私は思い切って田中さんに確かめてみた。

「確か… さっき母が、私が本当の子供だとか何とか言ってましたよね。」

すると田中さんは間髪入れずに、
「さあ、よく聞こえなかったから。」

私の言葉尻と重なるくらいの速さで
それに答えた。

しかし、あの母の大声なら
きっとどこに居ても聞こえたはず。
彼の私に対する、せめてもの優しさなのだろうか。

でも今の私には、そんな優しさなど要らない。
私が必要としているのは、真実と確実な答え。
誰かに真実を答えて欲しかった。

それが田中さんじゃないことに、幻滅さえ感じていた。

この家には私に真実を教えてくれる者は居ないのか。
誰一人、その場を誤魔化す人たちばかりだ。
自分たちの空間を自分たちだけで演じている。
まるでパントマイムのように感じられた。

背後のずっと遠くから、轟音を立てながら少しずつ"怒り"という突拍子もないようなエネルギーの塊が転がり迫ってきて、
私の心を捉えて離さなかった。

それは、生きてきて初めて感じる
切ない"怒り"でもあった。


〜 次回へ続く 〜





づるづると

冬の屋台の

蕎麦の音

あちこち上がる

至福の湯気よ




茶を立てる

後ろ姿の

艶やかさ

うなじ引き立つ

博多織かな



寒ぶりの

刺し身のつまの

美味しさや

主役 抑えて

味わう大根




八月の

六日に産まれし

われの身は

原爆 知らず

母が語り部




夕映えの

雲の色とて

こがね色

焼ける山の木

炎のごとく




東京の

街の灯りに

魅入られて

帰郷の想い

忘るるなかれ

私がこのBlogを始めたのは、子宮頸がんで

死というものに漠然と向かい合うようになってからだった。

それまで自分は死ぬわけない、と。

病気なんてする訳ないと。

高を括っていた。

しかし、大病になり少しずつ現実が私を拘束し始めた。

その頃から、何か自分という存在を

何らかの形で残してみたい。

そんな気持ちに私を駆り立てたのだ。

それが、このBlogを始めるきっかけとなった。 

短編小説、エッセイ、短歌、詩など

自分の気持ちや感情を表現できるものなら

何でも挑戦したいと思っている。

これからも書けるうちは、このBlogに生きている痕跡を残していきたいと思う。

ここは、私の宝の倉庫なのだから、、、。



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川のよに

流れ咲くのは

四月ごろ

なんと美し

しだれ桜よ



神社には

神主 巫女に

見守られ

袴の男

無垢の花嫁