※今日はちょっと文章長いです。

TS-1+アバスチン療法22クール目の2日目、概ね好調です。化学療法初日だった昨夜は、いつもの通り大腿部の筋肉痛のような症状と、鼻水、くしゃみなど多少のアレルギー反応がありましたが、今日は治まっています。

さて、昨日簡単に触れた、ALL RASの遺伝子検査について。進行・再発大腸がん患者にとって、これは注目ですよー。「ALL RASって何よ?」という方のために、まずは下記に改めて簡単にまとめます。

間違っているところもあるかも知れませし、用語や用法も正しいかどうか絶対の自信はありません。100%信用はしないでくださいね。疑問があれば、先生に聞いて確かめるようにしてください。

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<KRAS、KRAS野生型、ALL RASなどについて>

●もともと、大腸がん患者に使われる抗EGFR抗体薬であるセツキシマブ(アービタックス)とパニツムマブ(ベクティビクス)は、KRAS遺伝子が変異型の患者には効果がないということが分かっていた。

●大腸がん患者の約40%が変異型(ちなみに、変異がないものは「野生型」で約60%)。

●ただし、上記で言う「変異型」というのは、これまではKRAS遺伝子のexon 2(codon 12、13)の変異だけを調べた結果だった。現在、保険が適用となるのはこの変異の検査だけ。

⚫︎上記の検査は、化学療法を継続的に行っている大腸がん患者のほとんどは受けている(先生が検体を出してすでに検査をしている)はず。検査を受けていなくても、検体さえあれば検査は可能。手術を受けていれば、検体は保存されている。

●しかし最近の研究で、上記のKRAS exon 2だけでなく、その他のRASに変異があっても抗EGFR抗体薬が効かないことが分かった。この「その他のRASに変異がある患者」は、現在「野生型」と判定されている患者のうち約20%。つまり抗EGFR抗体薬が効く患者は、大腸がん患者全体の48%(60%のうちの80%)となる。

●その他のRASとは、KRAS exon 3 (codon 59, 61)、4 (codon 117, 146) と、NRAS exon 2 (codon 12, 13)、3 (codon 59, 61)、4 (codon 117, 146)。これらのRASは便宜的にminor RASなどと呼ばれてきた。また、これらを含めたすべてのRASを、便宜的にALL RASなどと呼ぶ。

※遺伝子について分かりやすく説明すると、KRAS遺伝子が例えば電車だとすると、2両目がexon 2、そこに乗っている乗客がcodon 1・・、といった理解で正しいかと思われます。詳しい方、もし間違っていたらご指摘ください。

●上記のminor RASについても「無駄な投薬、無駄な副作用」を避けるため、抗EGFR抗体薬を投与する前に検査すべきという声が以前から上がっており、検査薬の登場と承認が待たれていた。

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さて、そこで今回のビッグニュース。いよいよ、ALL RASを検査するキットがでたようです!

診断薬の名前は「MEBGEN RASKET キット」。医学生物学研究所から発売されます。すでに1月27日に販売承認されており、薬価収載が順調に進めば4月にも本格的な販売開始が見込まれるそうです。

◆大腸がん治療薬 抗EGFR抗体薬の投薬前検査に有用なRAS遺伝子変異検査試薬の製造販売承認および発売について
(2015年2月9日、医学生物学研究所プレスリリース)
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1214617

昨日の診察で主治医から教えてもらったのですが、既存の検査で「KRAS野生型」といわれていた大腸がん患者は、全員検査することになるだろうとのこと。無駄な治療の副作用に苦しめられるのは、たまったものじゃないですからね。でも、一方で新たに野生型のうち約20%の方が「あなたには抗EGFR抗体薬が効かない」と告げられることになります。

一応コメントしておきますと、MEBGEN RASKETでは、ほんの数%ですが正しく検出されなかったり、エラーが出たりすることもあるようです。また、欧米の研究では、一部のRASの変異で抗EGFR抗体薬によるPR(Partial Response=部分奏効)例が見られたりもするようです。

ですので、今後も検査結果やそれによる治療方針に100%の信頼を置くわけではなく、都度、先生に相談しながら進めるのがいいかも知れません。少しでも効く可能性がある数少ない薬を、簡単には諦められませんよね。

ところで、検査の金額がいくらになるのかが気になります。現在の検査は、主治医によれば大体2万円くらい(3割負担で約6000円)のようです。同じ値段じゃ無理でしょうね・・。でも、安くしてほしいなぁ。

尚、BRAF遺伝子(下記の「参考」を参照)についても主治医に聞きました。BRAFの変異は、簡単に言えば「予後不良因子」だそう。薬が効くとか効かないとかの問題ではなく、何をやっても奏効は得られない・・とのことだそうです。

BRAF変異が見られるのは、日本では大腸がん患者の約5%だそう。「検査はしないのですか?」と聞いたのですが、たったの5%(患者にとっては結構高い確率ですが・・)で、かつ、「何をやってもダメです」という事が分かったからってどうするの?という側面もあり、今後も検査はしないだろうとのことでした。

以前も触れましたが、BRAFの変異はRASの変異と「排他的」。つまりBRAFの変異がある人というのは、KRASに変異がない人です。ALL RAS野生型の人が48%。さらに全体の5%がBRAF変異型ならば、結果的に抗EGFR抗体薬が効く人は大腸がん患者の43%ということになりますね。

余談ですが、肺がんで使用するイレッサは、EGFR遺伝子の変異がある人に効果があるんですね。大腸がんでは、「たまたま」、変異がない人に効く薬が先行して開発されている・・という理解でいいのかも知れません。大腸がんでも変異のある人に効く薬剤が開発されるといいですね。

同時に、遺伝子解析の技術がどんどん進んで、しかも検査代が安くなって、いろいろなバイオマーカーが発見されて、それに対応する治療薬もどんどん開発される・・そんな日が早く訪れるといいですね。

頑張れ、人類!

研究者の皆さん、我々は命がけで期待と応援をしています!

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(参考)

◆大腸癌におけるRAS変異と検査 -個別化医療の時代へ-
(GI canser-net、2014年12月頃)
http://www.gi-cancer.net/gi/zadankai/18/page5.html
※上記の記事のトップページは下記です。
http://www.gi-cancer.net/gi/zadankai/18/index.html

◆各種遺伝子変異と抗EGFR抗体薬の研究結果
(2014年7月23日のエントリー)
http://ameblo.jp/harumochi555/entry-11898330353.html

◆抗EGFR抗体薬、RAS野生型を選んで投与する個別化医療の時代へ(メモ)
(2014年3月17日のエントリー)
http://ameblo.jp/harumochi555/entry-11798410473.html

◆大腸がん、BRAF変異でも抗EGFR抗体の効果が低い。
(2015年2月2日のエントリー)
http://ameblo.jp/harumochi555/entry-11984790218.html

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