品川美容外科で脂肪吸引手術後に女性死亡 司法解剖の結果、女性の臓器に傷

http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00168206.html

東京・豊島区の「品川美容外科」で、脂肪吸引の手術を受けた70歳の女性が、2日後に死亡していたことがわかった。死亡した女性の臓器には傷があった。
「ダイエットせずに気になる脂肪を減らせる」と、一部の女性から人気の脂肪吸引手術。
しかし、警視庁などによると、12月2日、東京・豊島区にある美容整形専門クリニックで腹部の脂肪吸引手術を受けた女性が、2日後に容体が急変し、死亡したという。

死亡したのは、東京・荒川区の前田 京(みやこ)さん(70)。
前田さんの長男は、「信じられないっていうのが、まず一番ですよね。なぜ、こういう形で亡くなったのか」、「病院から『2~3日は痛みがありますから』と。それに対して、ずっと我慢してたんですね。嘔吐(おうと)もしてたし、横になってて。普通のあれ(状態)じゃないですよね、やっぱり。『もうちょっとすれば治る』って言ってたのが最後ですね」などと話した。


司法解剖の結果、前田さんの臓器には傷があった。前田さんの長男は「人1人の命がなくなっているわけですから。それに対して説明もないし、怒りは当然持ってますよね」と怒りをあらわにした。


警視庁は、業務上過失致死の疑いで、手術を行った「品川美容外科 池袋院」などを家宅捜索した。
脂肪吸引手術とは、直径2mmの吸引菅を使って脂肪を吸い出すというもの。
日本美容外科学会・呉 相俊次期会長は「おなかの中でどういうことが起こっているかというのを、手探りで探していかなければいけないわけですから、体力も使うし、そして技術や経験はとても必要なことだと思います」と語った。

医師の経験や技術が問われるという脂肪吸引手術。
2003年には、東京・渋谷区の美容外科で、当時53歳の女性が脂肪吸引の手術を受け、翌日に死亡している。

呉次期会長は「当然、患者さんは出血しますし、そういう意味では、ほかの手術に比べると、リスクが高い手術だと思います。高齢者であっても、脂肪吸引という手術を受けることは十分可能なんですが、それほど一般的ではないと思います」と話した。

警視庁は、品川美容外科で、ほかにも同様の死亡例がなかったか、調べを進める方針。
品川美容外科の代理人は「遺族には遺憾に思っている。捜査の推移を真摯(しんし)に見守る」などとコメントしている。

脂肪吸引手術のあとに患者が亡くなる例は過去にもあったが、警察が強制捜査に乗り出したケースは、ほとんどなかった。
今回の場合、病院側が「医療ミスではない」などと主張しているうえ、捜査に非協力的だったことから、警視庁捜査1課が異例の強制捜査に踏み切ったものとみられている。



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亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。

しかし、残念です。

この記事内でも触れられていますが、

脂肪吸引手術の後に患者が亡くなる事故というのは、以前から言われていた事です。


美容外科でこういった痩せる手術が行われているということが知られてから、

まもなく脂肪吸引手術を受けた主婦が術後に亡くなったというニュースが流れました。

最初に知られたケースは、1996年の事です。


それ以後も死亡事故の例は耳にしました。

原因は、壊死性筋膜炎や、脂肪塞栓、肺塞栓と言われています。

そして、今回のケース同様の腸管損傷による腹膜炎のケースもありました。


脂肪吸引手術による安易な痩身術は、一定の危険性があると言う事は、周知の事実のはず
です。

ネットでも「脂肪吸引」で調べればすぐにこういった危険性を訴えている事に気づけます。






・・・ところが、今回のご遺族は、どうやらそんな事は一切ご存知無かったようです。

>「信じられないっていうのが、まず一番ですよね。なぜ、こういう形で亡くなったのか」


・・・本当に残念でなりません。


どうやら、家族が脂肪吸引手術を受けるという事の、

危険性に対する理解も覚悟も、できていなかった

ようです。


私なら、自分の母親がこういった手術を受けると言い出したのならば、

その危険性というものを十分に理解して母親にこう言ったでしょう。


「その手術は、簡単に痩せれると言うけれど、過去には亡くなった人もいるんだよ。

わずかとはいえ死ぬ危険のある手術なんだから、やめておいた方がいいと思う。」



こういった説得を何度もして、それでも母親がどうしても、と言ったのなら、

覚悟をした上で同意する事になるのでしょう。


危険性があるとは言え、あくまでも稀な合併症であるでしょうから、

後はできるだけ安全で信頼できる医療機関を選んで運を天に、

いや、運命を医師に託すしかありません。




・・・ところが、今回のケースでは不幸にも腸管損傷という重大な合併症を生じました。


通常の腸管損傷のケース、例えば十二指腸潰瘍や急性虫垂炎の穿孔といった急性腹膜炎の病気ですと、

いわゆる筋性防御といいますが、腹部が硬くなる所見が重要です。


しかし、腹部を脂肪吸引した後は、腹部の筋肉や腹膜が非常に刺激をうけて固くなっていると、

区別がつきにくい状態かと想像されます。(私は実際には経験したことがないのであくまでも推定ですが。)


さて、この状況で美容外科医が責任ある対応が取れるでしょうか?

消化器外科の専門医でなければ、腸管損傷を見抜く事は難しいでしょう。


・・・いや、私は脂肪吸引手術後の患者の腹部を診察したことが無いので想像でしかありませんが、

恐らく内出血で硬くなった腹部からは、

如何な消化器外科であろうとも腹腔内の消化管穿孔を正確に判断することは困難な事でしょう。




そして、ニュースでは長男の方は、このような事をおっしゃてたように記憶しています。


電話で美容外科に問い合わせたけれど、薬を飲むように言われただけ。

お腹が痛いと訴えていた時に、病院へ相談するようにとかの指示もなかった。」



・・・本当に気の毒な事です。


しかし、家族であらかじめこの手術の危険性を正確に把握していれば、

いくら美容外科で指示がなくとも、患者の様子を間近で見ていれば、


「これはおかしい、ひょっとして重大な合併症を起こしているのかもしれない。」


と考えて、独自の判断で近隣の医療機関へ相談へ行くことができたでしょう。


そうすれば、助かったかもしれません。


確かに手術を行った美容外科の医療ミスが重大な結末を引き起こした事は間違いありませんが、

患者や家族の、手術の危険性や合併症に対する認識の甘さが否定できない事例だと思いました。



「医療の事は、素人にはわからない。全部医者任せだから、当然責任も全部医者。」



そういった考え方は楽なことかもしれませんが、結果的には危険を招く事もあると考えて、

当ブログでは再三警告してきたつもりでしたが、役に立てていなくて本当に残念です。


<医者の常識、世間の非常識>

最後の最後に自分(家族)の身を守るのは、自分(家族)しかいません。


患者も自分(家族)が受けようとする医療に関する知識をあらかじめ備えておいて、

危険性を十分理解し、覚悟を決めてから医療に身を委ね、

いざと言うときに適切な判断ができるように努力するべきだと思います。




合掌。