5月10日、私たちは立ち入り制限区域の視察活動のため、双葉郡富岡町に向かいました。
今回も、観陽亭 遠藤社長がご案内してくださいます。
10:40 いわき中央ICでマイクロバスに乗り換え、農業支援組と分かれて出発です。
広野町を経由して楢葉町に入りました。
11:20 今は双葉警察署の仮庁舎として使われている、『道の駅 ならは』に到着。
バス内で早めの昼食をとりました。
11:45 バスは再び出発、10分後に富岡町に入りました。
進むにつれ、津波により壊れた家屋、元の場所から流された2階だけの部分、車の残骸などが目立ってきました。
そして、海沿いまでやってくると、建物の基礎部分だけが広範囲に目の前に広がっていました。
その先には海と空しかありません。
さらに進むと、一面が雑草で覆われた光景に変わりました。
ここも、向こう側に海と空しか見えません。
いや、他に存在するものがあります。
除染作業で取り除いた物を入れたフレコンパックが多数置かれています。
富岡駅に到着すると、そこには駅舎は跡形もなく、ホームだけが残っています。
その前で遠藤社長は、今でこそ片付けられているが、以前は津波による流出物で埋め尽くされていたことを、当時の写真と比較しながら分かりやすく説明してくださいました。
そして富岡駅を離れる前に、駅の横にある慰霊碑に皆で静かに手を合わせさせていただきました。
12:40 バスは再び走り出しました。
今度は海を背にして、富岡の駅前からメインの商店街を抜けて行きます。
しばらく進むと、とある小学校の前へ。
この学校の校庭では、除染によって、通常は地中に埋まっていて見えることのないパイプが現れるまで、地表を剥ぎ取られたのだそうです。
町なかへと入って行くと、海の近くとは違い、今度は津波ではなく地震によって破損した家が増えてきました。
その後、除染物の仮置場となっている野球場の前を通りかかりました。
山と積まれたフレコンパックの量は、先ほどの海岸の比ではありません。
中身は大半が草で、6層まで積み上がっているそうです。(フレコンパックの寿命は3年とのこと)
ここは、あくまで「仮置場」なのだということを覚えておいてください。
13:05 旅館・観陽亭に到着しました。
遠藤社長の、震災当時までの職場だったところです。
(※震災後、その名を受け継いで仕出し弁当の会社としてスタートしたのが、いつもお世話になっている観陽亭です)
ここは海抜18メートルの高所ですが、その高さを上回る21メートルの津波に襲われ、1階が大きな被害を受けました。
近くには海から突き出た『ろうそく岩』という大きな岩がありましたが、この岩も今はもうありません。
ここでも遠藤社長が、ろうそく岩のあった当時の写真と比較して説明してくださいました。
この高台からは、遠くに福島第2原発まで見渡すことができます。
そこでの震災当日の様子もうかがうことができました。
ふと手前の海辺を見ると、さっきまでいた富岡駅が下の方に小さく見え、その高低差を乗り越えてきた津波の大きさが実感できます。
この後、観陽亭を後にし、夜ノ森地区に向かいました。
13:40 町の真ん中を区切っているバリケードの前に差しかかりました。
向こう側は、帰還困難区域です。
このバリケードを境にして、賠償金は変わっています。
それにまつわるエピソードをお聞きすると、住民の方たちは何も悪くないのに、と感じます。
参加者の中からは、バリケードの向こうとこっちで何が違うのか分からない、といった声も聞かれました。
13:55 バスは富岡町を離れました。
福島第2原発に行き、スクリーニング(放射線のチェック)を受けました。
参加者全員が全身スクリーニングを希望しましたが、滞りなく終了しました。
この後は農業支援組との合流に向かいます。
途中、いわき市久ノ浜町の浜風商店街に経済支援を兼ねて立ち寄りました。
久ノ浜第一小学校の敷地内にある仮設商店街です。
しばしの休憩の後、農業支援組の活動場所まで行き合流、視察組は解散しました。
行き帰りの道中、遠藤社長は、富岡町以外にも、通ってきた地域の様々なお話をお聞かせしてくださいました。
広野町の火力発電所の停止から復旧まで、楢葉町での家屋除染の進み具合い、久ノ浜町では被害の大半が火災によるものであったこと、など。
福島の語り部として、とても心強い存在だと感じました。
この日一日、本当にありがとうございました。
今回の視察参加者は10名、リーダーとサブリーダー以外は、全員が絆ジャパン初参加でした。
皆さん、お疲れ様でした。
その参加者からの、帰りのバス内感想の言葉をお借りすると、
「百聞は一見に如かず」
です。
まだ震災後に福島を訪れたことのない方は、ぜひ一度、福島の地に立ってみてください。
そして、見て、聞いて、感じてください。
今なお、福島の県外・県内には、大変多くの福島県民の方々が避難生活を余儀なくされています。
地元に残った方たちも、とても苦労されている方々が大勢いらっしゃいます。
その一方で、福島へのボランティア参加者はとても少なくなっています。
次回は、6月14日(土)に視察活動が予定されています。
少しでも、福島への関心を高めていただき、行動につなげていただければと思います。
文責・写真 つよし