トオイストーリーになる
トオイストーリーになる
かなわぬ夢が またひとつ増えた
というのは俺のバンド、ロマンスジョーの曲の歌詞だ。
はるか昔、今と同じような仕事をして全国を飛び回っていたときの仲間を想って書いた歌だ。
人の夢は、いつも儚い。
が、俺は今日、夢がかなった。
俺とパズドラと伊藤という記事を以前書いた。
この伊藤と言う後輩は大学時代の後輩で、なんかシュッとしてるけど駄目なやつだ。
ルックスが悪いわけじゃないのだが、コミュニケーション能力が独特なものなので、あまりモテない。
でも音楽にまじめだし、酒も強いし、いじり甲斐があるけどたまに男気もあるのでとても好きなやつだ。
そんな伊藤には
「恋人はパズドラ」
「魔法石はそえるだけ」
「わがダンジョンに一片の悔いも無し」
などたくさんの名言があるが(一つも言ってない)。
恋人はパズドラなこの伊藤、ここ数年彼女がいない。
俺はずーっと、早く彼女を作れと言い続けた。
ところが伊藤の野郎、全く行動の気配が無い。
おまけに「俺のストライクゾーン狭いんすよ」とか言うから、お前のストマックゾーンに膝蹴りを入れてやろうかと考えてた夜もあった。
今年の3月くらいに、いい加減に業を煮やした俺は、
「街コンに行け」
と言った。
いわゆるその街の何店舗かを流動的に動いてコンパする、あれだ。
ところが伊藤はプライドが邪魔をして、一向に行かない。
俺は何度も伊藤を励ました。
「行動することがすべて」
「合言葉は勇気」
「踏み出す足はいつだってはじめの一歩」
と、励まし続けた。
なぜって、俺の愛する伊藤のことが心配だから…というのは全くの嘘で、街コン当日に浮かれている伊藤をニヤニヤと見ていたいから。
そして、時は来た。
言い続けて半年、本日、10/13。
伊藤、街コンへ行く。
伊藤から先週
「大さん、俺、街コン…行きます」
と言われたときといったら。
魂が震えた。
このときを待っていたんだ、俺は。
生きていて良かった。
夢ってかなうんだ。
ROOKIESのドラマこないだ見ておいてよかった。
心からそう思った。
そして10/13を迎える伊藤。
前日から意気込みが違った。
実は伊藤は今、俺と同じ職場で働いている。
で、ちょっと俺が上司的?なわけで、とにかくなんとなくそーゆーニュアンスで、一緒に働いている。
職場でも前日から彼は燃えていたのだ。
ちょっと昨日の伊藤の意気込みを見てもらいたい。
仕事で使う証明書みたいなのを忘れた伊藤からのLINE。
すばらしい特攻の精神。
当たって砕けろ、か。
砕けちゃ駄目だけど、砕けるところも見たい。
むしろ、砕けるところが見たい。
その心意気や、よし!!!!!!!
さて、とうとう街コン当日。
面白いから必ず仕事のときみたいに報告をLINEで送ってくれと伝えた。
そして、時は来た。
よし、がんばれ。
伊藤と一緒に街コンに行った橋本君、あまり良く知らないけど君もがんばれ。
そしてどきどきわくわくしている俺のところに中間報告が来た。
中間報告「2」の意味がわからない!!!
2人分のメールアドレスをゲットしたのか?!
単純に2人と飲んだだけなのか?!
まさかアレしちゃったのか2人も?!
そしてキャプテンバッカスの意味がわからない!!!!
伊藤のことキャプテンバッカスって呼ぼうかな!
さらにドキドキしていると、来た。
最終報告だ。
こ、こいつネクストストーリーを作ろうとしだした!
野郎、究極進化を遂げようとしてやがる(パズドラ)!!
がんばれよ伊藤。
和風個室飲み屋とか、隠れ家的BARみたいな、なんとなくお洒落っぽいところで、いい雰囲気作れよ。
俺は成長した伊藤の姿を見るべく、飲み屋を聞き出し、友達(伊藤のこと知らない)を誘って駆けつけた。
そこには、勇者がいた。
店、ぜんぜんお洒落じゃねええええええ!!!!!
ガード下の赤提灯!!!!
「合言葉は勇気」にもほどがある!!!!!
ビールケースで作った簡単な机に肘を置いて、ニヤニヤしながら飲む伊藤の横を、俺と友達は笑いをこらえながら通り過ぎた。
そして数時間後、伊藤から結果発表が来た。
ロマンス…
いや、ノーロマンス!!!!!!
(完)