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人は何を応援しているのか?

(C)2020「On The Edge of Their Seats」Film Committee

アルプススタンドのはしの方


高校野球全国選手権大会、いわゆる夏の甲子園。初出場となった県立高校野球部の1回戦、全校応援に駆り出された生徒のなか、応援に身が入らない演劇部の安田(小野莉奈)、同じく演劇部でどこか安田によそよそしい田宮(西本まりん)、元野球部の藤野(平井亜門)、成績は学年トップの宮下(中村守里)の4人はアルプススタンドの端で試合を見ながら話し込んでいた。


(C)2020「On The Edge of Their Seats」Film Committee


2016年、兵庫県立東播磨高校の4人の演劇部員のために書かれた戯曲は、翌年、全国高等学校演劇大会で最優秀賞を獲得。たまたま目にした演出家籔博晶が惚れ込み、自身の演出で浅草で上演。その映画化作品を初見。


冒頭からなんなのだが、これは控えめに言って傑作! 2020年にリアルタイムで観ていたら年間ランキング上位は必至。なんか舞台っぽいなと思ってたら、案の定、上記のような背景があった。


高校演劇アルアルで、場面も登場人物も最小限。東播磨のケースも部員数が少なかったし。男子より女子が多いのもありがち。娘が高校演劇をやってたので、なんか懐かしかったな。


映画も舞台感を踏襲。野球シーンは一切なし。効果音とアナウンスとセリフだけで展開をわからせる脚本。明らかに甲子園ロケじゃないのにそれを隠そうともしないチープさもナイス。


(C)2020「On The Edge of Their Seats」Film Committee


中盤まで緩い会話劇。野球の謎ルールを究明していたかと思えば脈絡のない話が始まったり。そんな冷めたやりとりは「セトウツミ」のよう。高校野球の応援って人によって熱量が違うもんね。


緩いままだと「セトウツミ」のまま?、待て、何かあるかもしれないぞ、と展開予想も徐々に忙しくなる。結論としては「何かあった」。そして「刺さった」。みんな何か吐き出したいんだよね。


主要キャスト4人は全員が舞台版同役を経験済み。小野はその後大河「青天を衝け」で栄一の娘を演じた有望株。中村は元ラストアイドル。平井、西本も多方面で活躍中。黒木ひかりは初登場。


強い相手に負けるのは「しょうがない」のか。それでも諦めずに戦い、関係ないのに応援するのは何か起きてほしいから。野球の応援であって実は自分の応援でもある。終盤、熱が上がっていく流れがまた秀逸すぎる。



 DATA

監督・編集:城定秀夫/脚本:奥村徹也/原作:籔博晶/兵庫県立東播磨高等学校演劇部戯曲

出演:小野莉奈/平井亜門/西本まりん/中村守里/黒木ひかり/目次立樹



hiroでした。



幕が上がる←高校演劇を舞台にした作品


サマータイムマシンブルース←舞台作の映画化


泥棒役者←これも舞台劇が原作