~チャンミンside~
─────暗闇の中、鈍く光るナイフと狂気の瞳。
「……ずっと、ずっと、2人きりになりたかった。…………やっと、叶った。」
ハァハァ、と荒い息が、正常ではない目の前の男の精神状態をあらわしていて。
恐怖で声も出ない。
───ばかだ。
あの人がメモを使って、僕を呼び出すなんてこと、…するはずないのに。
ただの願望をいいように利用されて、それが情けなくて。
「……遥か昔、…俺たちはひとつだった。………一緒にいこう………。」
────いやだ。
望まれて産まれた僕ではないけど、…でも、…いいこともあった。
心が震えるような歌に出会った。
そして、───あの人に心惹かれた。
バタンッ、──!!!
開いたドア。
その先に、…たった今まで考えていたその人が、全身総毛立つほどの迫力で現れた。
目の前の男の、派手な舌打ちと。
振り上げられたサバイバルナイフ。
素早く飛び込んできたあなたと、狭い部屋内の通路、…もつれる2人。
勝負は、あっという間だった。
鮮やかなほどの動きに、…安堵からか、…ふっ、と意識を持っていかれそうになる。
────これは、またしても僕の勝手な願望なのか?
あなたがしゃがみ込んだ僕の頭を掻き抱き……。
「──────愛してる。」
そう言ってるように…感じた。
「…ユ、…ユノさん?」
信じられない、…という僕の表情を察したのか。
僕の頬をふわり、と包んで。
「…チャンミン。…愛してる。」
切なげに細めた瞳。
───それは、今までのどんな囁きよりも、優しくて。
「……ぼく、も。……僕も、…です。」
やっと口に出た言葉は、あなたの唇でそっと塞がれる。
すぐに離れた唇が、照れくさそうに口角をあげた。
「…ごめん。やっぱ、…離してやれない。」
「…嫌な思いをさせるかもしれない。…でも、守るから。…俺のすべてで守るから。」
「だから、────側にいて。」
僕は、泣き虫だ。
ううん。──それは、あなたに関してだけ。
またもや止まらない涙を、あなたは何度も唇で受け止めて。
「…泣き虫の天使ちゃん、だな。」
って、クスッと笑う。
「…う、うるさいっ////!」
強がっても、まだしつこく溢れる涙に。
嬉しくて、幸せに涙することを知った。
「…もう泣き止め?…そろそろ、ドンジュさんや警察呼ぶからさ。」
そう言って、僕の頭をポンポンと撫でる。
あの後、真っ青な顔をして駆け込んできたドンジュさん。
警察まで来て、さらにごった返すスタジオで、僕とユノさんはなかなか解放されず、仕方なく僕の収録だけ延期になった。
やっと解放されたのが、もう日付も変わる頃。
「しかしびっくりしたよなぁ。…ストーカーがまさかの男で関係者だったなんて。」
疲れたのか、首を左右に振りながらユノの運転する車に乗り込むドンジュさん。
「…チャンミンも。大したことなくて、本当に良かった。」
「これで、心置きなく明日のバースデーパーティーは楽しめるな?」
って、にっこり笑う。
「…なぁ、ドンジュさんちって、あそこでいいんだよな?」
ハザードランプを点灯して、道路脇に車を滑らせたユノさん。
「…は?…どおりで道順が違うと思った。俺も宿舎でいいよ。」
僕もそのつもりでいたから、2人して呆気にとられた顔をしていたのか?
ニッ、といたずらっ子のように笑ったその人。
「ドンジュさん、今夜は俺とこいつ、2人きりで祝うからさ。…悪いけど、遠慮して?」
はっ?///って、口をポカンと開けたままのドンジュさんを追い立てるように車からおろして、───じゃあね。って、ドアを閉める。
「…お、おい!…ユノ!」
ハッと我に返ったドンジュさんの追いかける仕草に。
車から半身を乗り出して、それこそあがなえない程の満面の笑顔で。
「俺、…遊びじゃねぇから。チャンミンのこと。」
「本気なら、問題ないだろ?…じゃあな!」
それだけ言って、また静かに車が走り出した。
そんなやりとりで、ただ驚きと恥ずかしさと、少しばかりの嬉しさとで真っ赤になって固まった僕を見て、ふふん、と、どうだと言わんばかりの顔。
ひとり残されたドンジュさんが、まだ口を開けたまま放心したように立っているのが小さく見えた。
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いつもありがとうございます♪
次回で完結です。
次回はまた《逢いたくて逢いたくて》を、と考えていたのですが。
以前、いちごさんが「黒チャンミンも見てみたい!」というコメントをくださって。
それから、黒チャンミンの虜(>.<)
結局、いちごさんの考える《黒チャンミン》と、私が書き始めちゃった《黒チャンミン》がまったく別物という、残念な感じになってしまいましたが^^;
ユノを翻弄する気まぐれチャンミン♪ってことで(^^;)エヘ