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彼は、私の死んだママのことが忘れられない。
一方通行の片思いたち


素人小説です

 家に帰ると、丁度我が家の門から出てくる千歳と会った。
「おかえり」
「ただいま。うち、来てたの?」
千歳は頷いた。
「就職の報告しようと思って。でもすぐ寿子さんに追い出された」
「え?」
千歳はいたずらっ子みたいにくすくすと笑った。癖のある髪を、夕日が透かす。
「そんなびっくりした顔するなよ。冗談だって」
どうしてそんなつまらない冗談を言うのかと軽く睨みつける。
「でもまあ、あんまり長く居て欲しくないみたいだったけど」
「ふうん」
千歳が東京に行くからだろうな、と思った。私の前でその話をしてほしくなかったのだろう。祖母はあれ以来ずっと慎重すぎるほどに東京の話題を避けている。そんな頑なな態度を、千歳も感じ取ったに違いない。
「ねえ、千歳」
私は衝動的に口を開いた。
「今日、夕飯おごって」
「はあ?」
千歳はぽかんと口を開けた。
「いきなり何言ってんの?」
「どっか連れてって」
いいでしょ?とほぼ決定事項のような口調で告げると、千歳は仕方ないなと言うようにため息をついた。
「車取ってくる」
そう言ってガレージに入っていった。私は家には入らずに、その場で電話を掛ける。千歳と一緒だということは伏せて夕飯は外で食べてくると告げると、祖母は何も疑う様子もなく、気をつけてねと言って電話を切った。

 「何食いたい?」
ハンドルを握る千歳に答える。
「高級フレンチ」
「馬鹿」
ぽつぽつとつき始めた対向車のライトが千歳の顔を照らしては流れていく。
「ファミレスでいいだろ?」
前を向いたまま喋る千歳の横顔を、やっぱり私も前を向いたまま横目で盗み見る。
「けち。社会人になるくせに」
「まだ学生だよ。最近バイトもあんまりできなかったから金欠なんだって」
ぶつぶつ言う私を無視して、車は大通り沿いのファミレスの駐車場に進入する。
 危なっかしくバックで駐車した千歳をからかいながら車を降りる。店内に入ると丁度親子連れが出て行ったところで、すぐに4人掛けのテーブルに案内された。
 それぞれハンバーグとドリアを頼みメニューを机の端に片づけていると、千歳がどっかりと背もたれにもたれながら口を開いた。
「で?何か話したいことがあったんじゃないの?」


次話


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