────勢いでユノのマンションまで来ちゃったけど、真っ暗な部屋。
今日はバイトじゃないはずなのに…
本当に逢いたい時にはいつも逢えないもどかしさが僕を苛々させる。
マンションの通路からふと、あのタワーが目に入る。
……もう、遅いけど、行ってみようかな?きっと、夜景がきれいだろう。
ユノが、嫌なことがあると行くって言っていたあの場所に僕も無性に行ってみたくなって、足早にマンションをあとにした。
────「…ぅわぁ…………!」
はるか高層から見下ろす街並みは、前回来たときとはまるで顔を変えていて…散りばめられた光の洪水に…吸い寄せられてしまいそう。
「……ユノ。……きれいだね。」
何気にポツリと呟く。
────「……俺が、…なに?」
背後から聞き慣れた声。
振り向くと、ちょっと拗ねたように口を尖らせたユノ。
「……!!/////…あ、あの……。」
僕の背中にフワッと身体を重ねてきて、肩に顎をのせ…はぁ、…と息を吐く。
「……チャンミナ。……来るの遅い。」
「お、遅いって…ユノだって、なんの連絡も…。」
さらに身体を密着してくるから、他に人がいるだろ、…って背中で押して離そうとするけど。
「……大丈夫。カップルしかいないから。…周りなんて見てねーよ。」
って、更に押し返してくるから…僕は手すりとユノの間で潰されそう。
「…ユノ!……痛いってば!」
「………だめ。…離さない。」
……仕方なく、視線を目の前の酔ってしまいそうな夜景に向ける。
背中からユノの熱と匂いに包まれて、このまま言葉はいらないような気がした。
ユノが僕を想って、ここにいた事が……僕がユノを想って、ここに来た事が…すべてのように思えた。
「あのさぁ…あれはさすがに、ねーだろ?」
「真っ赤な顔して、…上目遣いで…。」
「……俺の目の前でさ、…そんな事されたら…俺、気が狂うかと思った。」
「おまえ…ひでーよ。…俺、ここまでされるような事、おまえに何かしたっけ?って、真剣に考えたし。」
「なぁ、…本当に、もうやめて?俺、…チャンミナしかいらないんだからさ。」
……僕の思いとは裏腹にベラベラしゃべりだしたユノが止まらない。
「……せっかくの夜景なんだから、…ちょっと、静かに…
「無理!!……昨日はいろいろ考えて寝れなかった。ちゃんと話さないと、頭パンクしちゃうだろ?」
「…………しょうがない人ですね。」
────このどうしようもなく色々な顔を持つこの人が愛おしくてたまらないんだから…僕の方がしょうがない人なのかもしれない、って思う。
「ねぇ、ユノ。…リヨンさんの事、…どう思いますか?」
「ん?…何とも思わねーよ。」
「だから…好きとか、そういう事じゃなくて…リヨンさんに対して、何か…思う事です。」
……あのね、ユノ。あの時のキレイな涙が忘れられない。
ハデな見せかけだけじゃなく、純粋な少年のような心を持ったユノを好きだと言った人。
「んー?…チャンミナを可愛がってくれてありがとね。とか?」
「でも好きにはならないでね。とか?」
「もう…!!バカじゃないですか?」
「…ん。俺…チャンミナに関しては、本当…バカだから。」
「でも…………それでいい。」
ギュッと後ろから抱きしめられて。
「……やべっ。…興奮しちゃった。」
「……!!////////」
「なぁ、今日、俺んち泊まるだろ?」
そう言って返事も聞かずに僕の手を思い切り引いてタワーをあとにした。