新宿ショーも閉幕し、同好諸氏の方々の戦果報告や、

詳細検証もブログにUPされ始め、未だ熱冷めやらず

と言うことで、今回手にれたテスケロサウルスの歯冠を

検証して行きます。^^

28新宿11
Thescelosaurus.neglectus
テスケロサウルス・ネグレクトゥス:全長 4m
アメリカ合衆国サウスダコタ州ヘルクリーク累層産
白亜紀後期マーストリヒチアン 6,680~6,600万年前
標本長
高さ(最大) 6.9mm 歯冠部 3.0mm
幅  CBL 3.1mm CBW 2.2mm

いわゆる牙状の歯冠で、前上顎骨歯になります。
テスケロa1
テスケロa2
図版:Wikipedia より

テスケロサウルスからは上顎の左右に各6本生えていました。

この標本はパレオS社の通販に載っていたものですが、

「3本一緒に仕入れたが、この子だけ売れ残ってしまったので、

 ○※×△円でいいですよ。・・・^^」

小さい標本でしたが牙は未入手でしたので、迷わず購入w

それでは歯冠を細かく見て行きましょう。

唇側
テスケロ01
テスケロ07
歯冠表面には縮緬状の皺がみられます。

遠心側(顎側)
テスケロ02
テスケロ08
カリナ(小歯)は痕跡も含め、みられませんでした。

舌側
テスケロ03
テスケロ09
先端部に咬耗面がみられ、歯冠中央部には縦の割れ目?

が幾つかみられます。

近心側(口先側)
テスケロ04
テスケロ10
こちら側にもカリナはありませんでした。

先端側と歯根側
テスケロ06
テスケロ05
歯根断面は楕円形です。

では、これらの特徴がテスケロサウルスの牙に合致するか

どうかですが、これがコレクターを悩ます歯冠の一つなのです。

同じ地層からは、堅頭竜のパキケファロサウルスが見つかるの

ですが、全ての部位の歯冠で両者は良く似ています。^^;

と言うのも、両者とも異歯性(歯が部位によって形状や機能に

違いを生じる現象)が強く、業者であっても?が付く状態で

○×サウルスとして、売られていることがままあるからです。

この牙の一番の特徴は、カリナ(小歯)が無いことと

咬耗面が存在することなので、この辺りを文献や、同好諸氏の

方々のブログで調べてみました。

まずカリナの存在ですが、過去にパキの歯をお伝えした際に

引用した文献で、古い属のステゴケラスにはカリナがあったこと、

また同好諸氏の方のパキの牙検証で、遠心側にはカリナがあった

ことから、テスケロサウルスの可能性が高いと感じました。

一方咬耗面ですが、様々文献や同好諸氏の方々のレポを読むと

咬み合う歯が無いと発生しないとなっていることが多く、

鳥盤目の恐竜で前上顎骨歯に咬み合う歯は、前歯骨歯ということに

なるんですが、パキには存在し、テスケロには見つかっていない

ことが判りました。

ということは、この咬耗面を持つ牙はパキの牙?と言うことに

なります。^^;

ところがテスケロサウルスの論文で、前歯骨歯が無くても、

咬耗面が発生しているという記述を見つけました。

論文名:The cranial anatomy of the neornithischian dinosaur Thescelosaurus neglectus

その論文では、前歯骨に歯冠が存在しにことと、前上顎骨歯に

明瞭な咬耗面が発生し、すり減らした歯冠が存在すること、

前上顎骨歯は遠心側へ湾曲傾向が歯列によって進むこと、

歯根断面が楕円形であることなどが、書かれていました。


この論文が100%正しいか判断が付きませんが、

論文の通りならこの歯冠はサイズは小さいものの、

テスケロサウルスの左側前上顎骨歯のいづれかということに

なりそうです。^^


ではまた。