紅-クレナイ-の人~その理由~ | えりんぎのブログ
あ**様へ。
(勝手に)素晴らしい作品への尊敬と感謝の気持ちを(下手っぴな)このお話にこめて贈ります!←ホント、メイワク^^;




***番外編です***















~チャンミンside~







──────あ、…ユノさん。



あるブランドのレセプション会場で、深紅のロングドレスを身に纏った女優の隣、SPなのにエスコートしてるかのように歩く人。


黒のタイトスーツがこれほど似合う人もいないんじゃないか、…と、女優さんに負けない色香を漂わせ、一際目立つ2人。


ボーッと見惚れていたら、コツンとドンジュさんに小突かれた。


「…ばか。そんな目で見るな!」

って、言われても。


「……だって、………格好いい。」


「あー、っもう!////おまえ、………。」


ジッと僕の顔を見て、──まぁ、…いいや。って、呆れ顔。


しつこいくらい長いため息までついちゃってさ。


「…分かったけど、…あんま、堂々と漏らすな?…頼むからさ。」



最近のドンジュさんの最大の悩みは、僕とユノさんの事らしくて。


今のところ、ドンジュさんしか知らない僕たちの関係。


─────と、思っているのは、僕たちだけかもしれない。


ユノさんは、あのストーカー事件以降まったく隠す気なさそうだし。


僕はユノさんについて行くって、決めてるし。


「チャンミンッ!!…目が、ハートッ!!!」


───ほら?…また、叱られた。




「チャンミン?今度はなんだ?…目が恐いぞ?」


立食形式のパーティーで、ドンジュさんについて適当に挨拶しながら、僕の顔はどんどん強ばっていった。


────なんだよ?…あれ。


他のSPが会場の外や隅で見守る中、あの女優がユノさんを側から離さない。


事務所の人と連れ立っているのに、事務所の人がおまけみたいだ。


ユノさんの腕にそっと絡める細く白い腕。


深紅のドレスと同じ色のマニキュアが綺麗で、そのしなやかな指がユノさんの肩にそっと触れるとか。


「…!!…だからっ、…睨むな!!」


─────うるさいな、ドンジュさん。





もやもやした気分のまま、向かった洗面所のまえ。


スッとした長身を壁にあずけて、少しうつむき加減のその人。


フッ、と僕に視線が重なった。


「…よお。」


スッと片手をあげた仕草まで、さまになるのが憎らしいけど。


「ユノさん。……いたの?」


なんて、初めて知ったみたいに白々しく澄まして言ってやった。


「…なに笑ってんの?」


──────///////////////!!!




僕は、────ばかだ。


好きだ、って、認めてしまったら、こんなにも止まらない想い。


芸能人とそれに付くSPなんて、休みがあってないようなもので。


逢いたくてもなかなか逢えないのが、……ほんと、バカみたいにつらいとか。


「……ユノさん。」


スッと目を細めて、忌々しそうに口元を歪めるユノさん。


「…っばか!!!」


──────え?

僕、なにかした?


───来いよ、って、そのまま思いっきり腕を引かれ、洗面所の個室。


ガチャ、と後ろ手に鍵を閉められて。


「さ、さすが、高級ホテルのトイレ、…ですね?」


焦って照れ隠しの僕の言葉なんてまるで聞いちゃいないだろ?


「────そんな瞳で、…見るな?」


僕の頬を両手で包んで、ギュッと自分に向ける。


「はぁ、…チャンミン。久しぶりに会って、…その顔。……マズいだろ?」


「ユノさんが忙しいからだろ?隣のマンションにいても意味ないし。」


「…大体さぁ、どれだけあの女優につき合ってるわけ?、って、うっ、んっ!!」


有無を言わせないキスはユノさんの得意技。


片手が僕の耳朶をくちゅくちゅと摘まんでは撫でる。


そのあいだも、どんどん深くなるキスに、…耳からの刺激が重なって、…ダメだよ?──ユノさん。


ガクッとおれる膝。


ぐいっと腕を引き、腰をつかむ大きな手。


さっきまでのもやもやが、ユノさんの唇の柔らかさに、…ユノさんの匂いに消されていく。


そう、……クチュリ、…クチュリ、と。


────って、!!!!!!!!//////////


ここ、どこだっけ?…ヤバいだろ?///


僕がとっさに浮かんだのは。

ドンジュさんに叱られる!!!!!!!



ドンジュさんのしかめっ面が僕の脳内を占拠してきて。


「……ユ、ユノさんっ!!ちょっ、…もう、だめっ!!!って、…んっっ!!!!!!!!!」


背中が反り返るほど覆い被さってくるから、…痛い、ってば。


いつも憎らしいほど冷静なのに、一度熱をもつとなかなか消せないのがユノさんで。


分かっているけど、…やっぱここではマズい。


「ちょっ、と……冷静に、…なって?」


顔と顔の間に手を挟んで、なんとかユノさんを離した。


「…とりあえず、…はぁ、…冷静に、ね?」


キュッとユノさんの鼻を摘まんで、ニコッと笑ったら。


───ニッ、と片方の口角だけあげて。


「────はい、失敗~!!!!」


そう言って、僕の手をペシッと払い、今度は親指を僕の口に突っ込んでくる。


「なぁ?…舐めて。」


ユノさんの唇が僕の首筋を往復し始めて、……ああ、声がでないように?


ユノさんの熱い息づかいが少し開いた襟元から抜けて、ズクンと背筋に響く。


目の前の人がとろけそうな甘い瞳で、自分の指を口に含んだ僕を凝視し始めて。


「…チャンミン。はぁ、…おまえさぁ、…わざとなら、…ほんっと、やばい……。」

言葉尻にユノさんのイライラが含まれて、──親指、突っ込んできたのは、そっちじゃん!


言いたいけど、…なんだか、僕もやばいよ、…ユノさんの指がくいくい、と動き出すから、それを追っかけるように舐めてたら。


────ああ、…美味しい、とか。


クチュリ、クチュリ、と響く音に、さらに熱が昂まって。


ユノさんが、そんな僕の口元に舌を伸ばしてきて、…ユノさんの指と舌が同時に僕の口内を弄るのが。


───なんていやらしい、…興奮でブルッと震え、目尻に涙まで浮かんできた。


くっ、…と歯をくいしばったような気配がして、そっと目を開けたら、潤んだ目尻にユノさんの唇がおりて、ピタッと親指の動きがとまった。



ゆっくりの抜かれる親指、…僕の口からツーっと引く糸に恥ずかしさのあまり、顔から火がでそう。



静かに顔をあげたユノさんは、つらそうに眉間に皺を寄せていた。


「……さすがに、…マズいな?」


チュッ、と軽くふれるだけのキスをして、僕の襟元をきれいに整える。


「おまえの子守唄、…聞きたいな。」


そんな事、呟きながら。



「…さ、行くか。ドンジュさんに叱られちまう。」


「ほら?顔…、普通にもどせよ?」

ってさ、さっさと仕事の顔に戻ってるあなたと一緒にするなよ!


やっぱり時々、あなたのその変わり身には寂しくなるし、あなたの気持ちが見えなくなる。


こんなに後ろ髪ひかれる想いを、あなたは、したことある?




洗面所をさりげなく出たら、ユノさんの依頼人が腕組みをして待ちかまえていた。


「あ、───ヒメ。」


は?────姫?


「ああ、…このお姫様はさ、そう呼ばねーと、機嫌が悪くなんの。」


肩をすくめて冗談っぽく笑う。


「───ユノ。遅いわよ?」


「それに、…シム・チャンミンさんじゃない?」


僕よりかなり背が低いのに、なぜか見下ろされてるような、その態度。


「あ、…はじめまして。」


会話を交わすのは初めてで、ペコッとお辞儀をした。


「ストーカーの件は、大変だったわね。…ところで、…ユノに、なにか?」


こんな貫禄のある姫なんかいるか!!!って、心の中で毒づきつつ。


「………いえ。」


もう、なんの関係もない僕は、それ以上は何も言えなくて。



「ユノ。私を置き去りにするなんて、覚えておきなさい!」


ツン、と顔を背ける姿は、女王様だ。


「ふっ。…我が儘な人だな。事務所の人に気を遣ったの、分かんない?」


「あなたが、そんな事、気を遣う必要ないでしょ!」


そんなこと話しながら、僕に背を向けて去っていこうとする後ろ姿。


チラッとこちらを振り返って、──じゃあな、チャンミン!って、…なんだよっ!その爽やかな笑顔は、…。


「え、…?」


気づいたら、……

ユノさんのスーツの裾をギュッと握ってた。


「───チャン…ミン?」




─────────あ。////////////



バッ、と、離して。


カァ、///、と熱くなる頬。



「チャンミンさん?…ユノに、…なにか?」


さっきと同じセリフを更にゆっくり言われて。


恥ずかしいのと、…女々しくて情けないのと、…視線を床におとして、言葉がでない。



スッと、僕の肩に馴染んだ腕がまわって。


ぎゅう、っと抱き寄せられた。



「…ヒメ。こいつ、…俺の大切な天使ちゃんだから。」



「…だから、俺に触れるのに理由なんて、いらねぇの。───な?」


そう言って僕を見るあなたは、心底嬉しそうで。


目の前の女王様のひきつってるのが気になるけど。


────いいや。だって、ユノさんが本当に嬉しそう。



「そういや、今日は俺、急用あるからさ、直で送り届けるからな?」

って、女王様に。


え?って目を丸くしてるその人を置いてまた、僕の元へ。


「絶対、…今日、行くから。まっすぐ帰れよ?…ほら?ドンジュさんがあっちで睨んでるぞ。」


少し、照れくさそうに、片目を閉じて。


僕の背中をぽん、って押した。





fin.