AI wo Motto Ⅱ(30) | えりんぎのブログ





~チャンミンside~



















「チャンミンさぁ、・・もしかして、そいつの事今でも好きで、忘れられない、とか?」






────────ユノ。




酷く傷ついた表情が、───忘れられない。








土曜日は約束通りバイトに入った。


裏口の扉を開けたら目の前にドンへさんがいて、僕を見るなり苦笑い。


僕の肩をポンと、

「チャンミンにさぁ、言うことじゃないと思うんだけど、・・あいつ、ちょっと見てらんない。」



なんて返したらいいのか、・・・


僕の顔を覗きこんで、

「ああ、・・おまえの顔も酷いね。・・ったく、おまえらしょーもねぇなぁ。」


髪をガシガシされて、逃げようとしたところを引き寄せられた耳元で、例の許嫁の子が友達を連れてきてる、と教えられた。



「・・でさ、たった今、ユノを電話で呼んだんだよね。」



────大丈夫?って聞いてくるから、大丈夫もなにも、これからこんな場面は何度もあるんだろうし。



「ドンへさん、何言ってんの?変なの。」って、笑ってごまかした。



出来ればその無邪気な高校生3人組とは関わらないようにしたかったのに、店に出た途端、許嫁さんに見つかってしまい、キャーキャーと騒ぎながら僕を手招きする。



「い、いらっしゃいませ。」



「ふふっ。今日来たら会えるかなぁ、って、友達連れて来ちゃいました。」



本当に無邪気で怖いもの知らずで、・・若いってすごい、とちょっと引き気味に、


「え、っと。ユノの許嫁なんだよね?」



そう聞いたら、プクッと頬を膨らませて。


「だってぇ、ユノさん、スッゴイ好きな人がいるからなかった事にして、とかさ、速攻で言うんだもん。」


膨れっ面しても可愛いだけのその子の話に、さらに胸が痛くなる。



イリヤ兄さんとは何でもない、って、言い訳をしたくなる。






しばらくして現れたユノは休みなのか、ざっくりとしたセーターにダメージジーンズというラフな格好で。


ドンへさんに軽く声をかけた後、女子高生の中へ何の躊躇もなく入っていった。



チラッとも僕を見ようとしないのは予想してたけど。


実際にそうなってみると空気が重く澱んだように息苦しくて、視線の端にうつるユノの笑った顔や、女子高生の子たちの楽しそうな笑い声に、早くこの場から逃れる事ばかり願っていた。



「じゃあな、ドンへ。」



来たときと同じようにドンへさんに軽く手を振った後、彼女たちの後から店を出ていくユノ。


ドンへさんが苦笑いをしつつ、チラッと僕に視線を向けたけど、ユノの視線は頑なに僕に重なる事はなかった。





「久しぶりだし、忙しかったから、・・疲れたろ?」


はぁ、と大きくため息をついた僕の隣。


ポンポンと背中を叩かれて、──後は俺ひとりでポーター出来るからさ、先に帰りな?って言われて。


悪いな、って思いつつも本当にくたくたで、ドンへさんのお言葉に甘えてしまおうと、


「ドンへさん、・・ありがと。」


女子高生には適わないけど、僕なりにかわいらしく言ってみた。


「あ~、///チャンミンって、俺には超素直なのになぁ。」


なんて言ってくるけど、・・何の事だか。



さっさと着替えて、ドンへさんに挨拶をして、───今日は、自分ちに帰ろうか?バイトとは言ったけど、イリヤ兄さんちに帰るなんて約束してないし、それにこんな時間だし。



いつもより重く感じる裏口のドアをグッと押して、スーッと通った夜風が気持ちいい。




一歩踏みだした途端、ガシッと、・・・


急に掴まれた腕にびっくりして振り向いた先には、─────ユノ。






「帰さねーよ。」