ハードディスクの円盤移植修理に初成功! | アイループ パソコン修理日記

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大阪市阿倍野区のパソコンショップ「アイループ」における修理記録をつづります。

※同様の救出依頼が全国からきますが、現在お断りしております。理由は当店にとってリスクが高いためです。(専門ではないので自信を持って作業できない)
【2019年1月8日追記】粘って頼み込まれてもお断りしています。




自分史上初めて、ハードディスク内部のプラッタ(以下:円盤)移植修理に成功しました。同業者さんでも、これやったことある人は少ないんじゃないでしょうか。

ハードディスク自体の交換なら、ある程度パソコンをいじれる人でもできる作業です。しかし、ハードディスク内部の円盤の交換を成功させるのは職人技というか、普通の人にはできない作業だと思います。

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かくいう僕もこれまで3回、円盤交換にチャレンジしてきたのですが…ディスクヘッドを不用意に触ってしまったり、作業中にホコリが入ってしまったり、いろいろやって全て失敗してきたのです。成功実績がありませんが、どう修理すれば良いか方針は固まっていました。かなりリスクは高いですがサルベージ専門業者を通さず、独力でデータの救出を試みました。



依頼内容:
故障した外付けハードディスクからのデータ救出

診断結果:
外付けハードディスクは、一般的なハードディスクと、それをUSBに変換するための基盤で成り立っています。診断したところ基板は正常で、中身のプラッタ・アーム・ヘッドあたりが故障していると判断しました(逆ならデータ救出は楽勝だったのですが)。ハードディスクを取り出して別のパソコンに接続したところ、「ビーーーッ…ビーーーッ…」と5回鳴ったあとに止まるという症状でした。動作音を聴く限り、円盤は回転していません、ヘッドも動いていません。

データ救出の専門業者に頼むと、見積額は15~20万円となるのが普通です。お客さんにもその旨お伝えし、それでも救出してほしいということで作業を進めました。

作業内容:
まずは故障したハードディスクと同じ型番の製品をヤフーオークションで調達します。容量は1TBと大きいですが、メーカーのリファービッシュ品が4,800円で出ていたので落札しました。これを移植ベースとして修理作業を行います。

簡単に言うと、故障ハードの円盤(データ有)を取り出して、正常ハードの円盤の位置に移植します。これでデータが読めるならヘッドが故障していた、読めないなら円盤面に問題があった、そう問題の切り分けができると考えました。結論としては、ヘッドにも円盤面にも問題があったのです。

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作業を進めていくと、故障ハードの円盤には1mm四方に満たない黒い物体が4か所、くっついているのがわかりました。この黒い物体はディスクヘッドの先端にあり、データの読み書きを行っている重要なものなのです。これが何らかの原因(衝撃か強力な磁力)でヘッドから外れてしまい、ディスク面にくっついたと思われます。黒い物体には磁性があるためディスク面にくっつきます。あちこちくっついて、結構ヤバい状態でした。このまま円盤が回転するとキズだらけになりますが、幸い回転できなかったのでキズはついておらずセーフ。細いピンセットを使って、ディスク面にキズを付けることなく黒い物体を取り除きましたが、寿命が24時間くらい縮む精密作業です…。

それと確実に言えることは、元のハードディスクのヘッドは昇天していると言えます。実際にヘッドの先端を見ると、細いハリガネのようなものがグチャグチャになって広がってました(ガクブルものです)。

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無事円盤にくっついた物体を取り除き、正常ハードの円盤と交換しました。…と簡単そうに書いてますが、ホコリを入れず、指紋を付けず、キズを付けたり割らないように作業するのは、やはり寿命が縮みます。このときヘッドは安全な位置に正しく移動し、かつヘッドのガイド部分から外さないように注意しないといけません。さらに、ヘッドの先端は絶対に触ってはいけません。ここが一般の人には不可能な作業と思われる点です。僕が成功したのは、これまでの失敗があったからでしょう。

こうして移植が完了し、別のパソコンに接続して…データが読めました!(ガッツポーズ!!)

すぐにデータ取り出し作業を行いました。このハードディスクは外付けケースに戻して、「修理できたのでお返しします」という方法もあるのですが、一度フタを開けて作業したために少なからず内部へホコリが入っています。専門業者とアイループの決定的な違いは、技術を除けば「クリーンルームの有無」です。内部にホコリが入ったハードディスクをこのまま使い続けるのは得策ではありません。とはいえ僕が持っていても(信頼性が低いパーツなので)仕方ないので、お客さんに事情をお話しし、修理できたとはいえ、この外付けハードディスクは【爆弾を抱えている状態】なので使わないように、と忠告することにしました。



料金ですが…正直迷いました。というのも、上で書いたように原価は4,800円です。しかし作業難易度が高く、技術料を多めに取るべきです。専門業者であれば当然、15万を超えます。

常連のお客さんですが、心を鬼にして30,000円いただくことにします。