ロシアピアニズムの奏法の特徴の1つに、指の関節を固めないということがあります。マルタ・アルゲリッチやウラディミール・ホロヴィッツが弾いているところを観察しますとわかる方にはわかることです。



ロシアピアニズムの奏法ではない一般的な奏法では、指自体の力で、指の関節を固めて、鍵盤の上で手全体を安定させます。よって、打鍵するときにも、やや指に力が入った状態で動かします。それをすると、打鍵が遅くなり、基音が目立ってしまい、倍音が豊かに響きません。



それに対して、ロシアピアニズムの奏法では、指の力は限りなく脱力します。いわゆる、ブラブラの状態で鍵盤の上に配置します。しかし、それだけでは弾けませんので、指の関節ではなく、手首の裏側の腱に意識を持ち、そこで支えるイメージをすることにより、手首の裏側の腱で指を支え、安定させることができます。これについては、腱が強くなればなるほど、指の安定度は増します。もちろん先に申しあげたように、指は脱力をしたままで、腱で支えるのです。



その状態で打鍵する方が、明らかに打鍵のスピードが速くなりますし、よって鍵盤の底に触れている時間も短くなり、よってハンマーも弦に触れる時間が短くなりますから、弦が最大限に振動し、倍音が豊かに鳴り響くのです。



以前の章でも触れましたが、ロック・クライミングをする時と同様に、指力ではなく腱で支えることが大切であり、これもまた触れたことですが、どんな練習をしようと指自体は絶対に強くはなりません。このことは医学的観点からも実証されています。日本も含めて、世界中の教育現場で、「指を強くしなさい!」と示唆する教師が大勢いますが、それは大きな間違いです。ですから、指を強くするのではなく、前腕の下の筋肉で腕全体を支え、中にある腱を強くし、指の関節で固めるのではなく、手首の裏の腱で指を支えて打鍵するのが超一流のピアニストの奏法の特徴であり、全世界の教育現場においても、なかなか指導されていない、いわば企業秘密なのです。



このことを習得することは大変難しいことですが、実際に試してみることをお勧めいたします。



 

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