24日に誕生日でした。
今年で20歳になりましてますます時間の進みを早く感じています。

停滞気味ではありますがこれからもよろしくお願い致します。

【Next】

《第0話 Black side》 ※pixiv限定公開
時代に忘れ去られた、哀しき事件。
男は勝者、栄光と願いを自身の手で勝ち取った正真正銘の強き人。━━━だがその勝利は人が人を貶める為だけに消費された。
家族を想う心も、家族さえも利用された男は祭壇の上で言い放つ。
「いつか必ず、貴様らに復讐してやる」
━━━時代は流れ、8月25日の月の下、堰櫂托都は夢を見る。
それこそが物語の始まりを告げるとも知らずに。

「あの日、認めてしまった罪は━━━いつまでも」
全ての終わった、夏の終わり。
輝く海を風景に変え、光は駆け抜ける。その先に待つ暖かさは、生死を賭けたあの戦いの記憶すら遠い過去ものとさせてくれるようで、"この先ずっと平和になったらいいな"なんて言葉からも現実味を感じさせた。
たとえそれが、一時に見た泡沫の夢だったとしても━━━。

降る星は新たな物語を告げる。
残酷を呼ぶ出逢いと別れ、風は流星となり悪を断たんと天から舞い降りた。
時を操る支配者は戦いになにを見たか、真実を掴まんと動き始め、巻き起こる激闘の中に潜む罠に誰が気づいたか。
そして二対の希望は剣を重ね飛び立つ。かつて掴み宿った切り札は手の中に。

星流れ墜ちた夜、消えた闇を追い星はまた墜ちて往く。 
朝の陽を浴びる二色の眼は夢の中。 
眠った真実の中に隠されているのは贋作の影。 
その裏、少女は軽やかに、物語へと介入を始める。 
はじめまして、紅の堕天使。 

《第4話 萌芽》 8月6日公開
黄金と蒼銀、二つの眼は揺れる。
少女の怒りは胸の内を貫くように突き刺さり、星の夜の記憶に苛まれる。
もしもあの時、彼に救われなかったら。
もしもあの時、彼を救うことができたなら。
己の弱さと強さに苦しみもがき、それでもまだ諦めたくない。

暗闇を裂く怨讐は、白き仮面に虚ろを隠し顕れた。
己の罪を認めた彼と己の罪を知らない彼らは只一つの真実を握り対峙する。
未曾有の災厄を前に花が踊り蝶が舞う。
迷い込んだ悠久の楽園に命を賭して、白い瞳は正義を前にただ嗤うのみ。

正義を成す為、悪となれ━━囁かれた言葉は黒い空の下で木霊する。
いつから黒だけが穢れであると言われていたのか、そこに在るのは世界を潰す白き特異点。
繰り返される人生(ひげき)の中で、見つけた答えを果たすため、彼は時を廻り続けた。
そう、これは人類への救済だ、と彼は云う。

過去の夜空に揺れた星、勝利に焦がれてすれ違った手は今再び握られた。
花散る残酷の中で奇跡に触れる君の想いに応えられる友の姿はなく、ただの孤独に唇を噛む。
たとえ敗北を視たとしても、あの日魔術師が言った言葉を忘れぬために。
その恐怖を怯え隠す姿は、まだあの頃のまま。

《第8話 私だけの言葉》     10月31日公開
片目が割れた人形が見た夢は、いつか"人の形"ではない"人"になるための虚構。
いずれ人より完成された人でなしになることに盲信することの許された小さな小さな贋作人形。
クルクル回る運命は更なる物語へ。
恋乙女と相対し涙を流す空の下、出でた二つの可能性。
それは、光も闇も番う無限の輝き。

太陽が黒く滲む。赤は白に染まる。
始まる終焉を知る者はたった一人━━結末を追い求めるもたったの一人。
重なる手に無限の力、共に駆けるは互いの魂(きずな)。二つを合わせ、今見せようその可能性。
花舞い星煌めく空の下で、風吹かぬ世界に立った時、反撃の狼煙は上がる。

《第10話 白い狂気に渦巻く光》
未来を封じたのは完全な勝利。
これ以上ない絶望に侵された世界に明日を見出だせと、あの日失った誰かの声がした。
「立ち上がれ」
その言葉はメッセージ、彼方の先に見据えた平穏のための切り札。
記憶が途切れて霞んでも、忘れられないモノがそこにある。
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「おれのターン!ドロー!おれは《朝焼武者 霧切》を召喚!」
《ATK:1300/Level:3》

「霧切の効果!デッキからカードをドローして、そのカードがモンスターカードなら召喚条件を無視して特殊召喚する!」

「コイツも運試しか…!!」

先日戦ったムサシのデッキの特徴といえば、その8割は運が絡むと言って過言ではないほどのギャンブル要素が強いフィールド魔法《華園の城》。引いたカードがモンスターでなければ攻撃もままならないという強力でありながらその効果は互いに発生する。
要は師が師なら弟子も弟子。狩也は思わず唇を噛んだ。

「ドロー!!━━へへっ!引いたのは《朝焼武者 天下》だ!コイツを特殊召喚するぞ!」
《ATK:1000/Level:3》

「レベル3が2体!来るか!」

「おれはレベル3の天下と霧切でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

真っ白な武士たちは真っ白な光となり亜空へ消えて行く。
そして現れたのは、巨大な鎧武者。

「いざ尋常に!《羅刹武者 丑三》ッ!!」
《ATK:1500/Rank:3/ORU:2》

その身の周りに炎を漂わせた鎧武者は巨大なのにどこか霊的な存在に思わせる不気味さだ。

「へへっかかってこいよ!」

慶太は余裕がありそうだ。だが隣の狩也はやはり顔をしかめている。
彼の予想が正しければ、このモンスターもなにかしらの運が絡む効果を持っているはずだ。

「丑三!!まずはキングプロテアに攻撃だ!」

「やらせねえ!!罠発動!《茨の盾(ソーンシールド)》!!これでお前はバトルする時に1000のダメージを受けるぜ!」

「速攻魔法《すり抜け》発動!アンデット族モンスターが攻撃する時、罠発動を無効にして破壊する!」

「マジかよ!?」

まさにすり抜けといった感じに茨に覆われた巨大な盾を通り抜けてきた。本当に幽霊のようだ。
そのままの勢いで振りかぶった丑三の刀がキングプロテアを一刀両断、花は無惨に散りその衝撃波が慶太に襲いかかってくる。

「うぉぉっ!?っ…なんだこれマジなダメージかよ!?」
《Kariya&keita LP:400》

「まだまだ!!丑三の効果!オーバーレイユニットを1つ使い、デッキからカードをドローする!そのカードがモンスターカードだった時にもう一度バトルできる!」
《ORU:1》

「なんだって!?」

マリーゴールドの攻撃力は1000、一方丑三は1500。攻撃を受けたら二人の負けだ。

「さぁて…ドロー!!」

コタローのドローで息を飲む。
そして━━、

「おれが引いたのは━━モンスターカードだ!」

見せつけられた《朝焼武者 騎馬》。まごうことなきモンスターカードだ、間違いない。

「ヤバイぜこれ…!!」
「……」

「もう一回バトルだ!丑三でマリーゴールドを攻撃!!必殺霊斬ッ!!」

幽霊武者が可憐な天使に斬りかかる。
これを受けたら負け。しかし慶太には伏せカードはあろうと防ぐ手は持ち合わせていない。

こればかりは敗北か…と諦めかけた。

その時、

「フィールド魔法《星の楽園-コズミック・パライソ》の効果発動ッ!!」
「狩也!?」
「フィールド上にコスモ・メイカーと名の付くモンスターが存在しない時、このカードを破壊しこのターン受けるダメージを半分にする!!ッ!!」
《Kariya&Keita LP:150》

星の楽園は崩壊したが、その崩壊によって二人はなんとか守られた。
ライフは首の皮一枚繋がった状態。それでも狩也は慶太を守って攻撃をなんとか耐えて見せたのだ。

「倒しきれなかったぁ!?」

丑三の効果が発動できるのはモンスターが存在している時のみ。三度目の攻撃はない。

「狩也!ありがとう!!」
「礼は後でいいだろ!今はデュエルに集中だ!」

「くっそぉ…!!ルルン、次は頼むぞ!」
「もっちろんよ!あんな奴らボコボコにしてやるわ!」
「よっしゃ!カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
《Hand:4》

次は狩也のターン。
伏せカードを恐れず挑み、あのモンスターを突破すれば勝利は見えてくる。
だがターンを終えてルルンのターンが回ってくれば、また装備魔法によるコンボが発動してしまう。

狩也はこのターンで決めなければならない。

そのプレッシャーがあの時のドローと重なり合いそうになり、手が震えた。
あの時の、次のないドローが、あの男の声が、胸をざわつかせて息がつまりそうで、なにもかもが遠く感じていた中で、声は彼の名を呼んだ。

「狩也ッ!!」
「…!慶太…?」
「ビビってもいい、でも気負うな。デュエルに負けたっていい、でも一人でそれを抱え込むな。お前には今、俺が付いてるんだからな!」

その言葉は心を何重にも覆う壁を壊して響く。

今の狩也には慶太がついている。これほど心強いことはない。
何度も突き放してきた友は、何度でもその手を取ろうとしてきた。ならば、それに答えずしてなにが"親友"か。

「…あぁ!やってやろう!慶太となら、負ける気がしない!!」
「ヘヘッ!そうこなくっちゃな!」
「でも、負けたらお前が遊矢に謝れよ?」
「…それは二人ですべきだよな?」
「ははっまぁ、確かにな」

他愛もない会話、だがそれは狩也を落ち着かせるには十分だった。
指先をデッキトップに乗せ、目を閉じる。

このドローに絆を束ね、心を重ね合う。

「俺のターン、…ドローッ!!」

あまりに静かな一瞬、引いたカードは…。

「行くぞ!フィールド魔法《スターダスト・コロシアム》発動!!」

「あの時のフィールド魔法!」

最初のターンに手札に加えたフィールド魔法《スターダスト・コロシアム》が漸く発動し、公園は再び星が煌めく大空の中、旧き世界の闘技場の空間へ変貌した。

「《スターダスト・コロシアム》の効果!自分フィールドにモンスターが存在しない時、墓地のモンスターエクシーズ二体を攻撃力を0にし、効果を無効にして特殊召喚する!蘇れネヴラスカイ!キングプロテア!」
《ATK:0/ORU:0》

星の竜と花の女王がフィールドに舞い戻る。だが、ランクは7と5。これではレギオンエクシーズは行えない。

「魔法カード《星の瞬き》発動!キングプロテアをネヴラスカイと同じランクに変更する!」
《Rank:5→7》

「ランク7が2体!!」

「ランク7のネヴラスカイとキングプロテアをレギオンオーバーレイッ!!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築!レギオンエクシーズチェンジ!!」

ランク7でのレギオンエクシーズ、しかしネヴラシエル・ドラゴンは召喚条件を満たしていない。
ならばなにが出てくるというのだろうか。

「大地に花咲き誇れ、空に星満ち輝け!その世界に今現れろ!《コスモ・メイカー ストレリチア・ドラゴンナイト》ッ!!」
《ATK:2600/Rank:7/ORU:2》

太陽を彷彿とさせる橙の花をあしらった冠を身に付けた騎士、そして彼が騎乗する星の翼の竜はネヴラスカイ・ドラゴン。
狩也と慶太のモンスターが一つになった姿は雄々しく力強い。

「ストレリチア・ドラゴンナイトは召喚成功時、相手モンスターの攻撃力を0にしこのモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで倍にする!」
《ATK:0》
《ATK:5200》

「攻撃力が!!」

「バトル!!ストレリチア・ドラゴンナイトで《羅刹武者 丑三》を攻撃!!」

足りなかった分の攻撃力は効果で補填し、更には丑三の攻撃力をも下げた。
これが決まればダメージは5200で二人の勝利だ。

「させるかッ!罠《カラクリ幻想》発動!バトルする武者モンスターの攻撃力が相手より低い時、攻撃力を次のエンドフェイズまで入れ換える!!」

「そんな!!」
「これじゃあ返り討ちに…!」

しかも攻撃を中断しても、次ルルンのターンまで効果は続く。
狩也には手札がすでに残っていない。よって二人は逆転負けを食らってしまう。

しかしそうはさせない。高山慶太は、"相棒"が繋いだものを易々とは壊させはしない。

「カウンター罠《開花の時》!!モンスターの攻撃力が変化する効果が発動した時、全て無効にして攻撃力を元に戻すッ!」
「そのまま行け!!ストレリチア・ドラゴンナイト!!」

《ATK:2600》
《ATK:1500》

「うぐぅっ!!」
《Rurun&Kotaro LP:300》

慶太のファインプレーで丑三は破壊できたが、ライフが残った。
ルルンに怪しい笑みが溢れる。
何故ならば、手札には"三枚目のフロッグ"がすでにあるからだ。
これでコントロールを奪い取り、がら空きのフィールドにダイレクトアタックを決めてしまえば簡単に事は済む。

「さぁ!ターンエンドを━━!!」

「まだだッ!ストレリチア・ドラゴンナイトの効果発動!!モンスターを破壊した時、オーバーレイユニットを一つ使い攻撃力を半分にすることでもう一度バトルを行うッ!!」
《ATK:2600→1300/ORU:1》

「嘘…!!?」

竜の咆哮は大地を揺るがす、そして最後の攻撃の標的は定まった。

「これでトドメだッ!ストレリチア・ドラゴンナイトでダイレクトアタック!!」
「流星のブルームストリームッ!!」

「う、うそっ!?きゃあああッ!!」
「えっ!?ふごぇっ!?」
《Rurun&Kotaro LP:0》

花びらの集束体は星のごとき速さで容赦なくルルンとコタローを貫き、コタローはルルンに押しつぶされる。
それは同時に狩也と慶太の勝利であることも意味していた。

はぁはぁと息が上がった狩也はいまだに呆然としているが、慶太はお構いなしに彼に飛び付いた。

「やったな狩也!!」
「っおい!急にひっつくな気持ち悪い!」
「なんだよ~ホントは嬉しいんだろ?だろだろ~?」
「うるせえ…ンなわけねえだろ」

くっついてきた慶太をむりやり引き剥がす。

そして勝利したことでアミとレッカも解放されたらしく、アミは二人に駆け寄ってきた。

「狩也くん!慶太くん!」
「おっ!アミちゃん!」
「無事でよかった」
「二人とも、ありがとう!」
「いやいや~お礼なんて~!」
「顔に嬉しいって出てるぞ」
「えへへ…」

ともあれアミは無事だ、これで遊矢に土下座するような案件はない…だろう。きっと。

「い、ったぁーい」
「ルルン…重い…」
「まぁ失礼!レディーに重いだなんて」
「どいてくれ~」

攻撃を受けた時に尻餅をついたルルンがお尻を擦りながらコタローを下敷きにしていたらしい、下から呻くようなコタローの声が響き、ルルンはそれに対して猛抗議している。
そんな二人に少女は近づいてきた。

「ルルン、コタロー」

「…あぁら?裏切り者が、なにか用?」

「教えてもらいます。アダムとイヴはなにを企んでいるのですか。私には…神への復讐だけとは思えません」

リコードイミテーションの目的━━。
原罪を浄化し、神へ復讐すること。そのために人間を犠牲にして復讐の概念神まで用意した。
だが本当にそれだけか?彼らは神に抗うだけしか考えていないのか?そんなはずはない、なにか裏があるに違いない。
レッカは昔からそう感じていた。

「…さぁ…?でも、今にスゴイことが起きちゃうかも…?」

「スゴイ…?」

「ま、自力で考えてみなよ」

そう言い残してルルンはコタローごと消滅した。おそらく帰投したのだろう。

レッカは拳を固める。

"スゴイことが起きちゃう"

それらはきっと、世界になんらかの災厄を引き起こすのだろうと思いながら。


~~~


目が覚める。

あの悪夢も覚める。

全てが始まり、そして終わる。

━━歯車は動き出す。

「……托都は…」
「!遊矢、目が覚めたのか!」
「…アイツは、どこにいるんですか」
「……それは」

リンには言えない。しかし遊矢には解っていた。

なにもかも。

命を蝕む呪いも、消えた托都の行方も、白い男の正体も、全て眠りの中で知った。

「俺は…行かなきゃ、ならない」
「…死んでもか」
「いいや死ぬもんか」

エメラルドの輝きは眠る前よりも力強く、その先の"白き復讐"を見つめている。

「二人と一緒に帰ってくるんだ、絶対に。だから━━」

死は目の前だとしても、彼にはやらねばならない。彼しかできない。

「俺は、托都と戦う」

その宣言は、今はまだ届かない。





Next→


=====================
【あとがき】

今回の一言「主人公補正の勝利」
主人公補正が強い方が勝つ(勝った)。そういうとこだぞ狩也。
所謂ギャンブルデッキにむちゃくちゃなくらい弱い狩也だけど普通のデュエリスト慶太が一緒になることで相殺している感。どっちにせよ攻められすぎである。

ルルンのデッキは「魔法人形」と書いてリリカルパペット。魔法でリリカルとか某監理局の白い悪魔かよ。
でもその実態はウザい&ウザい。ハマれば勝てるけど無効化されると為す術ないとかいう周りのチートに比べたらたしかに大したことないロマンデッキ感は否めない。ムサシは運命力の勝利
続いてコタローはムサシと同じ武者デッキ。ただこちらはモンスターが直接ギャンブルかましてくる模様。相手は巻き込まないとはいえこれには幸運値激低の狩也も激おこである。
ようやっと狩也と慶太も遊矢とヒカルみたく二人のモンスターをレギオンエクシーズしてくれたぜ!!俺とお前でオーバーレイ!(違う)
フィールド魔法がメインのデッキだったっけ?ってくらい狩也のコスモ・メイカー専用フィールド魔法が増える増える。まぁ全部狩也が創ったカードだから仕方ない。
遊矢が!!!喋った!!!!ホント出番ねえなお前!!なお次回も出番はない模様。
次回はヒカルが復活!!(2話ぶり)立ちはだかるのは…!?

次回ッ!!罠が潜む毒のフィールドでデュエル開始ッ!
ヴァイスの手により復活したヒカルは彼の手引きで城からの脱出を試みる。しかしそこに現れたのは原罪のイヴ。
彼女が張り巡らせた罠が潜むデュエルフィールドで命がけのデュエルが始まる━━!!

【予告】
未来を封じたのは完全な勝利。
これ以上ない絶望に侵された世界に明日を見出だせと、あの日失った誰かの声がした。
「立ち上がれ」
その言葉はメッセージ、彼方の先に見据えた平穏のための切り札。
記憶が途切れて霞んでも、忘れられないモノがそこにある。
第10話「白い狂気に渦巻く光(みらい)」


===


ついに次回は第10話…物語も折り返しってところだな

くぁ~~!!すっごく楽しみだな!狩也!!

なにが?

そりゃあもう!俺達こっからも大活躍だろ?あー楽しみだ!

言っとくがお前のデュエルは今回で終わりだぞ

…えっ?



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第9話「絆、熱く束ねて重ね合い」




その時なにを思っただろう。

ただ静かすぎる世界で、男は懶い瞳で彼を見た。

白き神が人である事実を否定したはずの彼が、次に見えた今、人としての機能を失って其処にただ"在るだけ"となっていた。

「哀れだな」

憐憫の情を含んだ言葉は届かない。
ピクリとも動かないということは、五感が働いていないのだろう。
なにかを映すことがなくなった二色の眼は秘めた美しさを塗り潰され、目の前の男を見ることすらない。

空ろな器だけがポツンと取り残されている。

本来ならこんな状況になにも感じるはずはない。何故なら彼は万物の悪であり、確かに人ではないから。
そう、この胸を締め付けるような罪悪感は永久を生きる男のものではない。

「解っている…だが…」

何処か遠い、遠い記憶の果てから声がする。
"こんなことを望んでいないのに"
と。誰とも知れぬかつてあったはずの思い出が捨てた良心を掻き毟る。

━━もしも、の話だ。
もしも彼にまだ人として生きる力があったなら。
そう思わずにはいられなかった。

「貴様に、立ち上がる力はあるか」

忘れたはずの良心に火が灯り、そう思ってしまったならそこから踏み出すのは早かった。

胸の左側━━心臓の位置に手をかざした途端、星の瞬きを彷彿とさせる光の乱反射は空間を支配する。
その光は、ヒカルの魂を受け止める未完の聖杯に間違いない。
顕現したそれを利用し、行使する願いはたった一つ。

「━━━━━。」

望みは静かに紡がれた。
願いに共鳴する一瞬の光は消え失せ、そして残されたのは…、

「これで、最後にしよう」

正しく在るべき人と、正しく在ったモノだった。


~~~


一陣の風は吹く。
辺りを支配する戦いの気配に人々は失せ、残されたのは反撃を狙う者たちとそれを迎え撃つ者たちだ。

突如現れた狩也と慶太は図らずもアミとレッカを救うこととなった。
しかし状況は依然不利のままらしく、今まさにデュエルが始められようとしている。

「随分好き放題やってくれてんじゃねーか!」

「えぇ!そうすることであたしのストレスは解消されて、…こうしてメインターゲットもちゃあんと現れた」

「メインターゲット?」

ルルンの視線が狩也をロックした、それを慶太も見逃さない。すぐさま狩也を右手で制して前に出た。
…のだが、

「狩也!とりあえず下がってろ!」
「冗談じゃねえ。下がるのは慶太だ」
「お前は無茶すんなって!」
「無茶なんてしてないだろ!こんなのも大したことじゃない!」
「どう見ても重傷だ!頼むから大人しくしててくれよ!…また同じことの繰り返しじゃんか…」
「…それは」

一時的に失明してしまった左目を覆った包帯を剥がそうとした狩也の手を止めて慶太は言った。

C.C事件で遊矢を裏切ったことは最早周知だが、その直前まで慶太が一緒だったことも忘れてはならない。
もし、慶太が暑さで倒れた狩也を家に置いて外に出なければ、その裏切りもなかったのではないかとずっと彼は悔やんでいる。
昨日だってあんな風に送り出したのに、その結果はコレだった。
自分が止めなくてはならない、一人で駆け出すのを抑えなければまた取り返しのつかないことが起きてしまう気がする。

「なにかあったら、今度こそ雪那ちゃんになんて説明すればいいかわかんねえよ…」
「慶太…お前まだそれのこと言ってんのかよ。今更━━」

「いつまでやってるつもりー?」

少女の声に二人は漸くハッとなり振り返る。
苛立ちを隠さないルルンは仏頂面を引っ提げ、靴をコツコツと鳴らしていた。

「アンタらの痴話喧嘩に用はないの、こうしてエモノは釣れたんだからさっさとやっちゃわないと…ねえ?コタローちゃん?」
「応ともルルン!」

呼ばれたコタロウが草の影から現れ、これにてこの場で自由に動ける人間は4人。ちょうどいい数だ。

「タッグデュエルか」
「なぁお前デュエル弱いんだろ?さっきの話聞いてたぜ!」

レッカが言った「リコードイミテーション最弱」。これが嘘でないのなら負ける要因はない。
万全ではないからフリューゲルアーツはまず使えない、無理もさせられない、それでも十分。
最弱を相手にして負けたならこの先ヴァイスを相手にすることは到底ままならないことだ。

「ふっ…あっははははは!!アンタに負けるほど弱くないし!今のうちに吠えてなよ!」

「なっ!!」
「慶太、やるからには邪魔すんなよ」
「…狩也」
「奴らからは聞き出すことが山ほどある、時間はかけられない」

真剣な狩也の目を見て、さっきのように言い返すことは叶わなかった。
だが言う通りではある。
早く撃退しヴァイスがいるという白き城が何処に存在するのか、そして陥った最大のピンチから遊矢を救う方法を聞き出すことが今最も重要な事柄だ。

「気を付けてください!コタロウはあのムサシの弟子!!まだ半人前ですが、研ぎ澄まされた刃は師を彷彿とさせるでしょう…!」

「ムサシ…?」

名に覚えがなくとも一瞬で解った。
あの琥珀色の瞳の男が脳裏に過る。敗北の痛みが駆け巡る。
しかしこれも僥倖。
再戦はきっとある、いいや"ある"。ならこれはそれのために積み重ねるべき運命なのだろうと言い聞かせた。

「さぁ!!行くぜッ!!」
「デュエル!」

「「デュエル!!」」

《LP:4000》

ライフポイントは共有で4000。フィールドや墓地も共有。
その気になれば一撃で決着がつけられるが、共有という曲者ルール。なにが起きるか分からない。
慶太は思う、力を合わせれば勝てると。━━あとは狩也次第だ。

「先攻は…」
「俺はフィールド魔法《星の楽園-コズミック・パライソ》を発動!!」
「狩也ぁ!?」

その時慶太は思い出した。思い出してしまった。
"この夏、同じようなことがあったような気がする…いや、あった"と。
しかもそのデュエルで狩也は鞘走りに鞘走り、余計なプレイングで大ピンチに陥った。最終的には勝利したが、慶太のドローに逆転か敗北かがかかっていた場面があったこともあり、この展開にひどく後悔した。

余談だが更に挙げるなら、狩也は"他人に合わせない"。
昔はタッグデュエル大会のパートナーに誘ったこともあったが、今考えれば拒否されたこと自体が幸運だったと言える。
連携に興味を示さず、個の実力で押そうとする。まさに脳筋。ここまで相性もなにもあったモンじゃないデュエリストは相当だ、と後にヒカルに言わしめたほどだ。
そんなこんなで狩也は共闘と思いはしても協力とは思ってくれないだろう。
どうなることか分からないが、この太陽の輝きに照らされた雲の上のフィールドに慶太は嫌な予感がした。

「コズミック・パライソの効果発動!ライフを800ポイント削り、手札から「コスモ・メイカー」と名のつくレベル7のモンスターを2体選択してエクシーズ召喚する!」
「ライフ800も取られんのか!?」
「なんだよ文句あるのか?」
「い、いや…」

的中確率100%という予測可能な光景はこうして確定的な現実となりブチ抜かれてしまった。
ライフポイント共有ルールである以上、ライフを削られるのは狩也個人だけではない。それを一々気遣うのが面倒くさいのか、あるいは本気でなにも考えていないのかを知る術はない。

「手札から《コスモ・メイカー クドリャフカ》と《コスモ・メイカー ジャベリン・ベガ》を素材に、オーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚ッ!!」
《Kariya&keita LP:3200》

亜空から現れたのは星雲(ほしぐも)の竜。
全てを呑み込む輝きを放つ光の余波は、荒れ狂う幻想の波動にして主を護る絶対的な力。
眩い閃光は大地を呑み、そして顕現した。

「現れろ!《コスモ・メイカー ネヴラスカイ・ドラゴン》!!」
《ATK:2600/Rank:7/ORU:2》

夏の空に竜の咆哮が轟く。その衝撃はARとは到底思えぬ現実のものとして敵対者を威圧する。

ネヴラスカイ・ドラゴンは召喚成功時、デッキからフィールド魔法一枚を手札に加えることができるという効果を持つ。
狩也が数ある中から選んだのはフィールド魔法《スターダスト・コロシアム》。しかし今は使わない、まだ温存しておく。
この後必ず使う時が来ると確信を持って。

「コズミック・パライソの効果で召喚されたモンスターエクシーズは、次の相手ターンのエンドフェイズまで効果による破壊を受け付けない。俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」
《Hand:1》

「これであの二人は戦闘でしかネヴラスカイ・ドラゴンを倒せない…2600の攻撃力を誇るあのモンスターを越えるのも簡単じゃない。でも…」

そう、戦闘で破壊するためには攻撃力2600以上のモンスターを1ターンで用意するしかない。
レッカの記憶の範囲ではあるが、ルルンがそんな単純な攻撃力で勝負できるデュエリストではないことは分かっている。とすれば問題はコタローの方だ。
ムサシの弟子ということは運勝負の搦め手も、高い攻撃力による戦闘も十分にあり得る。

「ふーん?頭の中お星様が回ってるトンだ夢見がち少年だとは聞いてるけど…思ったよりも単純なんだー?」

「言ってろ、今に痛い目を見ることになるぜ」

「どっちのことやら…あたしのターン!」

フィールドが両者共有のタッグデュエルでは、二人目のプレイヤーのターンにバトルフェイズが解禁される。
弱い、最弱とあれこれ罵倒されているルルンが果たしてネヴラスカイを越えられるのか、まずはそこからが問題だ。

「まず、永続魔法《魔法人形精製術(リリカルパペット・メイキングサークル)》を発動!これにより、あたしは1ターンに1度デッキから「魔法人形(リリカルパペット)」と名の付く装備魔法を手札に加え、手札のカードを一枚墓地に送る」

「装備魔法デッキか…!!」

ルルンは手札の罠カード《魔法人形束縛(リリカルパペット・バインド)》を墓地に送り、デッキから《魔法人形 フロッグ》を手札に加えた。
わざわざデッキから引っ張り出してまで手札に加えるということはつまり━━、

「あたしは手札に加えた《魔法人形 フロッグ》を発動!装備対象は…ネヴラスカイ・ドラゴン!」

「なんだって!?」

「フロッグの効果で装備モンスターは互いのバトルフェイズ時に限り、あたしがコントロールを得るわ!」

「はぁ!?なんだその無茶苦茶!」
「どこが最弱だ…ッ!!」

普段は狩也がコントロール権を持つネヴラスカイ・ドラゴンは、バトルフェイズ時のみルルンがコントロールを得ることになる。それはつまり、ルルンのバトルでは牙を剥き、狩也のバトルでは壁として立ちはだかるということだ。

「あたしが最弱扱いされるのは、魔法カードを封じられた時になんの手も持たないこと、簡単に対策ができることが理由。初見のアンタらには無理な話だけどね」

「くっ…!」

「さぁバトルよ!自分のモンスターにやられちゃいなさい!!ネヴラスカイ・ドラゴンで攻撃!」

なんとも可愛らしいカエルのぬいぐるみから現れたおぞましい舌がネヴラスカイ・ドラゴンを捕らえ、操り人形のように思いのまま動かしてみせる。
抗えないネヴラスカイから迸る光のエネルギーは自らの主を呑み込まんと溢れ出した。

「狩也!!」
「分かってる!!罠カード《明けの星雲》を発動!戦闘ダメージを0にする!そして、このターン相手は魔法・罠のセットを行えない!」

朝日の光に護られ、致命的なダメージを受けることだけはなんとか避けられた。
しかし装備魔法を破壊しなければ次の慶太のターンにまたルルンにコントロールを奪われてしまう、これでは埒が開かないどころかいつかは追い詰められてしまう。

「ちぇっ…つまんないわねぇ…あたしは速攻魔法《魔法人形廃棄(リリカルパペット・ディスポーサル)》発動!フィールドに発動している「魔法人形」と同名の装備魔法を墓地に送り、同名カードを装備しているモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える!ダメージは1300!!」

「なっ…くぅッ!!」
《Kariya&keita LP:1900》

「あはっ!かっこわる~い!ターンエンドっ!」
《Hand:3》

フロッグの舌から繰り出された予想外の攻撃に思わず膝をついてしまった。
なんという苛立つ戦略、コレを最弱と言いきったレッカは一体なんなのかと言いたいくらいには普通に強敵だ。

「大丈夫か狩也」
「あぁ、全然平気」
「ならいいけど…やっていいよな?」
「当たり前だろ、でも責任は取れよ」
「おう!もちろんだぜ!俺のターン、ドロー!!」

まるで二人は事前に打ち合わせしたかのようになにか対策語り合うことなく、伝わらない会話だけをしてターンを開始する。
だがそれは互いの信頼があってこそ。

何故ならば、慶太は今ネヴラスカイ・ドラゴンを破壊しようとしているからだ。

「俺は手札から《鎖鳥の天使 マリーゴールド》を特殊召喚!コイツはフィールドにモンスターエクシーズが存在する時に特殊召喚できる!」
《ATK:1000/Level:3》

「攻撃力1000じゃネヴラスカイには届かねーな!」

そう、バトルフェイズ中はネヴラスカイ・ドラゴンが向こうに立ち、マリーゴールドのようなモンスターでは手も足も出ない。
ただしバトルフェイズ中に限る話だが。

「まだだぜ!速攻魔法《誘発進化》発動!自分フィールドにモンスターが特殊召喚された時、それより攻撃力の低い植物族モンスターエクシーズを特殊召喚できる!」

あくまでマリーゴールドは《誘発進化》のための一手。それ以上の意味はない。
慶太のデッキにある攻撃力1000以下の植物族モンスターエクシーズ、それはたった1体であり、確実にネヴラスカイ・ドラゴンを破壊できるモンスターでもある。

「来い!《鎖鳥の霊華 キングプロテア》!!」
《ATK:0/Rank:5/ORU:0》

凛々しくも可憐なその姿はまさに美しき花、キングプロテア。
攻撃力は0でオーバーレイユニットもないこのモンスターの実力は、まさに今このような状況で最も輝きを放つことのできるものだ。

「俺はカードを2枚伏せてターンエンド!そしてキングプロテアの効果発動!」
《Hand:2》

「オーバーレイユニットがないのに効果を…!!」

「エンドフェイズ時、オーバーレイユニットがないこのモンスターが存在する場合、自分フィールドのモンスターエクシーズを1体破壊しその攻撃力分のダメージを与えるぜ!!」

「な、なんですって!?」

コズミック・パライソによる破壊耐性は前のルルンのターン中に終了している。よって今ならば効果でネヴラスカイ・ドラゴンを破壊できるのだ。

狩也は慶太に「やっていいか」を問われた時にこの戦術に気が付いていた。
かつて現れた黒い教団の二人組を葬ったこともあるこのコンボはタッグデュエルにおいては意思の疎通ができなければ成立しないものだっただろう。

「食らえ!2600のダメージだぜ!!」

「っきゃあぁっ!!」
《Rurun&Kotaro LP:1400》

花の香りが渦を巻くエネルギー波がルルンを飲み込み、攻撃はそれはそれは大層派手に決まった。
ネヴラスカイ・ドラゴンという強力なモンスターは失ってしまったものの、これで次のターンに脅かされる心配もなくなった。
あとはコタローというデュエリストがどんなデッキを使うのか、だ。

「っくぅ~~……!!」

「く、悔しがってるの…?」
「まぁ…直前まで余裕そうにしてましたから…」

デュエルを見守るアミとレッカからも分かるくらいルルンは苛立っている。
今すぐにでも沸騰するヤカンというべきか、爆破寸前の時限爆弾の方か。どっちにせよ煮えくり返っているのだろう。

「やってくれたわね!?レディーの服を汚すなんてそれでも男なの!?」

「やられたからやり返しただけだっつの!」

「くやしー!!コタロー!やっておしまいなさい!」
「な、なんだよ命令すんなって…」

青い髪を束ねた八重歯の少年・コタロー。
ムサシの弟子のターンが訪れ、狩也も身構えた。