となりの異次元空間 -2ページ目

殺人犬舎の廃墟






廃墟探索には中毒性がある。
なんていう戯言を、確かこのブログを始めた2006年頃に、しょっちゅう云ってたと思う。

その頃リアル厨房(死語)だった僕は、なんとか大人ぶりたくて、偏差値30ぐらいの足りない脳みそをフル回転させながら、何かエセ哲学的な事を得意げに書き連ねる癖があった。






そして来年30を迎えるオジサンの僕から、中学生時代の僕に言いたい。


「勘の良い餓鬼は嫌いだよ」


と。


もっとも近年は、廃墟というカテゴリー自体が良くも悪くも一般世間に浸透しはじめ、かつてのように一部の変態フリークがダークウェブのすみっコでニチャニチャしあっている異常性癖のような感覚は薄れ、Instagramなんかでは寧ろ廃墟自体が芸術作品のような「美しい」存在として持て囃される時代になった。

その反面、色々と問題が起きていることも、昨今の報道等を見ていれば周知の事と思う。





まずは法律の問題。

廃墟探索は法的グレーゾーンだなんてよく耳にするけど、実際にはどー考えてもアウトだと思う。ただ警察もそこまで本気で取り締まったりしないから、みんな結構SNSとかで気軽に「行ってきましたー!」なんて報告をしたりもするわけだ。

で、稀に捕まる奴もいる。

大体は夜中に大騒ぎしてて通報されるようだけど。






⬆ちなみに何年か前、栃木の某巨大廃墟旅館への不法侵入が後を絶たないという事が話題になった折、その物件の内部画像をTwitter・YouTubeに載せていた僕の元に、とある汐留のテレビ局から「どういった心理で廃墟へ侵入しているのか?」といった旨の電話取材があった。廃墟マニアの言い分として番組で音声を使わせてほしいと。

僕は鼻息を荒らげながら、此処ぞとばかりに廃墟の魅力を語り尽くした。


その鼻息さえもオンエアーされる事は無かった。


Instagramでどれだけ廃墟写真が持て囃されようが、それはごく一部の、明るく綺麗な物件(例えば岡山の白い廃校)だったり、はたまた一緒に写っているコスプレイヤーがイケメンor美人だったりするからこそ評価されるものであって、暗くて臭くてジメジメして、たまに天井から巨大ゲジゲジが落っこちてくるような物件にハァハァしている僕みたいな人間は、只々無粋で、なんなら犯罪者なのだという事をひしひしと実感したとも。




話がだいぶ脱線した。



で、1つ目の問題は、法律的に如何なものかって事。






それからもう1つは、やっぱり安全面でしょう。


僕が初めて廃墟に足を踏み入れた日から、ざっと17年が経つ。


この間、スマートフォンの台頭もあって、SNSや動画投稿サイトが一気に市場を拡大し、Youtuberなんかが廃墟で肝試しをしたりするようになったもんだから、今まで以上に「廃墟」というものが身近に感じられる時代になった。


一昔前までは、廃墟の所在地に関する情報はネットに掲載しないというのが暗黙の了解であったように思うが、気がつけば「廃墟検索地図」なる立派な廃墟ガイドマップサイトが登場し、誰でも近所の廃墟を見つけられるようになった。

「いやいや、汗水垂らして物件捜し出すのが廃墟探索の醍醐味なんじゃないの??」

などと偉そうな事をほざいていた僕も、何だかんだお世話になっている。


そうなってくるとやはり、キティッパなんか履いてドライブのついでに肝試しやろーぜー!的な連中も押し寄せて来る訳で、実際に廃墟内部で大怪我をしたり、最悪の場合は転落して死亡してしまうといった事故起きている。


長々とつまらん話を書き連ねてきたけれど、要するに何が云いたいのかと言うと、


廃墟なんか行くもんじゃないよなって事。

臭いし汚いし捕まるかもしれないし天井からゲジゲジ落ちてくるし、なーんにも良いことが無い。


間違っても30手前の大の大人がやる事じゃない。


それでも、どうしても、気になってしまうのです。

廃墟探索には中毒性があるから。







僕は何かしらバックボーンのある廃墟に惹かれやすい。不謹慎な事だが。


たとえば何の変哲もない田園風景の中にぽつんと佇む、この犬舎の廃墟が、平成事件史に名を轟かす凶悪事件の舞台である事など、きっと誰も気付くまい。

近所の住民でさえ、忘れかけているのだから。



豪腕の実業家。日本に初めて「シベリアンハスキー」を輸入した男の正体は、身の毛もよだつ凶悪殺人鬼!?

 

かつて「動物のお医者さん」という漫画の流行を皮切りに、爆発的な人気を博した犬種「シベリアンハスキー」。今でも町中で散歩してる姿をよく見かける。

 

日本で長きにわたり愛され続けている犬種なわけであるが、元々の原産地はシベリア。

 

そんなシベリアンハスキーを、初めて日本に連れてきて、国内での繁殖に成功させた「S」という男がいる。

 

関東地方某所で犬舎を営んでいた実業家兼、敏腕のブリーダーだ。

 

彼は、経営者、ブリーダーとしての手腕も然ることながら、実に人当たりも良くユーモアに富んでおり、所謂「信頼の厚い人格者」として持て囃されていたのだとか。

 

しかしそれらは全て世仮の顔。

 

「S」という男の正体は、己の私利私欲のためならば意図も容易く人命を手にかける凶悪殺人鬼であった。

 



上得意を、時には暴力団の重役を、、、

トラブルに発展した顧客を次々と殺害していった。

 

先述の通り“表面上は”人望の厚い人柄であった「S」。

故に、彼の持ち掛ける商談にまんまと乗せられてしまう顧客も多かった。それが悪質な詐欺であるとも知らずに。

 

彼が実際に行っていた詐欺行為の一例として、

  • 「仔犬が産まれたら高額で買い取るから」と嘘の口約束を交わし、犬のつがいを法外な値段で売り付ける。
  • 実際に仔犬が産まれ、買い取りの依頼に来た客に対し、理不尽な難癖を付けて買い取りを拒む、もしくは値切る。

 

などがあった。

 

泣き寝入りをした客も沢山いることだろう。

しかしもちろん、皆が皆そういう訳にはいかないわけで。。。

 

 

 

 



そして客は“透明に”された

 

 

「殺しのオリンピックがあれば俺は金メダル間違いなしだ」

 

「俺は殺しの世界で一番の男になりたい」

 

「死体を透明にする事が一番大事」

 

「死体がなければただの行方不明。証拠があるなら出してみろ」

 

 

これらは全て、「S」が生前周囲の人間に話していた、いわば彼の掲げる“殺人哲学”の一部である。

「S」は、死体を完全に消し去ってしまえば、例え疑いをかけられる事があったとしても殺人罪で捕まる事はないという絶対の自信をもっており、前項で述べたような詐欺的な取引を行っていく上で自分にとって不都合な人間、乃至楯突いてくる人間を次々に惨殺。遺体は自身の経営するペットショップや、その従業員の自宅等に持ち帰り入念に解体した上で焼却。更には遺灰を金槌で砂状になるまで叩いて粉砕。それを山中の川に流して捨てていた。

 

見つかるはずも無いわけだ。

 

 

 



 

数多の未解決事件

 

この一連の事件では、4人の人物が「S」によって殺害されたという事になっているが、

「S」は逮捕後「他にも何人も殺した」旨の供述を行った。

 

だが時すでに遅し、

 

残る死体は全て跡形もなく“透明”にされてしまっており、立件が不可能であった。

 

事実、殺害が認められた4人以外にも、「S」の周りでは多くの人々が謎の失踪を遂げている。

 

考えただけでも無念だ。

 

 

 





何の変哲もない田園地帯にひっそりと佇む小さな小屋。

一見して、大量殺人などとは縁遠いように思われるこの場所に、凄惨な歴史が隠されていた。





ちなみに、事件発覚の直後に阪神淡路大震災が発生したため、この件が大々的に報じられる事は無く、「S」は2017年、獄中死した。