~ユノside~
─────バタン、
今は倉庫のように使っている部屋のドアを後ろ手に閉めた途端。
首にまわされた両腕。
自然に片手は腰、残りは後頭部を抱く俺に。
すでに深く重なった唇。
「ん、・・っあ、・・・はぁ、・・。」
言葉なんかいらなくて、
隙間から漏れる息と舌と舌が絡み合う水音にうっとりと、
───ここどこだっけ?
思考が麻痺しはじめた頃、スッと身体をひかれた。
伏せた睫毛が長い影をおとして、俯いても紅潮した頬とその息遣いは隠せないから。
「───もっと。」
顎に指をかけて強請ったら、ふるふると左右に頭が揺れてトン、と胸元に額をのっけた。
「なんでユノと喋りたいって女の子達が順番待ちしてんのさ?」
面白くなさそうに呟く。
───そうなの?まるで意識してなかった。だって俺の意識は9割がた離れた席で女子高生とよろしくやってるヤツにいっちゃってるし。
「だっておまえ、楽しそうに喋ってんじゃん。」
意地悪げに言ったら、ふっと視線をあげて。
あーあ、・・そんな顔、駄目だろ?
昨日の今日だからか、いつもの棘がなりをひそめるチャンミンを、後悔しないうちに堪能しなくては。
「わ、」
って言葉も一緒にのみこんで、半分抱きあげるようにソファーに向かって勢いよく身体を沈めた。
パチッと見開いた瞳が一瞬俺を責めるように揺れるけど、少しだけ開いた唇は、・・だって、誘ってるよな?
クチュッ、と啄んだら、
ふっ、と目尻が蕩けて、
お返しとばかりに重なるそれは、
どうしようもなく熱くて、─────。
「こういうとこで、ユノにベタベタされんの嫌だけど、・・ユノが他の人にベタベタされんのも嫌だ。」
拗ねたようにボソッと言って、ぐっと肩を押される。
「ふっ、」
いつになく素直なチャンミンが嬉しくて、つい口元がにやける。
「や、・・べつに、勝手にすれば?///」
焦ってんね?
かわいくて緩んだ頬がもう止められないのに、
「・・ユノが無駄に格好いいのが悪い。」とか。
───駄目だ、心臓に悪い。
「あ、あのさ?・・それ、帰ってからにして?///」
たまらず、お願いするように、・・既に息の荒い自分にかなりひきながら。
「は?だから、・・格好いいのは知ってるから、これ以上格好つけんなっ、て話なんだけど?」
俺のにやにやが止まんないから口調が徐々にきつくなってく。
「なに笑ってんだよ?馬鹿にされてるみたいでムカつく!」
あ~あ、本格的にへそ曲げちゃって。
でもその方がいい。
この状況でこれ以上の甘い言葉はただの毒だし。
最後に一度、────甘い匂いを胸いっぱいに吸いこんで。
「そろそろドンへが怒鳴りこんで来そう。」
ゆっくりと起こした身体、よっとチャンミンの腕をひく。
「自分で起きれる。」って、さっさと手を離されて、やっぱりご機嫌ななめ。
「じゃ、俺も言ってい?」
チラッとこちらを見て背中を向けたまま服の乱れを直してる奴に。
「───イリヤ兄さんと会うときは、俺と一緒、が条件。」
「は?///」
急にとんだ話にビックリして振り向く奴。
「・・・って事でいい?」
にっ、と笑ったら、すかさず背中を向けて、さっさと出ていってしまった。
────なぁ、その隠しようがない真っ赤な耳朶が返事ってことでいい?
べつに疑ってるわけじゃない。
ただ最大のライバルのもとに、おまえをひとりでやるほどお人好しじゃないって事。
「あ~あ、変わんないなぁ、俺も。」
自嘲気味な笑いが漏れて、酒類の段ボールが積まれた部屋の隅まで向かう。
ふと見れば、その上に500mlのペットボトルの水。
《ユノはこれ。》
挟まれた走り書きのメモが何だかおかしくて、奴の変化球にも慣れてきた自分を笑った。
─────なぁ、チャンミン。
おまえの幾重にも重なった分かりにくい感情をもっと教えて?
そして俺は、いつもど真ん中の直球で返すよ、───これからも、どんなときも。
~チャンミンside~
下へ戻ったら案の定苦笑いのドンへさんを何とかやり過ごす。
「チャンミンさん~、もう、遅いです!!」
甘えたような膨れっ面。
どうしてこの子が僕から離れないのか理解できないけど。
ユノんちと家族ぐるみのつき合い、というだけの理由で無碍には扱えなくて。
「彼女、・・・いるんですか?」
強引に隣に座らされ、──さぁ、本題、とでも言うようにぐいぐい前のめりに話してくるスンヨン。
「あ~~///、うん。大切な人がいるんだ。」
そう言っても凹むことなく、そのままの笑顔で、──じゃ、彼女と別れたら一番に連絡くださいね!!、なんて。
そのあっけらかんとした明るさが心地いいけど。
「ん──、たぶん、ないよ?ずっと。」
正直に話してる時点で、この子をわりと気に入ってる自分に気づく。
「え?結婚するんですか?まだ若いのにもう一生の人決めちゃうの?」
そんな責めるように言わなくても、・・
「あのね、・・若くても若くなくても、一生の人に出逢うのはほんの一瞬で。」
「それは例えば、どしゃ降りのなか、道端にうずくまってる時かもしれないし、ね。」
そこまで言ったら、バタンとバックエリアから入ってきたユノ。
ポッケにはペットボトルほどの膨らみ。
思わず頬が緩む僕の隣で、とんでもないことを言いだしたスンヨン。
「ねぇ、ユノさん!!」
「チャンミンさんってば、どしゃ降りの中うずくまってて運命の人と出逢ったんですって!!」
「え?///ちょっ////、わ~~~~っ///!!」
言うんじゃなかったっ///、後悔しても遅いけど。
そ、~~~っと、スンヨンの頭越し、・・向けた目線の先には。
不意にかけられた予期せぬ会話に、固まったように目を見開いて。
ボッ、と染まる頬。
────そして僕だけにむける極上の笑顔。
fin.
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昨日は運命の当落。
みなさん、いかがでしたか?
AI wo Mottoも、無事完結しました。
読んでくださった皆様ありがとうございました。
このお話はチャミペンさんの、「チャンミンかわいそう、ユノつめたいよ。」という意見や、ユノペンさんの「チャンミンもちょっとくらい自分で動きなよ!」という、それぞれのご意見が聞けて楽しかったです( ´艸`)
さて次回、本来なら中途半端に放置されているStrawberryCandleなのですが。
どうも設定が被ってしまいまして。
過去のトラウマ、とか、親との確執とか。
私が疲れちゃうので、もう少し放置決定しました^^;
夏休みに受験生の娘と高校見学へ行きまして。
学祭の準備や練習!!
きゃ~~っ(//∇//)青春♪♪←古い
・・となり、ついつい書いちゃいましたσ(^_^;
そんな高校生ほみんちゃんに初挑戦です♡