better than better 47 | better than better

better than better

彼は、私の死んだママのことが忘れられない。
一方通行の片思いたち


素人小説です

 年越しの準備も終わって手持ち無沙汰だったので、コンビニへ雑誌を買いに家を出た。

 大晦日の町は静かで、どこか違うところに来てしまったようだ。いつものコンビニに入り、見慣れた顔の店員がいるのを見つけて、ほっとした気持ちになる。

 なるべく分厚いファッション雑誌を手に取ってレジに並ぶ。レジの横にはポチ袋が並べられていた。

 店を出てマフラーに顔をうずめる。寒い。雪こそ降らなかったけれど、もしかしたら今夜は降るかもしれない。明日の元旦も、更に言うなら三が日は特に出かける予定もないけれど。遠影家は年末年始に尋ねる場所も、尋ねてくる人もいない。

 鍵を開けて玄関を開ける。と、そこに立っていた人を見て、思わず小さく声を上げた。

「お、おかえり」

なんでもない風に言った千歳に、反射的にただいま、と答える。

「なんでいるの。帰省は…あ」

言いかけたところで、今年の初めごろに千歳の祖父が亡くなったことを思い出した。毎年真野家が帰省していた田舎は、もう無い。

「ん、まあ今年から集まりも無くなったから。親父とお袋が二人で温泉行った」

早く上がりなよ、とどちらの家なのか分からない台詞を言われて、私は慌ててブーツを脱ぐ。

「春海、帰ってきたなら夕飯の支度手伝ってちょうだい」

リビングに入ると、台所と忙しなく行き来する祖母に声をかけられる。返事をして彼女の横に立った。

「そのもずく、小皿に分けてちょうだい」

「分かった」

紅白が始まるまでに夕飯が終わっていないと、祖父が不機嫌になるのだ。4つ出された小皿を見て、千歳が今日うちで夕飯を食べていくのだと確信する。

「なんで千歳うちにいるの」

「鈴子さんと正利さん旅行に行っちゃって一人だって言うから。一人ぼっちで年越しなんて可哀想でしょ」

「なんで一緒に行かなかったのかな」

祖母は魚をグリルから取り出しながら答えた。

「千歳君にも色々あるんでしょ。親に気を使ったのかもしれないしね」

「ふうん」

「ほら、毎年正利さんの実家で鈴子さんは苦労してたみたいだから。夫婦水入らずにしてあげたかったんじゃないの」

「そうなんだ」

「そうよ。春海には言わないけど、結構鈴子さん苦労してるんだから」

私は鈴子さんの笑顔を思い出す。千歳のお母さん、以外のポジションを想像できない人。


次話




ランキング参加しています。よろしければクリックお願いします↓


にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村