結髪修行のために京都へ通い始めて二ヶ月くらいが経った頃でした。


京都から婚礼衣裳の営業で一人の男性がやってきました。

話だけでも聞いてみようかとその方の持参された商品を見せてもらいました。

店主「ごめんなさい、ウチは変った店なんですよ。 こういうのはウチ向きでは無いんです。」

  「掛下も化繊じゃなくて、絹にこだわって行きたいんです。」

  「白無垢も青みのある白より、生成りに近い白がいいんです。その方が肌が綺麗に見えるから。」

などなど、おそらくあまり他の貸衣裳店では言われないようなことばかり連発する店主。


営業にいらしたその方はしばしポカン。

コストパフォーマンス、メンテナンスの容易さ、純白神話などからいうと、どれも一般的な衣裳店とおそらく真逆な事を言っているからだったのでしょうね。

でも私が求めたいものを必至で理解しようとしてくれていました。

一通り話が終わったあと、聞き上手の営業マンに気を良くした店主は自分の『夢』の話をしたのです。





「私ね、いつかオリジナルの着物を作りたいんです。」

「アンティーク着物の美しさが大好きでこの仕事を始めた訳ですが、アンティークにも限界があります。サイズとか、生地自体の耐久性とか。」

「現代の着物にあまり気持ちが動かないのは、自分が美しいと感じられるものに出会えてないから。だったら、自分で美しいと思えるオリジナルの着物をいつか創りたいんです。何年かかるか分からないけどそれが私の夢なんです。」と、初対面のその方にまたまた熱く話してしまった訳です。



「う~~~~ん。」としばらく首を傾げてその方は言いました。

「一点ものを作ってくれる所はなかなか無いかもしれませんねぇ。」

しばらく考え込んでから閃いたように言いました。

「あ!でももしかしたら一つだけあるかもしれないです。オリジナルを作ってくれるところが。」





と、いうわけで…。


毎月、京都へ通っているのは結髪修行のため。

だけじゃなかったのです~。

そんなご縁があって、5月に初めて『山口美術織物』さんに伺いました。



②へつづく♪