AI wo Motto Ⅱ(35) | えりんぎのブログ





~チャンミンside~



















~♪♪~♪~~♪♪


「チャンミン?」




「・・・・。」



「・・チャンミン?・・どうした?」








「────────イリヤ兄さん。」











バックエリアの隅、PCやモニターの置かれた店長用の机まで腕をひかれて、椅子に座るよう促された。


ドンへさんに何を言われたか、・・記憶も曖昧で。



────突然、修行しにイタリアの親戚を訪ねる、とか言いだして。




────ここも、クラブも、多分オーナーが代わるけど、悪いようにはしないから、って何度も言われたけど、俺も訳わからなくてさ。



困ったように眉を寄せるドンへさんの表情だけよく覚えている。



────おまえら、・・本当にどうしちゃったの?




僕こそよく分からないよ。
でもそれがユノの出した答えなんだろう。



将来の為に真剣に修行するってこと?
イタリアって?
今からシェフにでもなるつもりかよ?



ああ、でも許嫁のあの子、・・春に大学生って言ってたから、4年後を見据えた計画なわけ?



もうユノの中に僕の存在はないんだ、って、


呆気ないな、・・・忘れっぽいユノらしいや。






それから僕は一言も喋らず、仕事帰りの枯れ葉が舞う木枯らしにたまらなくなって、・・思わず電話してしまった。



「チャンミンからの電話なんてめずらしいね。・・今、家にいるけど、・・来る?」



「ん、・・行っても、迷惑じゃないですか?」



「何言ってんだよ!ちょうどひとりで飲もうかな、って思ってた。ひとりより一緒の方がいいに決まってんじゃん。」



───つまみ、作ってるから早くおいで?と優しく言われて。



近くにリカーショップがあったから色んな種類の酒を買っていった。



どんな時も温かく迎えてくれる兄さんに、少しだけ寄りかからないと、・・・立っていられない気がした。





「はい、かんぱ~いっ!!」


カチンッとビールグラスを合わせる。

 
「ちょっと久しぶり。・・電話嬉しかった。」


本当に嬉しそうにサラダやチーズを盛った皿を僕のまえに差しだすから、僕も少しだけ嬉しくなる。


兄さんの笑顔は伝染するんだね。




お互い、いい感じに酔いもまわった頃。



兄さんの手がポンポンと軽く僕の頬を撫でた。
  


「・・・チャンミン?また恋人と何かあった?」



「え?・・や、べつに、・・///。」



俯いた僕の頬に添える手、それが知らず知らずのうちに力が入り、


その手をやんわり退けようと、自分の手を重ねた瞬間。





「チャンミンの恋人、────ユノ、だっけ?」



「えっ?///」


突然のことにビクンと肩が跳ねた。



「ホームセンターで、会ったよね?あれが、・・恋人のユノ?」



びっくりして声がでない僕を、ふふ、・・と笑った兄さんがギュウ、・・抱きしめてきた。



「あ、・・あの?///兄さん?ちょっと、離して。」



その手は一向に弱まらず、もぞもぞする僕をさらに深く胸元にいざなう。



「────チャンミン。こんな兄さんでごめんな?」




「俺は、ユノ、の代わりにはなれない?」