【海外視察】WESTONE本社視察に行ってきた!~VOL.2~ | イヤホン・ヘッドホン専門店 旧e☆イヤホンのBlog

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まこ
どもカスタム専門店のまこです。

おはようからこんばんわまでWESTONEの提供でお送りいたします今回のブログ
そうWESTONE本社に行ってきたVOL.2です!


今回ブログで潜入した場所からコロラドの空を撮ったたっくん。
風景撮りに目覚めたらしくアメリカに引っ越したいと延々といってました。
雄大な自然に囲まれ、ビールも上手いとくれば住みたくなりますわな。


余談もほどほどに。
今回はコレ!

コンシューマー製品UM PROシリーズの工場に潜入です。

皆さん知ってましたか?
UM PROシリーズがハンドメイドって事。
自社工場で、一つ一つ手作りで作成しているのです。
早速レポートしていきますよ。


まずここです。


筐体製作部屋

ここの部屋では成型金型を利用した筐体の作成を行っています。
UMシリーズや、ミリタリー系その他自社製品の筐体を成型しています
まさかの自社で筐体まで作っているとは、思いもしませんでした。

筐体を製作したら次へ


ここがUMシリーズのラボです。

ここでUM PROシリーズは、生産されています。
アッセンブリ製作から組み立てまで、8つほどのデスクで分担作業し製作しています。
ここではWESTONEでも大ベテランの方々が一つ一つ手作りで作っています。


アッセンブリ

ドライバー、チューニング用の基盤を組み込み、MMCXまで結線してあります。
ここまで製作したら画像のように製品別にまとめていきます。
次の工程では、サウンドチェックで波形の計測を行います。
サウンドの検査値が水準を満たしたことを確認したら
ネットワークを組み込みます


筐体に填めこみます。

筐体内には、ドライバーがパンパンの状態で入っています。
筐体内容量を最大に利用して高音質を目指しているってことですね。
WESTONEのコンシューマーモデルはボディのサイズがコンパクトで、あらゆる方にお使えいただけるようなユニバーサルな設計がされている印象が強いですね。
ぴったり耳にはまるってことも、長年いろんな人の耳を見続けた老舗ならではの蓄積された知識と技術なんですね。

余談ですが、WESTONEのコンシューマーモデルがシングルボアの理由はご存知ですか?
ここでも理由は老若男女問わず耳に入ることフィットすることを意識しているそうです。
一貫した理念があるからこそ、WESTONEのフィット感が作られているんですね。
WESTONE特有の自然な音の混ざり方も、サウンドメイクの部分でもシングルボアが影響しています。



外装を接着し完成


この方がここの責任者となりまして、ある意味UMシリーズの母です。
UMPROシリーズは手作りゆえ一日の製作数の制限があります。
この日は生産が追いついていない機種の製作の為、残業をしていました。
手作業しているところや、人が見えるとより大事にしたくなりますね。
UMpro30は前から個人的にに好印象の製品でしたが、これでもう購入確定ですね。


QCがホワイトボードに。

クオリティコントロールしっかり行っていです。
良い製作例から、ダメな作成例まで画像つきで説明されています。
このホワイトボードにはそういったセクションごとのQCと、製品型番等の必要事項の記載がありました。
初期の不良が多かったシーズンから、こういった努力をして少しずつ不良を減らしていったのだなと感じました。


ピッキングされ発送されていきます。

ここから世界中への商品の発送を行っております。
日本への注文もココからでていってます。
実はこの建物は非常に大きくて商品の倉庫も入っています。こんな感じです


資材、在庫の山!山!山!


ちなみにこれは一角です。
WESTONEは、イヤホン関連だけでなく、補聴器関連のサプライまで多くの製品があります。
そのためバケツサイズの印象材(インプレッションの材料)であったり、筐体作成用素材のストックあったり関連するものは、ここに大量に保管されています。
いや規模違いすぎて言葉がでなくなってきました...。
こんな感じで工場見学は終了して、本社ビルに移動。
とある一室に案内されました。



この部屋はいったい...。

本社の休憩所の前にあったこの部屋。
あまり大きくない部屋なのですが、なんとWESTONEの製品が開発される開発室だそうです。
数々の名機がこの部屋で製品化に向け研究を繰り返し、設計されていきました。
ここからすべてが始まるわけですね。

ほどなくして、WESTONEの神様の部屋に案内されました。


子供部屋のように遊び心があふれる部屋でした。


好きな物に囲まれ仕事しているようで、おもちゃ箱のようなデスクでした。
非常に研究熱心なお方でもあり、いろいろなイヤホン、ヘッドホン、音響機材などがコレクションされてました。
ふとデスクを見るとSENNHEISER HD800と、Fiio X5が置かれていました。
価格やメーカーは関係なくいい音は、いい音!と仰ってました。
X5は特に、コストパフォーマンスが優れていると太鼓判しておりました。

前置きが長くなりましたが、この方にインタービューです。


WESTONEの神様 カール・カートライト氏

この人がWESTONEのサウンドディレクターであるカール・カールライトさん
コンシューマーからカスタムまで、すべてのカスタムIEMを手がけ、世に数々の名機を生み出してきた
まさにWESTONEサウンドの神様といえます。
インタビューしてきましたので、抜粋してeイヤホンの質問から。

~ここから対談~

たっくん:どのメーカーに行っても必ず質問している質問です。「Westoneにとって”いい音”とはどんな音ですか。」

カール氏:「あたたかく」「ニュートラル」な音です。アグレッシブではなく、疲れるサウンドではない。

たっくん:そのままな気がしますね

カール氏:それはよかった!!他のブランドが自分たちのブランドをどう表現しているか知りたいですね。

たっくん:BAを使用したブランドがWestone以降増えていますが、不覚にも、カールさんが「いいな」と思ったブランドはありますか?

カール氏:みんないいですよ。
私の好きな音はWestone(自社)製品で表現していますので特別ですが、たとえばWestoneのES60とJH16を交互に聞き比べてみた場合、コントラストは明白だと思います。
JerryはFreqPhaseStyleは、とてもいいのですが、私には高音が少々アグレッシブに聞こえます。
でもそれは私の好みですからね。Jerryはたくさんのアーティストと仕事をし、彼自身の音を開発して表現しているわけですからね。
スピーカーを並べて「これとこれとこれで音作ろう」なんてやり方ではできませんから。
UEもJHもいい製品を作っていると思います。1964などユニークなブランドもいいですね、でもみなWestoneとは違うターゲットなわけですからね。
私はこれからもよりよい音を作っていきたいと思いますし、本物のツアーサウンドにこだわっていきたいと思っています。その部分は私の変えられない部分であり、大切な部分なのです。

たっくん:実際に音を作るときにどうやって決めますか?周波数が良くて耳で聞いて悪かったとき、耳で聞いてよくても周波数が悪かった場合、どちらで決めますか?

カール氏:まず聴きます。聴いてから判断します。どんなにすばらしい耳でもすべての音が聞こえるわけではありません。
まず聴いて、「聞えてない音はないかな?」と考え、「どこかによりよくする余地がないかな?」と探します。
それを繰り返して「これはいい」と思える音になった時点で、その基本となる音の周りに音を肉付けして組み立てる作業をおこないます。
たとえば音のピークをちょっとシフトして・・・500Hzなどの大きな変更ではなくほんの少しだけ・・・「どんな音になるかな」と試してみるわけです。
この作業はまるでお料理を作るためのレシピのようなものですね。
たとえば、私とあなたがアップルパイを同じリンゴ、生地を使って作ったとしても、砂糖や味付けの加減で全く同じアップルパイができないのと同じです。
音を作るという作業も、材料は同じかもしれませんがそれをどうまとめていくかが重要になりますね。
たとえば、私が最初にイヤーピースを作り始めた頃の話ですが、その頃は我々以外にBAを使っていませんでした。
誰も他にいなかったのです。数年前にネットサーフィンでいったい何社がBAをカスタムIEMに使用しているのか調べたところ、28社ありました。つまり、非常に多くのブランドがBAを使用するようになったわけです。
ただ、その各社にも違いがあります。価格重視派もあれば、宝石のような見た目を重視するブランドもあります。
言ってみれば、この業界には誰にでも作ることができるチャンスはあるわけです。
ただ、その中でも我々はどうフィットする製品を作るかを知っているブランドです。1959年からの経験があるのですから。創業2年程度のブランドよりは知っているつもりですよ。これは我々のとても大きなベネフィットだと思っています。
ということで、ご質問の答えとしては「耳」ですね。

たっくん:ナイスアンサーです!最後に、おそらくWestoneの過去の大きなターニングポイントとして、MMCXコネクタの採用があげられると思いますが、その理由を今一度お聞かせいただけますか。

カール氏:もちろん2ピンコネクタも小さくて素晴らしいコネクタです。 ですが、一部のユーザーにとっては、自由な動きを取ることができないコネクタでもあったのです。
ローテーション(回転)する動きができないので、ステージで使う場合に動きに制限が出てしまうのです。
また、何度も脱着する人にとっては、必ずしも長期間の使用に耐えらえる仕様とは言えませんでした。
その点、MMCXは動きをより自由にし、ユーザーのみなさんにもよりフレキシビリティをご提供するという点で会社の方針ともあいまって採用を決めたのです。
「完璧な世界」としてはもちろんワイヤレスです。これは私のゴールでもあります。もちろん今の音のクオリティを下げることなく、ワイヤレス化することです。ですが、これは現在の技術には残念ながら存在しないのです。
我々は常に「完璧な」コネクタを探しています。将来的にもしMMCXよりもいいコネクタが出てくれば採用するかもしれませんよ。
常に新しいものを探していますし、新製品の可能性ももちろんあります。私の興味はミュージックプロダクツだけではありません。ヒヤリングヘルスケア製品(補聴器等)、軍用製品(航空パイロット向け製品)にも関わってきましたがそれらいずれもとてもユニークなデザイン(設計)のゴールがありました。
デザイン(設計)に終わりはありません。「さあ終わった!」と本を閉じて帰宅して寝ようとしても、その瞬間に「ああ、あそこはもっとああできた!」と思っちゃうものなのです。そんな具合で終わりがないのですよ。
ということで、そうですね、MMCXは大きな変化でした。いくつかの2ピンが持っていた課題をクリアできたと思っています。
しかし同時に、2ピンコネクタを愛用しているユーザーのことも忘れてはいけないと思っています。
我々はあらゆるユーザーの希望をサポートしたいと考えていますので、できる限りのケーブルオプションを残してご提供しているつもりです。
私の周囲にも15年以上前のイヤホンを使用している人たちがいます。「新しいイヤホンを買って」ということは簡単ですが「何かWestoneがお手伝いできますか?」と言うメーカーでいたいのです。
これはイヤホンメーカーとしてとても大切な姿勢だと思っています。実際に2ピン愛好者はいらっしゃいますし、そんなユーザーのためにもWestoneは常にご用意していくつもりです。

まこ:フレックスカナルを採用した理由を教えてください。補聴器側からの目線で決めたのか、イヤーモニターとしてフレックスカナルがいい、という判断だったのか、どちらでしょうか。

カール氏:カスタムIEMを作り始めた理由は「アーティストのため」が原点です。たとえば1995年にVan Halenと仕事をしたときのこと。
ドラムのAlex Van Halenは常に彼のイヤーモニターを壊していました。考えてみてください。彼の後ろには215インチや210インチ(いずれも約5m)のスピーカーキャビネットがあり、たくさんのホーンがドラムセットが組み込まれていました。
彼が力いっぱいスネアドラムを叩くと117dbが彼の顔面を直撃するような状況だったのです。
また、DEF LEPPARDやRUSHと仕事をしたときも、彼らも同じような問題を抱えていました。ステージ上のボリューム、またはステージ上の距離が問題だったのです。
LED ZEPPELINの「Song Remains the Same(邦題「狂熱のライヴ」)」という映画をご存知ですか?
マジソンスクエアガーデンでの彼らのライブ映画、70年代のスーパーグループのライブです。当時のステージは私のこの部屋から隣の部屋程度のものでした。バンドメンバーはお互いとても近くで演奏しなくてはならなかったのです。アンプも近くにありました。モニタースピーカーもすぐ近くです。
演奏の音はもちろん非常に大きいのですが、それでもお互いが近くにいなければならなかったのです。
それが90年代になると、たとえばRUSHのライブステージは端から端まで35mもあるような規模でした。こうなると音の遅延も発生するようになりました。
DEF LEPPARDやRUSH両バンドのプロデューサーだったビル・クライスラーは、この両バンドでツアーをプランしましたが、それぞれに顕著な問題が生じたのです。
DEF LEPPARDではステージ上のボリュームが非常に大きく、ボーカルのJoe Elliotはもう音が聴こえない状態だったのです。
モニターから聞こえる彼の声がクリアに聴こえなくなっていました。ある特定の周波数が聞こえなくなっていたのです。
我々がどうしたかと言うとイヤープラグとBAスピーカーを使用したイヤーピースをJoeに作りました。
そうしたところ、マイクを床の距離は問題でなくなり、聞こえづらくなっていた特定の周波数も聞こえるようになったのです。
イヤーピースが周囲のボリュームを25dbほど下げた効果でした。
ステージ上のボリュームは112dbですが彼の耳の中は86や87といったボリュームでクリアに聞こえるようになったわけです。
RUSHはまた別の問題を抱えていました。彼らは聞こえるものの、たとえばドラムの「1,2,3,4、」のカウントが遅れて聞こえていたのです。
USHのようなバンドの音楽はタイミングが非常に重要で、秒単位のズレでもステージ上では致命的でした。
そこでわれわれは同様にイヤーピースを作ってこれを解決したのです。この2バンドの経験からAlexの問題も同様であることがわかりました。
モニターよりイヤープラグ優先させることで解決することができたのです。
どうしたらよりよい音になるかを考え続け、それが複数ドライバの製品を生み出してきました
あるミュージシャンにとっては「ドラムが聞こえればOK」のようなタイプもいます。ですが、みなさんが聞いている音楽や演奏している音楽をモノではなくステレオに、違うプレーヤーで使用してもいい音を提供したいのです。
というわけで、少々ご質問からずれましたが、まずミュージシャンのステージ用のイヤーピースありきでした。フレックスカナルは体温で柔らかくなります。椅子に座って音楽を聴く場合はもちろんアクティブではありません。ですが、演奏し、歌うということはとてもアクティブであり、常にどうしたら本当にすばらしくフィットし、ガムをかんでいてもフィットするような装着を求めてきました。
そこで採用したのがフレックスカナルでした。私は100%の成果を得られたともちろん思っていますが、他の方にとってはそうでないかもしれません。
ですが、調和のとれた(バランスのとれた)あたたかい音と長時間使用しても疲れない製品がゴールなのです。
ということで、アーティストにとっての機能が第一であり、そのためのフレックスカナルの採用だったわけです。
オールシリコンのイヤーピースも作成したことはありましたが、残念ながら耐久性においてすぐれていませんでした。
補聴器業界はすでにこの素材を使用しなくなってきています。デビッド・ボウイなどはこれが好きでしたけれどね。
面白いことに、アメリカのヒヤリングエイド製品業界(補聴器業界)ではやわらかい素材がいいとされているのに対し、ヨーロッパでは固い素材がよいとされています。
アメリカの補聴器は60%がシリコン、40%がアクリルなのに対して、ヨーロッパでは80%がアクリル、20%がシリコンといった感じなのです。
日本に行ったことがないのでわからないのですが、日本の補聴器はシステムが違うのでまた異なる文化でしょうね。

と長くなりましたが、ほんとはもっとお話がありましたが、相当長くなるので、ここまで。

最後にカールさんからの実際に動画でメッセージ頂きましたのがコチラから



日本のWestoneファンの皆様へ From カール・カートライト (Westoneサウンドデザイナー)



というわけで今回のWESTONE視察の様子は以上となります。

皆様WESTONE UMPROシリーズに詰め込まれた心意気と魅力お分かりいただけましたか?
少しでも知った上で手にとって頂いたり、もしお持ちでしたらより愛でていただければ幸いです。

以上まこでした。サバラッ!

P.S ES60が来ましたので、後ほどレビューします。

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【海外視察】WESTONE本社視察に行ってきた!~VOL.1~


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