オットと車に乗っていて

ふと前方の空をみたら

大きな月が出ていました




すごいね

綺麗だね

大きいね




二人で

そんな言葉を交わしました





結婚して

こんな日が来るとは思わなかった




こんなにも穏やかに

言葉を交わせる日が来るなんて

今も 夢のようです




わたしとオットは

大反対を受けて結婚しました




最初から わたしだけが

「失敗できない!」と力んでいて




良い嫁と妻

仕事が出来る女

そんな三足のわらじを履いたわたしは

見事なまでに 滑ってこけました




うつ病になりました




夜は眠れず  

朝は起きれず

仕事に行けなくなり

暴言を吐きまくりました




掃除も洗濯も食事の用意もできず

ただただ

息をしているだけの日々




靴下一枚すら

自力で脱げませんでした




着替えも お風呂も お食事も

オットが世話をしてくれて

まるで 介護そのものでした




オット以外のすべてが敵に見えて

オットから 離れられませんでした

オットに依存して生きました




ベランダから飛び降りそうになり

そのギリギリで 意識が引き戻される

そんな繰り返しでした




ドン底を這いずり回って

どこまでも依存して

意識がぶっとんでいた生活でした




あれから4年




「月が綺麗だね」と

言葉を交わせるようになるなんて

思ってもみませんでした




オットにとっては

最低で最悪な生活だっただろうに

そのことを

オットに言われたことは一度もなく




責められたことも

怒られたことも

慰められたことも

見放されたことも

一度もなく




ただ ただ

いつも どんなときも

「大丈夫だから」と言ってくれました




昔のわたしは

根拠のない「大丈夫」が大嫌いで

最初は 怒り狂っていたけれど




何度も何度も繰り返される

オットの「大丈夫だから」という言葉を

いつのまにか聞くようになって




いつしか わたしは

うつ病を寛解させたのです




今 思えば

両家による結婚の反対も

わたしのうつ病も

わたしの先天性の聴覚障害も

オットとの6歳という歳の差も

どれもこれもが




「それでもわたしは愛される」

ということを証明するための

壮大なコントだったのだと思います




これでもか!これでもか!と

オットに無理難題を押し付けて

わたしが 自分勝手に

オットの愛を確認していたんです




自分が愛されていることが信じられず

自分が幸せになれることが信じられず

愛されて幸せになる勇気が持てないから




愛されて幸せになることを望みながらも

作り上げては壊すことで

「ほらやっぱり!」

「わたしは幸せになれないんだ!」 と

安心してきたんですね




わたしが自分で作り上げたコントは

「今 わたしは幸せなのだ」と

自分を認めることで

ようやく完結したのです




そのことに気づいた 今

もうもう

オットに 頭が上がらないのであります





かつての時代

夏目漱石が

I  LOVE  YOU  の和訳として使った台詞




「月が 綺麗ですね」




これからも

オットと一緒に 月を眺めて




「綺麗だね」 って

ともに 言葉を交わし続けて




「わたしたちは

  今 幸せの中にいるのだ」 と感じて

わたしは 生きていきます





愛と感謝をこめて






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