モンゴルに来て二日目の朝。
前日の謎のパーティーのおかげでぐっすり眠れた私たちは、8時に起床した。
顔を洗ってご飯得を食べる為に、母屋に行くと、
昨日私たちより遅くまで騒いでいたはずの人たちがすでに起床し、
朝食を済ませていた。
モンゴル人、元気過ぎ。私たちが食堂のテーブルに座ると、子供たちが朝ご飯を運んできてくれた。
朝食は、
小さいケーキのようなものと、パン、ハムとキュウリ(日本のより大きい)、
あと、肉のペースト?みたいなものと、ジャムに後は、紅茶かコーヒー。
まあ、どれもめちゃおいしい!というものでは無かった。
私は肉のペーストが全く駄目だった。肉臭くて、パサパサしていた。
友人はまあ食べられなくもない、といってパンに付けて食べていた。
私たちがご飯を食べているとBOAちゃんがやってきて、
「よく眠れた?」
「もっと食べなさいよ」
「なんでこれ(肉のペースト)食べないの?オイシンダヨ」などと話しかけてきたので、3人で話しながらご飯を食べた。
友人「今日遊牧民のゲルにも行く予定になってるね」私「そういえば、今日お祭りなんでしょ~ヤギの解体何時からなんやろ~」
と私たちがウキウキしていると、
BOA「もうすぐヤギの解体はじまるよ、さっきヤギ届いたから。もう裏で準備してるよ。」えっ!!!!もう!?
早い!!!
お祭りと聞いていた私たちは、
マグロの解体ショー並みに、
何かの台の上なんかで、大将的な人が上半身裸になって、
“ヤギ解体ショー”とかいう看板がモンゴル語でかかってて、
観客が手に汗握りながら解体を見学する・・・・・・・
みたいなのを想像していた。
慌てて着替えて、化粧をして母屋の裏に向かうと、
パパさんがヤギの解体の準備をしていた。
解体されるヤギ2匹に見学者二人(私と友人)。
あれ?お祭り??
解体よりか、食べる時にお祭り騒ぎになるのかな?
解体は私たちの為に特別に見せてくれるってことか。
と、気持ちを納得させ、解体を見学することにした。
生々しくてグロい写真が多いので、そういった写真は割愛して、
文章でお伝えしようと思う。まず、ヤギは嫌々ながらに運ばれ、(めちゃ笑顔のこの男子、昨日の夜にはいなかったのに、いつのまにか現れていた。いつの間に!?)
金づちのようなモノで、ヤギのオデコの部分を、
カチーーーーン!!!!!と叩き(イタタタ)、気絶させる。気絶させた隙に、ヤギの胸の辺りに5cmくらいの切り込みをナイフで入れ、
その切り込みに腕を、
ズボズボッ!!!!
と突っ込んで心臓を止める。
(この時、突っ込んだ後、どのようにして心臓を止めているのか分からなかったが、
最近、椎名誠のモンゴルエッセイを読んだ時に、ヤギの解体のことが書いてあり、
心臓は、腕を突っ込んで静脈か静脈かを切るとか書いてあった)草の海―モンゴル奥地への旅 (集英社文庫)/椎名 誠

¥740
Amazon.co.jp
そして、絶命したヤギをひっくり返して、切り込みをいれた所から皮をはいで解体していく。
私たちは最初、爆笑男子が解体している様子を見ていたのだが、
皮がはがしにくそうで結構時間がかかっていた。
すると、BOAちゃんが、
「彼へたくそっ。こっちのかれすごく上手だよ」と言ったので、もう一体のヤギの解体に目をやると、
また昨日の夜居なかった知らない男性が登場していた!!
誰!?なるほど、その彼の作業はスルスルと皮を剥いでいって、とてもスムーズ。
爆笑男子よりも、後から作業を始めたのに、あっという間に先に進んでしまった。
(きれいに皮を剥ぐ作業を見て、村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」を思い出した。
確か、老人が戦争記憶を回想するところで、モンゴル人の皮はぎ名人が、人間の皮を剥いで拷問をする話があったのだ。あれは、読んでいてイ~ッ!!!ってなったなあ。)
ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)/村上 春樹

¥620
Amazon.co.jp
その彼は、どうやら遊牧民らしく、赤い顔をして、乗馬ブーツのようなものを履いていた。
それよりなにより、彼の写真をよく見て頂きたい、
彼はなぜか韓国語の刺繍がしてあるジャージを着ていたのだが、
(おそらく韓国人観光客がプレゼントしたのか何かだろう)
その背中に、油性サインペンで、ROONEY!!!!!(ルーニー※イングランドのサッカー選手の名前)

と書かれていた。
サッカーが好きなのか、
それとも、韓国人観光客の悪戯か、その真実は最後まで分からずじまいだった。
とりあえず、彼のことは今後、ルーニーと書かせてもらう。
皮を剥いだ後は、身と骨にわけ、内蔵を取り出す。皮を剥いで、解体するのは男性の仕事だが、
取り出した内蔵を洗ってきれいにするのは、女性の仕事のようで、
ツーリストキャンプのおばあちゃんと、娘ちゃん(小学生くらい)が行っていた。
この作業を見ていて驚いたのが、
びっくりするくらい血が出ないことだった。
内蔵を洗う時に血が出るらしいのだが、
その血も後で料理で使う為、ちゃんと取っておく。

最初は恐い~とか言いながら見始めてた私たちだが、
羊があっという間に気絶させられて、
サラサラ~っとほとんど血も出ずに作業するので、
平気で見ることができた。
すご~!!といいながら、マジマジと見て、写真まで撮ったものだから、
(写真家を目指している友人に至っては、一眼レフカメラでガシガシ写真を撮っていた)
BOAちゃんに、
「やだ、何写真とってんの。モンゴルじゃ、あんま女の子がヤギの解体してるとこ見たらいけないんダヨ」
と怒られてしまった。
BOAちゃんにおこられたことはさておき、
私は、昨日の夜までは、ヤギの解体なんてそんな原始的なことまだやってるんだ、
なんか野性的だな、と少し後ろ向きの考えを持っていた。
しかし、実際のその作業はとても自然で、
モンゴルの人たちが決して、イベント的な事で解体をしているだけではなくて、
彼らの祖先たち(きっとチンギスハーンもフビライハーンも)がずっと生きるための生活の術として行ってきたことを当たり前に行っているだけなのだな、と感じた。
そして、肉だけでなく、皮やその血までをも一滴も余す事無く食する事で、
モンゴル人たちの血や骨と変わって行く事、
その行為は、共に生きている動物たちに対する恩恵が込められいると思った。
ファーストフードやコンビニが乱立し、飽食社会の日本を思い、
ヤギの解体に対して後ろ向きの考えを持っていた自分を少し恥じた。なんて、真面目な事を考えているうちに、解体ショーが終わり、
満足して、ゲルに戻っていると、なんと、母屋の前で、
パパさんが、ガズバーナーでヤギの丸焼きを作っていた!!!!!私たちが解体を見ている間に、バーナーであぶられたヤギは既に
真っ黒焦げになっていた。
(こちらの写真は割愛させて頂きます。)
ぎゃ~真っ黒!これ食べれるの?
どうやって食べるの!?と疑問いっぱいの私たちに、パパさんがモンゴル語で何か言った。
「この料理?が一番おいしいんだよ」
と言っているとBOAちゃんが教えてくれた。
どうやら本日のお祭り?の為に作っている料理はモンゴルの人たちにとって大変なごちそうのようだ。
そのごちそうができる間に私たちは、
先ほどのルーニーの実家のゲルまで遊びに行く事となった。
そういえば、中学校の時の国語の教科書に、
ドイツに住む小学生の男の子が、
学校の行事で豚の解体を見に行って、憧れだったクラスメイト、
マドンナBが豚の解体に動揺せず、
解体した豚をすすんで触った、
みたいな話があったなあ、ヤギの解体の時に思い出した。
教科書朗読させられたなあ、
「マドンナB役が石田で、僕役が松本!」みたいな感じで配役分けして読まされた・・・。
懐かしい。
モンゴルに来てから目に入った映像が、
色んな記憶(主に物語の)を呼び起こす。
マドンナB、覚えている方はいるかしら。
つづく