ラストクリスマス、take 2! 1 | better than better

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彼は、私の死んだママのことが忘れられない。
一方通行の片思いたち


素人小説です

 1224日。街はイルミネーションで彩られ、道行く人の99%くらいはみんな幸せそう。不景気な辛気臭い顔をした私みたいなのは、残りの1%。

 ウィンドウショッピングをしているふりをしながらため息をついた。去年のクリスマスは学生の頃から付き合っていた彼氏と別れるという悲惨なもので、今年もその記憶を上書きできそうにはない。

 俊基と別れたのは、全面的に私が悪かったのだと今なら素直に認められる。クリスマスに仕事で出張だという彼に腹を立てて、腹いせに当時言い寄ってきていた別の男とデートをして、無理して出張を切り上げてきた俊基と鉢合わせという安いドラマのような展開。謝ればよかったのに、寂しい思いをさせるからいけないのだと私も逆切れ。ほんと、馬鹿な女。

 さっさと帰ろう。予想外に仕事が終わらなくて疲れてしまったけれど、これでもう帰ったら寝てしまう口実ができた。もう一度ため息をついてディスプレイから目を離そうとすると、目の端で何かが動いた。と同時に、ささやかな声が聞こえる。

「一年前に、戻りたい?」

視線を戻すと、さっきまで無機質にほほ笑んでいた天使の置物がにやにやと笑っていた。

「ちょっと、え?」

思わず周りを見回すけれど、幸せそうな人たちは誰一人私に目をやってなどいない。

「あんた、後悔してるんでしょ?こんな幸せな街でたった一人で不幸な顔しちゃってさ。一年前に戻ってやり直したいとは思わない?」

まるで天使には似つかわしくないあくどい笑みを浮かべながら、その置物は私に問いかけてくる。

「そりゃ、やり直したいわよ」

言ってしまった後で慌てて付け加える。

「ていうか、あんたなんなのよ。いきなりそんなこと言うなんて」

天使はその瞳をきらりとさせて高らかに言った。

「クリスマスの奇跡、てとこかな」

 

 気が付くと私は大きなツリーの前にいた。忘れもしない。一年前、浮気現場を俊基に見られた場所。

 自分が着ているものを見て再びぎょっとする。このコートは今シーズンが始まったころに大きな落とせない染みをつけてしまって、泣く泣く処分したものだった。そして去年のクリスマスもこれを着ていた筈…。裾につけた染みは、見当たらない。

「リカさん、お待たせ!」

明るい声をかけられ、反射的に視線をあげる。まるで犬が尻尾を振っているような表情を浮かべてそこに立っていたのは、会社の後輩で、去年クリスマスデートなんてしてしまった男だ。

「音無くん・・・」

「リカさんとクリスマスに会えるなんて、ちょー嬉しい」

照れたように言う彼の表情を、丁度一年前にも見たことを思い出す。本当に私は一年前のあの日に戻ってきてしまったのだろうか。

「行こ。俺、店予約しといたんで」

手をとられそうになって慌てて右手をひっこめる。

どうせ一年前に戻してくれるなら、もっと前、音無くんの誘いに乗る前とか、家を出る前とか、せめてあと5分前に戻してくれればいいのに!



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