🔵東洋思想◇孫子の兵法13 メモ


「用間篇」

用間の「間」とは間者(スパイ)。つまり、情報活動。


戦争には莫大な費用と、膨大な人数の兵士が必要。戦いが長引けば、その費用も人の数も甚大。たとえ戦争に勝ったとしても、その損失は国家を傾ける。

そして最後の勝敗は1日にして決まる。


この戦争の遂行に際して、事前調査は怠れない。情報収集においても敵に先んじること。

神や経験や数字に頼るのではなく、人を使って生きた情報を集め、分析する。


「而(しか)るに爵禄百金愛(おし)みて敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり」(
金銭を惜しみ敵情を視察分析しない者は不仁の至り)


間者の種類は五種類。

間者を敵に知られないように使いこなすことは、君主たる者の「宝」とすべき奥義。


五種類
1.
郷間敵国の住民をとり込んで情報収集
2.
内間敵国の役人をとり込んで情報収集
3.
反間敵の間者をとり込んで、こちらの間者とする(二重スパイ)
4.
死間敵国に潜入してニセ情報を流す
5.
生間敵国から情報収集して報告する

人選は重要。
「間より親しきはなく、賞は間より厚きはなく、事は間より密なるはなし」(最も信頼のおける人物に、最も高い報酬を与え、最も秘密にしておかなければないない)


「聖智にあらざれば間を用うること能わず。仁義にあらざれば間を使う事能わず。微妙にあらざれば間の実を得ること能わず」(人格者であり知恵のある者でなければ間者は使いこなせない。人を慈しむ心を持つ者でないと間者は使いこなせない。

きめ細かく、どんな些細な事柄も情報網から漏らしてしまっては、実際の功績は得られない)

もし、その間者が情報を外に漏らしたならば、間者もその情報を聞いた者も殺さなければならない。


間者を使った具体的な方法

いざ、戦いが始まろうとする時、まずは、敵の指揮官や側近・門番・従者などの名前を入手し、間者を送り込んで、彼らの動静を探らせる。

もし、敵の患者が潜入している事がわかったら、これを手厚くもてなして買収し味方にとり込み、「反間」として、敵国に潜入させる。


この「反間」には、敵国の者をとり込む役目を荷ってもらう。
敵の領民をとり込んで「郷間」とし、敵の役人をとり込んで「内間」とする。
そうする事で、敵の動静を知る事ができる。

それから「死間」を送り込んで、ニセの情報を流し、「生間」を送り込んで、更なる情報を入手。


最も重要なのは「反間」。
だから「反間」には最も良い待遇を与える。


「昔、殷の興(お)こるや、伊撃(いし)、夏に在り。周の興こるや、呂牙(りょが)、殷に在り。故にただ明君賢将のみよく上智を以って間となす者にして、必ず大功をなす」
(昔、夏の伊尹(いいん)をとり込んで、夏を倒して殷は起こった。そして、今度は殷の呂尚(りょしょう)ととり込んで、殷を倒して周は起こった。このようにすぐれた君主はすぐれた間者を用いて成功を収めている)


「これ兵の要(かなめ)にして、三軍の恃(たの)もて動く所なり」(情報戦線こそ戦のかなめであり、全軍はこれによって動くのだ)

この最終章「用間篇」が、孫子の中で、最も重要。


情報には当然嘘も含まれる。情報の活かし方は本当に難しく、従って「事前情報は不要」という考えもある。

しかし、戦いは競技ではない。両者共通のルールがあるわけではない。敵を知り己を知らなければ、意表を突かれ、裏をかかれかねない。


戦争は、自国滅亡の危機ともなり、従って絶対に負けてはいけないのだ。君主の国民に対する最も深い仁義は、自国を守り平和と繁栄を築き上げていくことだ。その「仁義」は、「戦争に負けない。戦争に勝つ」という「功利」によって貫徹される。

だから、戦いにおいては、「仁義」よりも「功利」なのだ。


より深い仁義のために、勝利という功利を追求することは必須となる。

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