~チャンミンside~
────「そ、・・じゃあ、脱いで?」
今まで僕の存在をまったく無視していたその人が、読み終わったらしい新聞を戻しながら。
初めて視線を僕に向け、───そう言った。
「──────え?」
至極当然のことを言っただけ、・・・特に表情も変えず、僕を上から下まで一瞥する。
「なに?・・・違うの?」
「すみません、・・意味が分かりません。」
いかにも上質なシャツに細身のパンツ。
身体のラインを強調するような服装によって更に映える、筋肉質で完璧なスタイル。
奥二重で切れ長の瞳、通った鼻筋にスッとのびる見惚れるような顎のライン。
完璧なパーツが人形のように無表情のまま並んでいて。
僕を見て、愛想笑いすらしない冷たく固まった口元を眺めながら、一歩後ろへ後ずさった。
僕の隣では、この屋敷の使用人をまとめる長であるジヒョンさんが、特に驚いた様子も見せず冷静に説明を繰り返した。
「ユンホお坊ちゃま。先ほど申し上げましたように、この方は旦那様の先頃お亡くなりになられた古いご友人のご子息です。」
「旦那様の意向で、この屋敷から大学へ通い、卒業後は当社への就職が決まっています。」
「大変優秀な成績をあげておられ、旦那様としましては、いずれお坊ちゃまの右腕として働けるよう、今から教育をされるお考えのようですが。」
────よほど興味がないのか、・・視線を漂わせたあと、軽く欠伸までしている。
「ふーん?・・俺はまた親父が放蕩息子のスキャンダルが怖くて前もって専用の玩具を寄越したのかと思ったよ?」
「────妊娠もしないし?」
ニヤッ、と冷たく笑って、侮辱されたのと恥ずかしいのとで真っ赤になった僕の顔を覗き見る。
「お坊ちゃまっ!!!」
たしなめるジヒョンさんを気にするふうでもなく、
「────そう。じゃ、いいよ。もうさがってくれないか?」
途端に身体をひるがえして。
「お坊ちゃま!!また、こんな夜遅くからお出かけですか?旦那様も心配しておられますよ!!」
ジヒョンさんの言葉なんかまるで聞こえないみたいに、だだっ広い部屋の一面に作りつけたウォークインクローゼットからジャケットを取り出して軽く羽織る。
────不意に振りかえり、
「残念。・・・結構タイプだよ?おまえ。」
そう言って、ニヤリ笑った姿があまりにも妖艶で。
その広い背中が扉の向こうへ消えるのをいつまでも見ていた。