モテない野郎たち連合(3) | 千切れ雲

千切れ雲

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さて作戦当日、全く予定にはない飲み会をあったことにした。




やや早い時刻に待ち合わせをし、まんまとE原を外出させた。



別動隊が家主のいなくなった部屋に偽造した合鍵で侵入、室内の掃除を行う。





干したままの洗濯物も取り込んでキレイに畳むのだが、ここで一手間かけ、恐らくはSちゃんが畳んだのであろう洗濯物とは違う畳み方にする。






台所のなどもキレイにして終了、別動隊も飲み会に合流した。







ちなみにE原の住まいは学校が借り上げて学生寮としているアパートなので、敵陣に前線基地があるようなもんで、ここに住む他のヤツも今回のメンバーに入っている(重要)。



この別動隊に入っている私が合流したとき、すでにE原はデキ上がっていた。



それもそのはずで、確かに私はE原を酔わせろという指令を出してはおいていたが、飲ませているヤツらが悪かったかも知れない。





たいして酒に強いヤツではないものの、そんな短時間でデキ上がるとも思えず、○薬でも混ぜて飲ませた(※古い手ですが効き目ありません。念のため)かと思ったら



「目○ぃ?そんな甘いもん使わねぇよ。

パ(以下は明かせません(笑))を混ぜたんだよ」



と、この当時の合コンなどで狙った女のコを持ち帰るのに流行ったブツを使ったようだ。






何だかんだとダラダラ飲ませ、22時を過ぎた辺りで行動開始。





これに参加した天誅隊は野郎5人の女の子3人で、まずは野郎のメンバーと女子メンバーのキヨミちゃん(仮名)とが、タクシーでE原をアパートに送る。



残るメンバーは私が運転するワンボックス車に乗って、タクシーの後を追う。








”お前は飲んでいなかったのか?”という疑問もあるだろうが、このくらいの時刻ならまだ検問もやってなかったし、まあ時代がおおらかだったということで(笑)









ちなみにこのキヨミちゃん、見た目はスレンダーでなかなかええチチをしている、清楚な正統派お嬢様みたいな顔立ち。


だが実は八百屋の娘でがらっぱちな上にお節介焼きなので、見方によって姉御肌とも尽くすタイプともとれる。

めちゃくちゃノリがよくてイタズラ好きで何よりも身体を張って笑いを取りに行くタイプなので、お嬢様どころか若手女芸人か長屋のおかみさんみたいな女の子である。







そんなキヨミちゃん、E原とは面識はあるけどほとんど接点がないのだが戦力になると踏み、計画を話したところ



「じゃあちょっと肌が出てる服の方がイイよね(笑)」(本当に言った)




などと言い出し、頼んでもいないのに服を新調して参加してくれた。









縦列で走ることしばし、E原のアパートまであと1キロくらい手前で、タクシーから野郎メンバーが降車し、すぐ後ろにいる私の車に乗り込んでくる。




「ちゃんとE原に声かけたろうな?」

「バッチリ。ぐにゃぐにゃな返事してたよ」

これでE原は泥酔しながらも、途中で野郎は降りてしまってキヨミちゃんに介抱されながら帰宅という断片的な記憶が残るだろう。





ほどなくE原のアパートに到着。



タクシーの後ろにピタリと着けていた私の車から、メンバー達が素早く降車して、E原を部屋へと運んでいく。






部屋に入っても終わりではない。





計画ではE原をスッ裸にしてベットに転がしておくとしたのだが、これに待ったをかけたのがキヨミちゃん。




「もう少し断片的でキョーレツな記憶を植え付けよう(本当に言った)」





と言い出し、自分からE原に抱き付いたかと思ったら、そのままベットに横たわって、モソモソと身体を擦り付けるようにモソモソとしている。




しかも仕掛けるヤツ特有の、かなり邪悪な笑みを浮かべながらである。





E原は何か幸せそうな表情でキヨミちゃんに抱き付いたりしている。




数分の後、E原を引き剥がして起き上がったキヨミちゃん、私に車のカギを貸せと言うので私は素直にカギを渡した。



計画ではイカのヌメリとフレンチドレッシングを混ぜた”疑似使用済みティッシュ&ゴム”を投入するだけだった。



だがキヨミちゃんは、受け取ったカギを自分の内ももにあてがうと、履いていたパンストに引っ掻けて、見事に伝線させた。






それも両脚とも、である。






さらに向こうをむいたと思ったらスカートの裾から手を突っ込み、股間方向に破いている。






その破れたパンストを、私を含めて数人の野郎がいる前で白いパンツを見せながら脱ぐと、丸めてベッド脇にあるゴミ箱へ投入。





イヤリングを片方落としておくなんてメじゃない破壊力を持った”兵器”を使ってきた…。






……ひょっとした我々はモノスゴい戦士を連れてきてしまったのではないだろうか…?







恐れおののいている場合ではない、他にも仕掛ける小道具がある。

まずは

・トイレットペーパーを三角に折る。

・洗面所にちょっこっと使ったように見せかけたクレンジングフォームと髪止めのカラーゴムを置く。

・風呂場の床や壁をを濡らし、バスタオルを湿った状態にしておく。

・洗面所のコップに今まで刺さっていたSちゃんの物と思われるピンク色の歯ブラシをゴミ箱に捨て、新しく赤い柄の歯ブラシを刺しておく。

・同じ建物に住んでいるメンバーが作った目玉焼き&ウィンナーとサラダを冷蔵庫にしまい、女子メンバーが飛びっきりカワイイ字で”チンして食べてね”というメモ書きをテーブルの上に置く。







ここまでやって帰るヤツは帰り、別室に泊まれるヤツはそちらへ移動、私の車に泊まるヤツは、そんなに飲めなかったこともあって、近所にある中華料理屋(ラーメン屋)に繰り出した。





ナニゆえにこのまま放置しないのかと言えば、E原とSちゃんを別れさせるのが目的ではなく、やっかみ9割のノロケるんじゃねぇ、という嗜めである。





あくまでイタズラであるが故、明朝9時にSちゃんが来る(事前に聞き出しておいた)頃合いでドッキリカメラよろしく、ネタばらしをしないといけない。




そのタイミングを見計らうため、E原の部屋には電池をデカくしたFMワイヤレスマイクを仕掛けておいた。











明けて翌朝8時。


夜中にトイレにでも起きて状況を見られていてはと、偵察に行く。



室内にあっては幸いなことに何の変化もない。










E原は夜中に暑かったのだろう、布団をはだけさせ、男である私にしてみれば見たくもないモノをデロリとさせて大の字に寝ている。









車に戻るとメンバーが三々五々集まってきたので、寮の駐車スペースから50mほど離れた路上へと移動させ、Sちゃんがやってくるのを待つ。








9時少し前、トートバッグに腕を通したSちゃんがやってきた。








ここでカーステレオをFMラジオに切り替え、マイクの電波を拾う。








エンジンも切ってあり、走らせていないので問題はないが、9人乗りのワンボックス車に12人が乗り込み、ラジオからの電波に傾注する。






呼び鈴の音が数回響いた後、ガチャガチャとドアをいじる音が聞こえる。

ドアが開いた音に続き”カズ君(E原)、いるのぉ~?”というSちゃんの声と足音が聞こえたと思ったらいきなり無音。

というか、マイクは音を拾い続けているのだが、どうやらSちゃんが無言でいるらしい。








音が消えて2分も過ぎた頃だろうか。









「ちょっと、起きなさいよ…」










と、およそカワイイ系統のSちゃんからは想像もできないようなドスの効いた声とベッドが軋む音。












「起きろっつってんだろ!!」












との怒声と共にボスッ!!バスッ!!というニブい打撃音。





それにともなうE原のウゴッ!!という唸り声を聞いたところで、車内メンバーがネタばらしのために全員で現場に向かう。





全員で抜き足差し足で接近・室内進入して様子を伺うと、どうやら何とか履かせてもらえたパンツ一丁のE原が、鬼の形相のSちゃんに枕でバシバシと殴られているところであった。






「イエェーイ!!」
「キャッホー!!」
「やったやったぁー!!」




ここまでとばかりに全員で奇声を上げて乱入するが、状況が飲み込めず、そのままの体勢でキョトンとするE原とSちゃん。



「はいはいはいはい、ブレイクブレイク」
「大丈夫だよ、Sちゃん。これみんなで仕掛けた作戦だから」
「この野郎があんまりノロケるもんだから天誅を食らわせてやっただけだよ」




と、代わる代わるに状況を説明。





唖然&”してやられた”という表情を浮かべる2人を尻目に揚々と引き上げるE原天誅隊のメンバーであった。





さてその後、目に余るノロケ&ベタ付きがなくなったE原とSちゃんは交際を重ね、そのまま学校を卒業していった。







その数年後、私はE原とは年賀状の付き合いだけになってしまっていたのだが、ゼミが同じだったということで、E原の結婚披露宴に招待された。





当日、披露宴会場に赴いてみると元天誅隊のメンバー数名とも再会して学生時代の話に花が咲いた。



「ところでE原のヨメさんって、Sちゃんじゃなかったの?」


「あれ?お前知らなかったの?」



招待状をもらった時点での疑問をメンバーにぶつけると、それに答えてくれたのだが…。








聞けばSちゃんは卒業して就職したのが小さなイベント会社。



その仕事のツテで知り合った、これまた小さな劇団に所属し俳優を目指す男に入れ込んだ挙げ句





「私は彼の夢を支えてあげたいの」





というセリフをE原に叩きつけて去っていったそうである。






「もうさ、あのときのE原が荒れるの荒れねぇのったら(笑)。しばらくSちゃんネタは禁句だったぜ」



その言葉に、元天誅隊メンバーは満面の笑顔でうなうずくのであった。





(了)