~チャンミンside~
「…ユノ?…おいって!起きろよっ!」
ユノの手が、がっつり僕の腰を掴んでて、…ちょっと、抜けだせないじゃん。
「…んぁ?」
寝ぼけてさらに抱き寄せる腕を思いっきりつねった。
「…っ!!…ってぇ!!」
「いつまでも抱きついてるからだろ?離せよ。」
頭をポリポリ掻きながら気怠げに上半身を起こして。
「…おまえね。仮にも年上にその喋り方はないだろ?…なんだよ。人が気持ちよく寝てんのに。
もしかして、もう一回っておねだり?」
──ばか。って、頭をぱこっと小突いて、緩んだ腕をはねのけてベッドから降りた。
「昨日来たのは、たまたま。マジでいい子と知り合ってさ。今日からその子んちに住むから。…じゃ、ね!」
ベッドの下に脱ぎ散らかしたシャツを手に取り、サッと羽織る。
「…なに?今度は、女?…それとも、男?」
ふぁ~、って欠伸。
別に興味ないなら、聞くなよ!
「むっちゃイイ女。…もう、来ないから。元気でね。」
「…ふふ。…どーせ、すぐ戻ってくるくせに。」
余裕のその顔が気に入らないんだよ!
「今度こそ、マジ!…もう、来ないっつの。」
昨夜は昂揚した気分のままコトに及んじゃったから、それこそアチラこちらに服が脱ぎ捨ててあって。
シャツを羽織ったものの、ズボンが見つかんない。
さっさとここから出て行きたいのに!
ユノは下着一枚履いただけの姿で、ベッドにあぐらをかいて座ってる。
背は一緒くらいなのに、厚みが違う。
肩から二の腕のラインにもしっかり筋肉が付いていて、鍛えられた腹筋や太もも、…すべてが男らしい。
その上にのっかった小さな顔。
切れ長の瞳はどこまでも深く、ころころと表情を変える。
───時には、からかうように、ふざけて。
───時には、溺れそうなほど、熱く、激しく。
スッとのびたキレイな顎のライン。
女性的でさえある色気を纏った唇は、いつも口角をあげ、僕を誘う。
「チャンミ~ン。そのさ、下着にシャツ羽織っただけって、ある意味、最強だな。」
膝に頬杖ついて、ジーッと見てくるから。
「…うるせっ。見んなよ!金とるぞ!」
って、ズボンが見つからないんだよっ。
イライラと、ユノの何日も前から山になってる洗濯物を蹴っ飛ばした。
「…あ、あった。」
ソフトレザーのパンツはヨレヨレのしわしわ。
「ユノ~!ちゃんと洗濯くらいしろよ。」
「ん~?…おまえ、やってよ。…前みたいにさ。」
にっこり笑ってくるけど。
────誰がやるか!
ヨレヨレだろうが、しわくちゃだろうが、この際もう構わない。
一度自分ちに戻ってから大学いこ。
焦って履くから脚が絡まってカッコ悪いけど、とにかく早くユノからおさらばしたい。
「…じゃ、…じゃね。」
バッグをひっ掴んで。
「───あ、チャンミン!」
そのままゆっくり僕の目の前まできて。
そうっと伸びた指先が僕の頬を掠める。
ピクッと跳ねた肩に逆の手をおいて。
「───ふふ。………目やに。」
親指でくいっと、僕の目頭を拭った。
「…!!…っ、さ、さわんな!!!」
ユノの胸を思い切り拳で小突いて、…痛ってぇ、…言ってる人を背中に残し、急いで部屋をあとにした。