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彼は、私の死んだママのことが忘れられない。
一方通行の片思いたち


素人小説です

 「そうね、主人公が舞台にいる間、他の人物の衣装の色味も無くしてしまうというのは面白いアイディアかもしれない」
瞳と演出の唐田君に企画書を提出すると、瞳は満足げに腕を組んだ。
「彼女がいない場面では、同じデザインで色を付けた衣装を使おうと思うんだけど」
「でもそれ、彼女が舞台からはけた瞬間に色が着かないと面白くないよな」
「アイドルの早着替え、みたいなの参考にできないかな?」
「でもこれ、何度も何度も入れ替えるし」
3人でしばらく黙り込んでしまう。と、瞳が突然くすくすと笑い始めた。
「なんだよ、気持ち悪いな」
唐田君が少し彼女から距離をとるような仕草をしながら文句を言う。
「だって、楽しくて」
瞳は心底楽しいというような笑みを浮かべた。
「楽しいのよ。こうして悩むことすら」
唐田君は意味が分からないというように肩を竦めた。
「まあ、いいや。遠影はその辺班員ともうちょっと詰めておいてよ。色を付けたり消したりする度に役者を袖に引っ込ませるのは無理だから」
分かったと頷くと、唐田君はさらに続けた。
「あと、香篠はしばらく借りていいよなな?あいつがいた方が、解釈とかスムーズに進むんだ」
私は黙って頷いた。未だに連絡は、取っていない。
「じゃあ唐田から連絡しておきなさいよ」
瞳が横から助け舟を出す。鈍い性質なのだろうか。唐田君は特に疑う様子もなく、オッケーと言うと部室を出て行った。
 瞳を見ると、まだ楽しそうに企画書を眺めている。
「本当に楽しそうね」
少しからかうように言うと、瞳はほほ笑んだ。
「だってこんなに好きなことできるの、最後よ」
「え?」
「最後」


次話


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