※こちらはメールセッションの「あなたの多次元ストーリー」のものを掲載しています。
彼女の欠片たちは押並べて、その人生を一族の為に捧げていた。
それは時に、統べる者の責務であったり、
仕える者の義務としてであったりとその立ち位置は都度変化したが、
結局のところ彼女の犠牲の上に彼女の在する集団が消滅を免れたり、延命されたりしたのだった。
それを彼女や彼らは、自分の使命として何ら迷いもなく受け入れ、
真っ当することに大きな意義を見出していた。
が、そこに喜びはあっただろうか?
本来なら、自らの強い好奇心のままに自由に数々の土地を訪れ、
様々な出逢いに心を震わせていなかったか?
深く追求し形として成したいものはなかったか?
その仕上がりを、自分に宇宙に捧げたくはなかったか?
いずれの欠片もその情熱を奥深くに、開けてはならない宝として鍵をかけ、
けれども最上の絹に包むかのように大切に仕舞っていたのだった。
そして今、そんな欠片たちを見つめる彼女がいた。
そこはなだらかな丘の拡がる緑の大地で、そこここでキラキラと光るものが見えた。
それが、彼女の欠片たちの意識だった。
彼女はその意識を見護っていた。
穏やかな陽の元に戯れるように気ままに光るもの達を、
愛しく見つめひとつひとつ自分の胸へと還していくのだった。
しまわれたものの鍵ももう無く、
中の宝も既に宇宙へと放たれ彼女たちのラインへと還っていた。
それが、彼女の目下の楽しみであり、重要な案件なのだった。