HDD鑑賞


ついに開けてしまった、パンドラ
観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-hotaru1
火垂るの墓


監督・脚本:高畑勲

キャラクター・作画監督:近藤喜文

美術監督:山本二三

原作:野坂昭如

音楽:間宮芳生

出演:辰巳努/白石綾乃/志乃原良子/山口朱美


終戦間近の昭和20年、神戸。空襲警報が響く中、14歳の清太(辰巳努)は、母(志乃原良子)を先に防空壕へ行かせ、保存食を庭に埋め、4歳の妹節子(白石綾乃)と共に防空壕へ向かう。空襲により町は火炎に包まれ、防空壕へ行くのをあきらめた清太は、節子と二人物陰に身を隠し、敵機の去るのを待った。

空襲後の町は焼け野原となり、避難所となった国民学校へ二人も向う。そこで清太は全身にやけどを負い、包帯に包まれた変わり果てた母と再会するが、間もなく息を引き取ってしまう。このことを節子に伝えられないまま、戦災孤児となった二人は、西宮の叔母(山口朱美)の元に世話になる。食料不足の中、育ち盛りのふたりの面倒もみることになる叔母は、徐々に二人につらく当たるようになり、二人は家を飛び出し、使われなくなった防空壕で生活を始める。


観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-hotaru2

映像の切り替えで時間軸を表現。

秀逸の映像美。


冒頭に「パンドラ」と書いた。

ジブリ作品はほとんど見ている。先だって「紅の豚 」を観て、主だったものは制覇した、と思っていたら、まだあった、それがこれ。野坂昭如の実体験を元に書かれた同名小説のアニメ化。何度も映像化されているので、ストーリーについては今さら語ることもない。

なぜ、今まで観ていなかったか。家人が言う。「哀しくて観ていられない」と。何度もテレビ放映していながら、そういうこともあって観る機会に恵まれなかった。もっとも、「哀しすぎる戦争映画」を避けてきた、hiro自身のメンタリティも少なからず影響はしていた。

先日、日本テレビ「金曜ロードショー」枠で「かぐや姫の物語」の煽りとして放映。録画した。当ブログでも何度か書かせていただいた。今年は太平洋戦争と向き合おうと。ならば欠かせない作品。避けて通れない作品。今観ないでいつ観るのか。

以上の理由で、ついにパンドラの匣を開けることとなった、いや開けることにした。


映画は清太のセリフから始まる。「僕は昭和20年9月21日に死んだ」。駅の構内。力なく息絶える少年。なぜそうなったのかが容易に想像できる。遺体となった少年を見つめる少年。同じ少年。何かに照らされたようにほの赤い。彼は移動する。思い出の風景へ。思い出をたどる旅が始まる。

原作未読のため、この構成が原作どおりなのか、映画のオリジナルなのかは不明。ただ、二重構造としたこの演出は効果的。ほの赤い兄妹の魂は、目の前に展開する兄妹の残り少ない未来を、知っている未来を見つめている。


「哀しい」です。が、hiro、魂が見つめる兄妹の姿が、とても微笑ましく、力強く感じられた。残された時間を、子どもらしく全力で生きる姿。楽しくさえ感じた。ただの悲話を伝えるの映像作品は、これまで何編もあった。あえて高畑監督が挑戦したかったのは、生と死の対比、静と動の対比ではなかったか。ほの赤い魂。その赤が、二人を照らしていた蛍の光であると、そして迎え火であると、勝手に想像した次第。


泣けたか…例によって構えすぎたせいか、号泣はせずにすんだ。二人が生きた時代に、二人が生きた証が刻み込まれている。フィクションであるのは、わかっていながら、つい、冥福を祈ってしまった。


東日本大震災時に、わが日本人が世界に知らしめた「扶助」の精神。兄妹を取り巻く人々には、かけらこそみられるものの、兄妹を助けるには至らなかった。それほど戦争とは痛々しいものなのか。それほど人の心を荒ませてしまうものなのか。


hiroをはじめ、これを読まれる、おそらくすべての方が、当然のように戦争を知らない。戦地で敵国兵と向き合った人々だけじゃない。本土で「銃後の守り」などと都合のいい大義を押し付けられた市民も同じ。あの時代を生きた人々の心情など、想像はできても実感などできるわけもない。でも、思う。実感できなくても、想像することが大切なのだと。


小説「永遠のゼロ」から始まった、太平洋戦争を知る旅。まだまだ続けていこうと思う。今年の区切りは、きっかけとなった小説の映像化作品、「永遠のゼロ」で〆ることになりそうです。




hiroでした。

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