そして最後に笑って見せて(29) | えりんぎのブログ




~ユノside~














「───ソヨン。」



今にも泣きそうな顔。



──じゃ、と逃げるように出ていったキュヒョンに、気を使ってくれたのか?用事を思いだしたと職員室へ行ってしまった先生によって、ぽっかりとつくられた2人きりの空間。




「あのさ、」
言った途端、
「ごめんなさい!」と被せるように。



「その傷、・・シウォンが私の代わりにやったんでしょ?」


スッと伸びた手が唇の端っこに触れた。




「え?あ、・・うん。」


シウォンの気持ちをソヨンは知っているのだろうか?
そんなこと思いながら答えに詰まっていたら。


「シウォンは昔から私のこと好きなの。」って。



「・・でも私は昔からユノが好きだったから。」



その間もソヨンの指が、何度も唇を掠めるように往復する。




さわさわ、と。
そのままキュッと親指が唇を割ってきて。



「ソヨン、・・痛いって。」



「ごめん。」




少し浮いた指が、今度は頬をなぞるように動きだした。



「ソヨン。」



彼女を傷つけている罪悪感からか、それを振りほどくことなんて出来なくて。
お互い何も言わないまま、ソヨンの指だけがゆっくりと俺の顔を辿っていた。



「ね、・・ドキドキする?」


「ソヨン?」


「ユノ、・・こうして触れられて、・・気持ちいい?」





なにも答えない俺に、クスッと笑って。


「私ね、こういう事にあっさりしてるのがユノだと思ってた。元カノもみんな同じこと言ってたし。」


「ヒドいな。」


自嘲気味に口元を歪めて笑う。


「・・でも、違うのね?」







「あんなユノ、・・初めて。」



頬に触れる指にピクッと力が入り、



「周りが見えないほど必死で、・・震えてたの、気づいてた?」



俺を見る瞳がゆらりと揺れる。






「ねぇ、彼といると、・・ドキドキする?」


「・・ん。」

嘘やごまかしは言いたくなかった。




「身体に触れたら気持ちいい?」


「・・どうだろ?・・触ると嫌がられるし。」




クスッと笑って、
「ちょっと、なに完全に認めてんの?」
そう言いながら今にも涙がこぼれ落ちそうで。



「ごめん、ソヨン。」




ボロボロと溢れる雫を親指で拭いとってふわりと抱きしめた。
  


「ふわふわといつも楽しそうに笑うのが可愛いな、って思ったのは本当。好きになれたらいい、って思ったのも本当。・・でも、ごめん。」




静まり返った部屋にズズッと鼻をすする音だけが聞こえる。


俺の胸に額をコツンと。
「もぅ、しょうがないなぁ。・・あんなユノ見せつけられたら、・・なんにも言えない。」



「彼はあなたのこと、どう思ってるの?」


ふいに聞いてきて。
どうなんだろ?

「分からない。・・俺の片思いかもな?」

おどけて言ったら、ギュウッと顔をうずめる。




「───ばかなユノ。」


小さく小さく、囁かれた言葉。









「お願いがあるの。あのね、後夜祭が終わるまでは彼女でいさせてほしい。彼女のまま一緒にダンスしてほしいの。」


ダンスって。
「フォークダンス?」


「そう。・・ね、覚えてる?中学のオリエンテーションでフォークダンス踊ったこと。」



記憶をたどってみるけど、特に思いだすこともなくて。


「ごめん。」



「ふふ、だって男子の方が人数多くて、背の順で後ろのユノは女子側にはいっちゃってね、相手が男子だったもの。」



「あの時は悲しかったなぁ。」


「・・で、ユノとフォークダンス踊るのが夢だったんだ。彼女、として。」





「──────ダメ?」と言われれば、駄目なんてもちろんいえるわけなくて。
 
    

「分かったよ。一緒に踊ろっか。」


そう言ったら、ふわりと。
つき合うまえ可愛いと思っていた、あの笑顔。







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いつもありがとうございます♪
のらりくらりしていてすみませんσ(^_^;



momokoさん《cheering11》前記事コメント欄にて!


今ね、(萌の)嵐の前の静けさ、だそうですよ~~~( ´艸`)♡♡♡