転がったままずっと話していた。
東尾先輩が何処にも居ない。今までずっと探していたのに何処にも見付からなかった。私は、自分で思っていたより疲労していたみたいである。
だからみかちゃんに心から、ありがとう、と言った。
それにしても玄関に転がっていたから余計にあっちこっち痛くなっていた、体が。

私は取り合えず起き上がってコートを脱いでその辺に投げると、洗面所に言って顔を洗った。
石鹸を思いっきり泡立ててふわふわにして顔を思う様洗った。
お湯で流してタオルで拭いたあと、ふやけるんじゃないかってくらい化粧水をつける。いや、既にふやけたようなワタシのほっぺたはそんなこと物ともしなかった。

お腹は空いていたけどとにかく暖かいものが欲しくて私はみかちゃんの電話を待つ間に、ほうじ茶を入れて飲んだ。
ああ私の中は今なんて空っぽ。
そう実感させるように、ほうじ茶は私の筒みたいな体の中に落ちていった。

一時間ほどしてみかちゃんは電話をくれた。どうもピラ研の中に東尾言語について詳しい先輩が居なかったみたいで、そのまた先輩の友達に聞いてもらったりしていて結構時間を食ったの、とみかちゃんが言う。とんでもない。私は文句なんか言わないのだ。

「東尾言語さんは後期が始まる前に休学届け出したんだって。実家に帰ったまんまなんだって先輩の友達が言ってた。」
ごめんねそんだけしか分かんない。とみかちゃんは言う。
「そんなことない。ありがとう。こんどいっしょにドーナツ食べに行こうね。」
と私はお礼を言った。
「それならアイスクリーム食べに行こうよ。」
とみかちゃん。
「この時期に?」
「冬こそ食べたいでしょ、アイスって。我が家はクリスマスもアイスケーキよ。」
そのあとちょっと関係ない話をいくつかしてから、おやすみー、と言ってみかちゃんは通話を切った。

重要な事は、理解出来た。
東尾先輩は今ここには居ないのだ。では何処に行ってしまったのだろう。
私はそれを知っていそうな3人の事を考えた。