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better than better

彼は、私の死んだママのことが忘れられない。
一方通行の片思いたち


素人小説です

「じゃあ、ちゃんと炬燵の電源切って寝てね。おやすみなさい。千歳君はまた明日」

「今日はありがとうございました。おやすみなさい」

祖母が二階へと上がっていく足音を聞く。祖父もとっくに寝室に行っていた。二人とも楽しみにしているくせに、毎年最後まで紅白を見届けることがない。もうトリのSMAPなのだから、最後まで見てしまえばいいのに。

「千歳は帰らないの」

「冷たいな。年越したら帰るよ」

そう言う千歳の横顔を眺める。そうか、と思う。家族と過ごさない年越しは、この人は初めてなのだ。

「鈴子さんたち楽しんでいるかな」

「そうであってほしいね、どうせなら」

手元に置いた携帯が震える。新着メールを開くと香篠君だった。

『年越すときに、電話してもいい?』

千歳をちらりと見て、けれど関係ないじゃないかと開き直って返信を打つ。

『いいよ。繋がればね』

多分電波が混んで繋がらないだろうと思ったのでそう打ったが、しばらく考えて打ち直す。

『いいよ。繋がるといいね』

『めちゃくちゃ念込めてボタン押す』

すぐに返事が返ってきてほほ笑んだ。こういう言い方にして良かったのだ、と安堵する。

「白が勝った」

千歳の声でテレビに視線を戻すと、みのもんたが白組の司会に優勝旗を渡して、蛍の光が流れていた。

「今年は赤だと思ったな」

どうでもいいことを言うと、倖田來未の衣装が凄かったしな、と返される。

「えろオヤジ」

「オヤジって言うなよ」

そのままゆく年くる年を流したまま二人で黙る。0時までにはまだ少しあるのに、香篠君からの電話を気にして携帯を指先で触る。

「春海は東京の大学行くつもりないのか」

急に言われて驚いて携帯から手を離す。

「え?」


次話




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