プティヴィオロンのリハーサルは来週からですが、それより後にあるヴォクスマーナの定期演奏会のリハーサルは既に始まっております。

ヴォクスマーナは12人12声の、現代音楽専門の声楽アンサンブルです。

今回も新曲が2曲、再演が2曲です。

私は初演時にも歌わせていただいた近藤譲さんの作品と、木下正道さん、渡辺俊哉さんの新曲に参加させていただいております。

近藤譲さんの薔薇の下のモテットは、「底の底」という、蒲原有明のテキストによる9分ほどの曲で、2011年にヴォクスマーナの委嘱で作曲されました。私がヴォクスマーナで歌わせていただいた曲の中でも5本の指に入るくらい大好きな曲です。
すっごい難しいですが、すっごいいい曲です。
久しぶりに楽譜を開いてみると、当時の書き込みが沢山あるのですが、大半は何のことだかわかりません(笑)
書き込みの仕方がこの数年で相当変わったようです。

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木下正道さんの作品は、20分以上もある大作で、12人の歌い手を独特の配分でグループ分けしています。

テキストはフランス語で、非常に複雑なリズムの中に言葉を捌いていくのがとても難しいです。

特にこの部分
{4D74AE2D-6C1F-407D-B342-94E535094E43:01}


八分音符5個を3等分、すなわち5拍3連です。つまり八分音符を3等分したものの5つ分が1つの音符の音価ということになります。別の言い方をすると、1つの音符が八分音符の5/3分の長さということです。
既に普通の人には何が何だかですよね。図にすると以下のようになります。

そしてその1つ1つの音符に、"peut - être"、"le"、"déplacement"という語が当てられています。
なんていうファジーな歌詞割りなのでしょう!1つ目には3音節、2つ目には1音節、3つ目には4音節が与えられているのです。これでは1つ目と3つ目の音符の中で、、どのタイミングで2音節目と3音節目を発音したらいいのかわかりません!

まぁ3音節は3等分、4音節は4等分にしようか、ということになりました。
正確に計算すると、1音目は八分音符5/3の長さを更に3分割するので、1つ目のpeutの長さは八分音符5/9ということになります。
また3音目は4音節なので、なんと5/12!

だれができんねん!しかも全員で合わさなあかんねん!
この言葉をこのリズムで発音するのは10人ですので、この10人がこの5/9を頭の中で計測せねばなりません。

オー!マイ!ガー!

まぁ音楽ですので、そんなカチカチに考えなくてもいいのですが、書いてあることを正確に再現しようとするとこういうことになります。

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もう1つの作品、渡辺俊哉さんの作品は、大変繊細で、非常に精緻なテクニックが求められる作品です。
音楽が精妙過ぎて、譜面をめくる音がうるさく思えるほど、ピンとした空気が張り詰めます。
この作品もまた、非常に集中力を要する作品です。
この作品には、カンタータクラブの後輩の日野さんも参加します。
去年のヴォクスマーナ定期で受付をしてくれて、打ち上げに来てくれた時に誘ったのですが、参加が実現して嬉しいです。

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ヴォクスマーナに参加し始めたころは、楽譜を見るたびに、
「こんなもんできるかーーーーい!!!!」
と思っていましたが、最近は、
「ああ、なんか、いけそうやな」
くらいになりました。
もちろんまだまだ全然完璧には歌えませんし、アンサンブルと表現についても死ぬほど難しいことに変わりはないのですが、心もちとして、「なんか、できるで」くらいに思えることで、よりポジティヴに落ち着いて譜読みできている気がします。

日々成長!

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