~チャンミンside~
背中を包むユノの感触とぬくもり。
「・・ユノ、・・明日、僕・・バイト。」
肩先に唇をおとしながら、───わかってる、って、
「ならいい加減離せよっ!!・・はぁ、・・もう、何回スるつもり?」
「ん、・・ごめん、・・次で、最後?」
───ばかっ!!
振り向きざまユノのほっぺをムギュっとつまんだ。
途端、弾けたようにクシャッ、と笑って思いきり僕を抱きすくめる。
「じゃ、・・少しだけこのままで、・・
いい?」
耳元で囁かれる甘い声に、くすぐったい気分で身を捩るけど、ピクリともしない密着した身体。
「なぁ、・・イリヤ兄さんに何を言われても、とか言わなかった?」
「へ?」
「おまえ、何言われた?そいつに。」
────そいつ、とか。
ってか、そんな事言っちゃったっけ?
「おい。」
忘れてたけど、ユノのヤキモチはすごいんだった。
「あ~~、・・腰痛いっ。」
素知らぬフリしようとしたのを、ぐいっと無理やり向かい合わせにされて、
─────痛っ~~~~~っ!!
どうしよう、思いきり蹴飛ばしたい!!
「チャンミン、・・隠し事はするな。もう誤解したり、すれ違ったりすんの嫌なんだ。」
すっごい真剣に言ってくるから、力を入れた左足が躊躇してふらり、と揺れた。
「─────って、・・怒んじゃん。」
ついついボソッと口についたのを。
両頬をムニッ、と引っ張られ、
「当たりまえだろっ!!」
ハフハフと横に広がった醜い顔に、・・角度をつけて近づくユノの、それ。
────どうしようもなく、好き。
クチュ、と。
その後、───ぷっ、変な顔、って笑うから結局蹴飛ばしたけど。
痛ってぇ、///───言いながらムクッと起きあがったユノ。
「チョン・ユンホ、26歳。若い頃はかなりやんちゃして親泣かせだった、出来の良い兄2人の三男。」
「へ?」
────自己紹介、始めちゃった?
「大学卒業後、会社員になるなんて真っ平ごめんって家を出ようとしたら、カフェのビルとクラブ、このマンションと多少の株を与えられて、──一生分のすべてを今やるからおまえの力量でどうとでもしろ、と言われた。」
「オーナーってガラじゃないし、うまく纏めるのにフリーターって立場の方が動きやすかった。でも、騙そうと思ったわけじゃない。」
「え~、っと、・・ユノ?」
つられるように起きあがった僕の両肩にそっと掌をのせて。
「・・聞いて?チャンミン。ここからが大事だから。」
真剣に言うから僕も、うん、としか返せない。
「ドンへやシウォンのおかげで経営も順調。何の不満もないけど、・・チャンミンに出逢って、少しずつだけど考えはじめた事があって。」
「───食いしん坊のおまえに俺の作った料理をもっともっと食べさせたい、って。」
「は?////」
なに?それ、・・・//////
「店やる前に調理師免許は取ってるからさ、いつか本場で修行してレストランをやりたいって。」
「簡単な半調理ものや冷凍物じゃなくて、いちから作って食べさせたいって。」
「───でも、ごめん。財産的なものは事情があって権利を放棄しちゃったからさ、ほんとにいちからの出発なんだ。ある程度蓄えはあるんだけど、・・あんまり贅沢は出来ない。」
「それでも離さないけど、な。」
ニッ、と笑った、照れくさそうな告白は、────僕への誠実の証。