~キュヒョンside~
「おい、どういう事か説明しろよ!」
俺の後ろでギャーギャー喚いてるのは親友のチャンミナ。
「・・だからさぁ、・・学祭の応援メンバーがさぁ、・・。」
「僕、応援とか、ダンスとか、嫌だって言ったよね?」
そんなに怒んなくても、・・・。
夏休みの午前中、もうすでにギラギラと太陽は照りつけ、玉のような汗が親友の頬を伝っていた。
「しょうがないじゃん。急にアイツが生徒会の実行委員優先で応援団抜けたいって言うんだもんよ。」
「はぁ?でも、何で僕?・・しかも、一大事とかいって騙してさ。」
本当に一大事だし、・・・。
我が校の学祭は縦割りチームになっていて、応援団としてそれぞれの学年から男女5人ずつ、それに3年生から団長1人。
夏休みを利用しての学祭の準備。
3年生にしたら高校最後の大きな行事で、毎年かなり力を入れて学校全体で盛り上がるのが恒例。
─────はぁ、・・急に代役たててくれ、って言われた俺の方が怒りたいくらいだよ。
俺の背中を睨みつけながらも、取りあえず逃げずについてくる親友をチラッと見やる。
──────シム・チャンミン
ビジュアルは最高。
スラッとした長身に乗っかった小さな顔。
睫毛バサバサの大きな瞳は目力半端ないし、柔らかそうな唇につやつやのほっぺは、そんじょそこらの女子では太刀打ち出来ないだろう。
ただなぁ、・・俺に対してはこんな口きいてるけどさ、すごい人見知りで目立つことが大嫌いという超勿体ないヤツなんだよね。
「あのさぁ、俺らの団長、家が近所で昔から知ってるし、バスケ部の先輩で、・・むっちゃいい人だからさ。」
取りあえずは何としてもチャンミナに、うんと言わせねば。
《団長いい人だから作戦》で、いこう。
「・・・知ってる。」
「え?」
「団長、・・有名人じゃん。知らない人なんていないんじゃないの?しかもさ、・・怖いし。」
うつむき加減にボソボソと、途端に人見知りクンが顔をだしてきた。
「で、でもさ、見た目は派手だけど、実はすげぇ優しいから!!ほら?もうあそこにいるし。取りあえずちょっとだけでも話してみ?」
「勘弁してくれよ~。」
嫌がるチャンミナのジャージの袖を引っ張り強引に3年生のかたまりへ向かっていく。
「ユノヒョンッ!!代わりのメンバー連れてきました。」
2年生も合わせて10人くらい、サーッと波が引くようにこちらを注目しながら道があけられた。
────その中心にいた人物への。
「お?すっげイケメンくんじゃん。女子が喜ぶんじゃね?」
「キュヒョナ~!さすが仕事はやいな。もっとこっちへ来いよ?」
先輩達が口々に歓迎ムードで寄ってくるなか、どんどん尻窄まりに小さくなっていくチャンミナ。
「きゃっ~!!カッコいいじゃん!!」
「あ、私、廊下ですれ違ったことある!!1年生だったのね?ねぇねぇ、名前は?」
3年生の先輩女子まで集まりだしたからヤバい、・・完全に固まっちゃったよ?
見た目を大いに裏切るイケメンくんは、耳まで真っ赤にして自分の靴先を凝視、もちろん一言も発しないし。
げっ?どうしよ、・・このまま走って逃げられたら。
不安にかられて何とか助け舟をだそうとした、その時。
「──っせぇな。おまえら、ちょっと向こうへ行ってろ?」
低いのによく通る声、──その先には。
──────チョン・ユンホ
よくて県大会初戦のバスケ部をインターハイまで連れていった立役者。
運動神経抜群のうえに惚れ惚れするほどのイケメン。
常にリーダーシップをとり、男女関係なくモテモテのヒョン。
チャンミナの言うとおり、この学校はおろか近所の高校にもファンがいるほどの有名人だ。
そんな俺の自慢のヒョンが、これ以上ないってほどの爽やかな笑顔で、
「おまえにはちょっと無理なんじゃね?」
──────そう言った。