剣客商売!!! | 辻明佳のナイフとフォーク

辻明佳のナイフとフォーク

旅、お料理、ときどき女優。

金曜プレステージ『剣客商売』拝観。


もね、原作が大好きすぎるパターンなわけ。私。



世渡り上手で小粋なおじいちゃん・秋山小兵衛と
まじめ一徹なその息子・大次郎がくりひろげる痛快剣術勧善懲悪劇。


小説のシリーズ展開もドラマ化にぴったりな
おいしさ満載の作品ではあるのですが、



とにかくイメージがこわれるのが怖すぎて、漫画はおろか、
敬愛する渡部篤郎と藤田まことでやってたシリーズすら
観ていなかったわたくし。


特に一本気なヒロインであり女武芸者である
佐々木三冬を私の中で映像化したくなかった!


ですが、
オープニングで大川の流れが映し出されて
そののどかな大川をなでる風が
のびやかな音楽とともにふわっとお茶の間までふきわたってきた瞬間に
このドラマの勝敗は決していたのかもしれない。


重々しい役どころのイメージが強かった北大路欣也が
ひょうひょうとして軽妙洒脱な秋山小兵衛にチャレンジしてて。

今回の撮影は欣也さん的にはどうだったんですかね。
スタートダッシュの手ごたえはあったんじゃないかと思うけど、
こっち方面でもっとどんどんやらかしてってく欣也さんが観たい!


その下女・おはるがかわいらしくって素朴で素敵でした。


縁側で並んですいかを食べている小兵衛、おはる。

(馬のいななきが聴こえる)

おはる「馬だねえ。」
小兵衛「うん。馬だ。」
(と、種を飛ばす)
おはる「オラだって。」
(と飛ばすが、種は足元に落ちる)
おはる「先生、いくさでも始まるのかねえ。」

というのが、今日イチふるえた地味ほっこりなひとこま。
この空気感。
というか、なに?
時間感、
とでも言えばいいのかな?!
時間感!!


何気ないけれどおいしいたべものが
要所要所でたくさん出てくるのも、
池波正太郎ファンにはたまらんでした。


原作でも最初に出てくる根深汁や、
おはるお手製のしらたま、
小料理屋のアジの水なます……


ツボついてくる。
料理指導のスタッフさんもちゃんとついてるのねー。
ちゃんとおいしそう。


ラストの結婚式のシーンで
昔なじみの宗哲が高砂うたってたり、
縁の下の力持ちな役回りの御用聞きの弥七が
きっちりめでたい顔でうつりこんでたりと、

映像って、
好きな角度から切り取れる映像って、
そういうとこがおいしいよねえ、

という演出のオンパレード。


意外にもたいへんおなかいっぱいになりました。


無口・朴念仁に徹した大次郎の斎藤工もよかったなー。
杏さん好きなんだけど、
セリフの感覚がなんだかふしぎなぐあいに浮いていた。


まともにテレビ観るのがほぼ一年ぶりなので
最近なんだか三丁目の夕日のころのひとみたくなってるけど、ごめんね。


しかし改めて、
文章そのものに味わいのある小説を映像化することの難しさとそれへのチャレンジを
なんといいますかまあ、堪能しました。


ああ、いいかげん、寝なくては。