,

朝潮橋のたもとにそれは素敵な釈迦堂があります。


佃の友人に界隈を案内してもらったとき、ここの存在を

教えてもらいました。

誰もお世話する人がいないらしく、荒れ果てた感があります。


友人に言わせると、もう何十年とこの状態だそうです。


素晴らしい石の手水鉢が入口にあり、3段ほど石段を

上るように作られたお堂は破れたガラスにガムテープで

目張りがされてあり、残りのガラスから中を覗くと

観世音菩薩と書かれた額はあるものの、本来あるはずの

ご本尊様は板戸で見えないようになっています。


これでは拝みようがありません。


それでも般若心経をあげました。

これだけの立派なお堂そのものに敬意を表したくなります。


その後やはり気になり、昨日調べに行ってきました。


もし区とか町会とかの管理下の建物だったら、町の人が

献花したり掃除したりと、放ってはおかないと思うのです。

個人的なお堂かもしれません。


まずは、月島にある出張所へ。

2人の女性が応対して下さり、インターネットで調べたり   

区の文化財のほうにも連絡してくださったりしました。


現在、文化財の管理は別の所がしているそうで、今日は

お休みなので明日以降にでも連絡してみて下さいと電話番号を

教えてくれました。

下の階に図書館があったので、尋ねてみました。


お堂の入口に名前入りの石がたくさんあったので、その中の

一番偉そうな人の名前を書きとめておいたので、その人を

検索してくれて、帝国大学教授だったのですが、著書が一通

京橋の図書館にあるようだが別倉庫保管で

紙は風化していると思う。と言われました。

古い人名事典や、朝潮橋の事が載っている資料を

色々一緒に探して下さったのですが持ち主に

辿りつけませんでした。

町内会長さんの電話番号とか教えてもらいたかったのですが、

今は簡単には教えてくれません。


昔からの商店に聞かれたら分かるかもしれません。と言われ、

それもそうだと、お堂に向かってみました。


途中に古そうな喫茶店があったので入ってみました。

60代位の男性。

聞くだけでは悪いので、焼きそばとコーヒーのセットを注文。


焼そばの具はきゃべつのざく切りのみ。でも大好きな

紅ショウガが多目に添えられていて、キャベツだけでも美味しい

ということが判明。

コーヒーも美味しかったです。


釈迦堂のことを聞きましたが、ご存じなかったです。

以外と町の人は関心がないみたいですね。

でも、「お役に立てないで」と言ってくれました。

そういえば先ほどの出張所でも、図書館でも言われました。


「お役に立てないで…」  日本の古い良い言葉ですね。


店を後にして釈迦堂に行き、般若心経をあげ、

川の並びのお家に聞いてみようとぐるっと遠回りをして

古い路地に分け入ってみました。


聞けそうなお家あるかな?


洗濯機の回る音が奥のほうからするので覗いてみましたら、

私よりちょっと若そうな人。


知っていましたよ~。


持ち主は石に名前が書いてあった一番偉そうな人。

その親戚の女の人が隣の小屋に住んでお堂のお世話を

していたそうなのですが、体を悪くして病院に入り、その後

久しく、お堂は閉められたままだそうです。

何しろわたしがお嫁に来たばかりの頃のことですから、と。

その持ち主が今どこに住んでいるかは分かりませんでした。


やはり、「お役に立てなくて」と言われました。

とんでもない。こんなに分かれば。


そこのお家を後にして、川の近くにいってみました。

突き当りにプレハブの小屋がありその前で、おじさんが大工仕事

してました。

お尋ねすると,[ま、どうぞ」と開けっぱなしの小屋に案内してくれました。

3段ほど鉄の階段があり、「気をつけて」と言ってくれました。

久しく男性に優しくされていないので、ちょっと嬉しいかも。


なにやらすぐに電話に向かい

「あ、○○だけど、お堂の事を尋ねてきた人がいるんだけど、

持ち主って、今連絡とれるかね」

現在は、違う町に引っ越して、連絡先は分かりませんとのこと。


次にまた電話のダイヤルをくるくる回していましたが、留守。


折りたたみ椅子をすすめてくれて、優しい。


お堂の側の駐車場の地主さんが詳しいらしく

そこにかけてくれていました。


今いないみたいだけど、電話して訪ねてみたら、と

電話番号と名前をかきながら、「汚い字だな」と言いながら、

渡してくれました。


私がどこのだれということも、何で探しているのか、とも

何にも聞かずにここまで見知らぬ人に優しい「月島」が

すっかり好きになってしまいました。


書いてもらった電話番号の所に繋がりません。

また近々おじさんを訪ねてみようかと思っています。


小屋の中には段ボールの箱があったりしますが、とても奇麗に

整頓されています。おじさんは綺麗好きなのでしょう。

祭りの半纏とか、神輿関係の道具とかが保管されて

いるみたいです。


いつも夕方まで常駐しているみたいです。


何時行ってもそこに行けばホッとする空間と人がいる。

というのが私の目指す所でした。

おじさんに原点を教えられたような想いです。