続・エビで龍を釣る

続・エビで龍を釣る

旧ブログの続編です。あることないこと言いっぱなしですが、まじりっけなしに真剣です。
とっちらかった日々のあれこれをなけなしの言葉にして綴りたい。法螺や水増しや誇張も含めて等身大。
ここでも目指せ常温ビックバン!

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2020年11月19日発売となる僕のSF小説『ヴィンダウス・エンジン』の書影ができました。装画を手掛けて頂いたのは鈴木康士さんです。

 

作品のイメージを超える美しい出来栄えです。

 

編集者や選考員の方たちの助言を踏まえギリギリまで質を高めるため悪戦苦闘しましたが、ここからは作者の手を離れます。作品は、読者の方に読んで頂くことで完成します。是非、多くの人に手に取って貰いたいです。また宣伝のほどよろしくお願いします。

さて物語の設定よれば、表紙遠景にある高層建築は旧市街で、手前の古めかしい伝統的な建築こそが最新の成都ということになります。新旧が混在した魅力的なSF都市というイメージをイラストレーターの鈴木康士さんは見事に具現化してくださいました。本当によい出会いでした。

これから発売へ向けて、ちょびちょびと執筆と着想の裏話などをここに綴っていこうかと思っております。突飛な空想とみられがちな部分が実は事実に基づいていたりします。

 

近頃はブログの場をnoteに移してしまいましたが、よろしければそちらにもお立ち寄りください。

 

小説・ブログともに十三不塔というペンネームで活動しております。

 

 

 

久しぶりに小説を書いた。

 

「産業革命前夜のファンタジー世界」という触れ込みである。

 

タイトルは

 

『疾走する玉座』

 

タイトル通り、王国の玉座が国中を走り回るという、突拍子もない筋立てです。

 

カクヨムというサイトにアップロードされているので読んでもらいたい。

 

以前賞を頂いたのは純文学のコンテストだったが、別のジャンルにも挑戦してみた。

なかなか楽しい。

 

もし読んでくださったなら、感想はもちろん辛口な意見も聞かせてくれたら喜びます。
面白かったなら友達なんかにも勧めてみてください。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888545258/episodes/1177354054888545383

 

 

江戸川乱歩賞受賞作ということで非常に楽しく読みました。

 

著者は佐藤究さん。

 

一家みんなが殺人者という設定は『悪魔のいけにえ』などの先行作品を思い出させます。

 

殺人一家の娘がヒロインで自分と家族にまつわる謎に分け入っていくというストーリー。

 

これ、東京出張のお供にと文庫で買って読んだのですが、面白くて行きの新幹線とホテルの夜とで読了してしまいました。

 

ここで扱われている「鏡」のテーマは次作『ank』にも続いていきます。

 

ミステリーというよりも、心の迷宮を彷徨う少女の冒険物語と見なしたほうがすんなり楽しめるでしょう。

 

殺人や国家などのモチーフが深く考察されていて、その理屈だけでも十分スリリングで満足できる。

 

この手の感じは苦手な人も多そうで、乱歩賞審査員の湊かなえさんも苦言を呈したと言われています。

 

個人的にはかなり好きですね。この家族の住まう家の画が頭の中にくっきりと浮かびました。

 

作中で言及されているジャック・ラカンにも挑戦してみたくなりました。

 

ただし、事件のあり得なさの謎解き自体は想定を超えないという意見はごもっともだと思います。

 

京極作品、とくに姑獲鳥の夏などが好きな人にもおススメです。

 

 

『パッドマン――5億人の女性を救った男』という映画を観ました。

 

滅茶苦茶よかったので暇とお金がある人は是非観て下さい。

 

これは妻のために安価の生理用ナプキンを開発した男の話だ。

 

インドの女性のナプキン使用率は2001年当時、数パーセントだったという。バイクを拭くような汚れた布ならいい方で、貧しい者は木屑や灰や

バナナの葉っぱを使っているという。

 

もちろん感染症が多発している。

 

薬局にナプキンは売っているが、家計を圧迫するほど高額である。

 

そこで主人公は奮起するのだが、インドの因習の壁に阻まれて大変な目に会う。

 

ド変態扱いされて家族からも白眼視される。。。

 

この逆風のパートが長すぎて、心折れそうになるが、峠を越えるまで主人公ラクシュミを応援して欲しい。

 

ものすごい感動が待っています。

 

さらにこれが実話をもとにした映画なのも驚きだ。

 

モデルとなったアルナーチャラム・ムルガナンダムさんのTEDスピーチの動画もあります。
 

是非、ご覧になって頂きたいものです。

南直哉さんの小林秀雄賞受賞の「超越と実存」

 

仏教の本ですね。

 

本書は著書の強迫衝動である生死と苦悩にまつわる問題を仏教をツールにして探る、といった趣のもの。

 

仏教のことしか語っていないのに、何故か仏教そのものは一歩退いた位置に置かれています。

 

そんな不思議と言えば不思議な書物。

 

とはいえ、そのあたりのややこしい部分は一旦忘れて、ザッと読むと仏教の成立から伝来の歴史がわかります。

 

クロニクルとしてもよくまとまっていると思います。教科書的にも読めますが、そこかしこに著者の独自の観点が差し挟まれており、いわゆる仏教ガイドとは一線を画しています。

 

素晴らしいのは、南さんのフィルターを通して観た仏教史が、わかりにくくなるのではなく、反対に活き活きと見えてくることかな。

 

終盤の道元と親鸞の特殊性を語る部分がハイライトとなっており、二人の祖師の個人的なやむにやまれぬ何かが、南氏の切迫とオーヴァーラップしながら立体的にせり出してくる。

 

何度も繰り返し読み返したい本である。

 

贅沢を言えば――本当にないものねだりなのだが――、あとがきにあった韓国の名僧元暁について語って欲しかったというのがある。

 

一番砕けた感想を言えば、何も信じられない人のこじれた迷走の軌跡といった感もある。

 

しかし、言語とか文章という間接的なツールを介して受容する限りにおいては、その軌跡が非常に美しく見える。