~ユノside~
「───ソヨン。」
今にも泣きそうな顔。
──じゃ、と逃げるように出ていったキュヒョンに、気を使ってくれたのか?用事を思いだしたと職員室へ行ってしまった先生によって、ぽっかりとつくられた2人きりの空間。
「あのさ、」
言った途端、
「ごめんなさい!」と被せるように。
「その傷、・・シウォンが私の代わりにやったんでしょ?」
スッと伸びた手が唇の端っこに触れた。
「え?あ、・・うん。」
シウォンの気持ちをソヨンは知っているのだろうか?
そんなこと思いながら答えに詰まっていたら。
「シウォンは昔から私のこと好きなの。」って。
「・・でも私は昔からユノが好きだったから。」
その間もソヨンの指が、何度も唇を掠めるように往復する。
さわさわ、と。
そのままキュッと親指が唇を割ってきて。
「ソヨン、・・痛いって。」
「ごめん。」
少し浮いた指が、今度は頬をなぞるように動きだした。
「ソヨン。」
彼女を傷つけている罪悪感からか、それを振りほどくことなんて出来なくて。
お互い何も言わないまま、ソヨンの指だけがゆっくりと俺の顔を辿っていた。
「ね、・・ドキドキする?」
「ソヨン?」
「ユノ、・・こうして触れられて、・・気持ちいい?」
なにも答えない俺に、クスッと笑って。
「私ね、こういう事にあっさりしてるのがユノだと思ってた。元カノもみんな同じこと言ってたし。」
「ヒドいな。」
自嘲気味に口元を歪めて笑う。
「・・でも、違うのね?」
「あんなユノ、・・初めて。」
頬に触れる指にピクッと力が入り、
「周りが見えないほど必死で、・・震えてたの、気づいてた?」
俺を見る瞳がゆらりと揺れる。
「ねぇ、彼といると、・・ドキドキする?」
「・・ん。」
嘘やごまかしは言いたくなかった。
「身体に触れたら気持ちいい?」
「・・どうだろ?・・触ると嫌がられるし。」
クスッと笑って、
「ちょっと、なに完全に認めてんの?」
そう言いながら今にも涙がこぼれ落ちそうで。
「ごめん、ソヨン。」
ボロボロと溢れる雫を親指で拭いとってふわりと抱きしめた。
「ふわふわといつも楽しそうに笑うのが可愛いな、って思ったのは本当。好きになれたらいい、って思ったのも本当。・・でも、ごめん。」
静まり返った部屋にズズッと鼻をすする音だけが聞こえる。
俺の胸に額をコツンと。
「もぅ、しょうがないなぁ。・・あんなユノ見せつけられたら、・・なんにも言えない。」
「彼はあなたのこと、どう思ってるの?」
ふいに聞いてきて。
どうなんだろ?
「分からない。・・俺の片思いかもな?」
おどけて言ったら、ギュウッと顔をうずめる。
「───ばかなユノ。」
小さく小さく、囁かれた言葉。
「お願いがあるの。あのね、後夜祭が終わるまでは彼女でいさせてほしい。彼女のまま一緒にダンスしてほしいの。」
ダンスって。
「フォークダンス?」
「そう。・・ね、覚えてる?中学のオリエンテーションでフォークダンス踊ったこと。」
記憶をたどってみるけど、特に思いだすこともなくて。
「ごめん。」
「ふふ、だって男子の方が人数多くて、背の順で後ろのユノは女子側にはいっちゃってね、相手が男子だったもの。」
「あの時は悲しかったなぁ。」
「・・で、ユノとフォークダンス踊るのが夢だったんだ。彼女、として。」
「──────ダメ?」と言われれば、駄目なんてもちろんいえるわけなくて。
「分かったよ。一緒に踊ろっか。」
そう言ったら、ふわりと。
つき合うまえ可愛いと思っていた、あの笑顔。
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いつもありがとうございます♪
のらりくらりしていてすみませんσ(^_^;
momokoさん《cheering11》前記事コメント欄にて!
今ね、(萌の)嵐の前の静けさ、だそうですよ~~~( ´艸`)♡♡♡