better than better 38 | better than better

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彼は、私の死んだママのことが忘れられない。
一方通行の片思いたち


素人小説です

 香篠君は袋からおにぎりを取り出した。ツナマヨ。無造作に、けれど綺麗に海苔のビニールを剥がす。
「今日は、購買じゃないんだね」
遠慮がちに話しかけると、香篠君はちょっと気まずそうに笑った。
「購買で買ってたら、るみのこと捕まえられないかもしれないでしょ。だから、朝コンビニ寄って来た」
「…別に、逃げたりしないのに」
「うん、でもちょっと怖かったから」
そう言って香篠君は視線をあげた。
「昨日、ごめんね?なんか焦ったっていうか、ちょっといらいらしてたっていうか」
がぶりとおにぎりを齧る。
「どうしたってるみより年上にはなれないし、デートはできないしで、うん、焦っちゃった。ごめん」
横目でちらりと窺われて、恥ずかしさできゅっと口を引き結んだ。
「こっちこそ、ごめん。誕生日とか、…旅行のこと、とか」
香篠君は鼻の頭を触りながら笑う。
「あー、旅行もね、焦ってあんなこと言って、ごめん。まだ早いよな」
そんなことない、とは言えなくて俯いた。唐突に昨日のキスを思い出す。その先は無理だ、と思ってしまう。
「学園祭終わったら、どこかデート行こう。映画でもいいよ。でも、いっぱいデートしたい」
優しく笑う彼にようやく頷く。
「あー、良かった仲直りできて。朝からずっと緊張してたんだ」
彼はにっこりと笑って今度はコッペパンを取り出した。ジャムとマーガリンの両方が挟まっているもの。
「お昼、それだけ?」
「うん。帰りまでに腹減っちゃうかな。まあ、仕方ないけど」
パンに齧り付く彼に弁当を差し出す。
「おかず、食べない?それだけじゃ、バランス悪いし」
香篠君はじっとそれを見つめて感動したように呟く。
「るみの手料理」
「違う、おばあちゃんの」
大げさに肩を落としてみせて、けれど、ありがとうと言って彼は卵焼きをつまんだ。
「美味しい。おばあちゃんに伝えといて」
「喜ぶよ、きっと。他にも食べたら?」
うーん、と唸って彼は生意気そうに笑った。
「今度、るみが作ったの食べたい」
「無理!」
思わずそう言ってしまって、一瞬で反省する。こういうところが良くないのは、自分でもよく分かっているのに。




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