随分、遅くなりましたが、
『怒り』の
まずは、東京編の感想です。





泣きました。
シネコン内のトイレの鏡を見て
「予想とおり…」の真っ赤な目を見て、やっぱり。
真っ直ぐ駐車場の車に直行したかったのですが
どうしても、コウノドリの最新刊を買いたくて、
本屋へ。
恥ずかしくて、ずっと下を見ていて
かなりの挙動不審(苦笑)


以下、ネタバレになるのでご注意を。



剛くんが演じた「大西直人」は。


身体だけの関係を楽しむ、妻夫木くん演じる
「優馬」の前に現れた男。
一緒に棲み始めたふたりは、やがて心を通わせて
いく。
しかし、優馬は、直人を殺人犯ではないかと疑い
はじめ…。


ざっと、本当にざっと書くとこんな話。


剛くんと妻夫木くんの、役作りのための同棲は
有名ですがふたりが本当の恋人に見えました。


本編は、この東京編・千葉編・沖縄編で構成
されているのですが時間的には、東京編が
一番短く感じました。
その短い時間の中で、直人と優馬がゆっくり
愛を育んでいったように感じることができた
のは、監督の演出力、そして、それに応えた、
ふたりの役者の演技力だと思いました。




最初にふたりが出会った場所が、
ハッテン場?サウナ?で、そこを歩く優馬の
目線で映像が流れるのですが、その目線の先で
繰り広げられている男性同士の光景は、正直、
思わず固まってしまうもので、この先大丈夫
かしらなんて思ってしまいました…。


優馬は隅っこで三角座り(所謂、体育座り)して
いる直人をみつけてアプローチしますが、彼は
それを手で払い除けます。
ムッとした優馬は、嫌がる直人を無理矢理抱く
のですがこのときのブッキーが、とにかく
エロいのです。
もう本物のゲイにしかみえない!
一方の剛くんが、押さえつけられたときに
「キッ!!」って睨む顔と、事後に「ツーっ」
て糸引く涎が、またエロくて、さっきまで
思わず閉じてた目を見開いてました(笑)


あんなに抵抗していたのに、
「お腹減った」「ラーメン食べ行こ」って
展開に
え?直人、いいの?って感じでしたが(笑)。


そこからのふたりは、恋人同士として関係を
深めていくのですが、


まずは、あのコンビニ弁当の場面、大好きです。


直人が買ったお弁当がね、袋の中で傾いちゃう
わけです。
右手にはたくさんの荷物が入っている袋がある
ので左手に持った袋の中の、その傾いたお弁当
の向きを一生懸命、膝を使ってなおすんです。
その仕草が、もう愛しくて、愛しくて


で、多分、スクリーンを見ている私と同じ瞳の
優馬の顔が写しだされます。重い、重いこの
作品の中で一番、癒される場面でした。



「俺はお前を信用していない」と言う優馬に
「信じてくれてありがとう」と答える直人。

この会話、もしかしてこのふたりの関係の核に
なる会話かもしれないのに、正直、映画館で
観たときはどうして、このタイミングでこの
会話?と思ったのですが




★妻夫木聡と綾野剛、「怒り」の関係性はなぜ愛しい?
 ″裏の感情″を忍ばせる芝居の深み


というコラムに

優馬が直人に対して「まだ信じていない」
「疑っている」と伝え、
直人が「信じてくれてありがとう」と返す。
誰かを「疑う」人には、本当はその誰かを
「信じたい」という感情が隠れていて、
直人は優馬のそんな感情を読み取った。
この言葉が、直人が愛され始める瞬間だったと。


すとん、と落ちてきました。
実際、このあとからふたりの間に「愛しい」
という空気感が生まれた気がします。

脚本家・演出家/登米裕一の日常的演技論
というコラム、是非読んでみて下さい。


ふたりの心が、繋がってからのラブシーン。
やはり、男性同士のベッドシーンは、
異性同士のそれに比べると、見てはいけない
ものを見ている感覚に。
剛くんの白い肌と、ブッキーの黒い肌の
コントラストがまた生々しかった。


一方で、末期ガンの優馬の母がいるホスピス
での優馬、優馬の母、直人のシーンは、
空気が柔らかくて。


優馬の母を演じた、原日出子さんの、パンフ
レットの
「妻夫木さんも、綾野さんもふたりともとても
愛しくて身内みたいでした」というコメントを
見て納得。


ただ、このパンフに泣いている直人の写真が
写っているのですが本編ではカットされて
いて残念。
ソフト化の際には、ディレクターズカットっ
て形で観たいなと思っています。

結局、優馬の母は亡くなりますが、その時、
ふたりがお墓で話すシーンが、物語の最後に
強烈な形で返ってきます。







ふたりの幸せな時間が続いているある日
直人がカフェで女性と楽しそうに、穏やかな
笑みを浮かべて話している姿を目撃し嫉妬する
優馬。
折しも、友人宅に空き巣が多発していることも
合間って、強い言葉をぶつけてしまいます。
「言いたくない」
と繰り返すだけの直人に苛立つ優馬。
この時の優馬が、本当の恋人に詰め寄るようで、
ブッキーうまいなぁ。
ゲイってことを忘れさせて、普通の恋人同士に
見えます。


友人たちが空き巣被害にあっていることも重なり、
テレビで報道されている、逃亡中の殺人犯と
同じほくろを持つ直人を疑い始める優馬…。


初めて会った日に、ラーメン屋で、その
ニュースを直人の横で笑いながら見ていた
優馬が、女性と一緒にいた直人を見て
しまった、嫉妬心から疑念が深まっていく。


信じる…信じたい…信じられない…







そして、帰宅しなくなった直人


直人の携帯にメッセージを残す優馬の元に
警察から
「大西直人さんを知っていますか?」と
電話が入ります。


殺人犯かも…という優馬の疑念が一気に爆発し
「知りません」の一点張りで半ば強引に電話を
切り、歯ブラシなど、直人の物を次々と捨てて
いく優馬。
彼がいつも来ていた、少し大きめのカーディガン
さえ、ゴミ箱に…捨てた。








数日後、
あのカフェで、あの女性を見かけた優馬は
彼女に声をかける…直人の居場所を知りたくて。



彼女は冷静に、ある意味冷酷に、直人がもう
いないことを、
直人の最後の場所が、おそらく自分を待って
いたであろう公園であることを、
直人のあの時の笑顔が自分のことを語っていた
ときのものだったことを…

告げる。



この場面での、高畑充希さんの表情が
「知らないふりしたくせに」感が溢れていて
わずかな出番なのに、存在感があってさすが
でした。


てか、docomoの綾野記者と高畑記者との
斎藤さんゲームですら今見ると切ないかも…(笑)





「本当に大切なものは増えるんじゃなくて、
減っていく」




かつて、優馬の母が優馬に対して語っていた
言葉を彼女にも言っていた直人。
限られた自分の命を知りながら、直人はどんな
思いでこの言葉を聞き、また言ったのかと思うと、
胸につまります。



信じてくれて、ありがとう



と言ってくれた直人を信じられなかった自分。


俺はゲイであることがバレても平気だと言い
ながら母の葬儀には直人を呼べなかった自分。
そんな自分を、キラキラしている憧れの存在だと
言ってくれていた直人…。

もう、取り戻せない。
疑ったばかりに大切なものを全て失って
しまった。
直人のものを全て処分にてしまった優馬の元には
もう、何も残っていない。

一人泣きながら歩く優馬の涙は嗚咽に、
変わっていく。

一緒の墓に入る?とういう優馬に、数日後
返した直人の言葉



『一緒には無理でも、隣だったら…』



の言葉を思い出しながら、それは慟哭へと
変わっていきました。






今、こうやって思い出すだけで、自分の喉の
奥が痛くなるくらい悲しかったし、切なかった。



直人は、とても儚くて、最初から最後まで、いつ
フッて消えてしまうんだろうという存在感でした。


過去にゲイを演じたことがあるとはいえ、
今回のような、がっつりとしたラブシーンは
初めてだったので映画を観るまでは、結構
不安だったのですが、本当に、スクリーンには、
優馬と直人しかいなくて
綾野剛と妻夫木聡を思うことがなかったです。


この感覚って、剛くんの作品では
「そこのみにて光輝く」でしか、感じたことが
なくて。



切ない物語ではあるんですが、そこにはやはり
同性愛というものが深い影を落としていたと
思います。

優馬が直人のことを知らないふりをしたのは、
直人が殺人犯かもしれない、ということよりも
彼が犯人だった場合、一緒に住んでいる自分が
ゲイであることがバレることを何よりも恐れて
いたような気がするのです。
もし、直人が女性だったら、彼は殺人犯だと
疑っていたとしても「知っています」と答えて
いたような気がするのです。そうすれば、
あんな姿も見れない別れなんていう、
最悪の結末はなかったのでは…。


でも優馬にとっては、まさに最悪の結末でしたが、
直人にとってはそうでなかったことが救いです。


優馬は、最後に、それこそ唐突に直人の病を
聞かされるのですが、最初に優馬に会った
ときも、優馬の母の病院で待っていたときも
床に座っていた直人は、あとで思うと体力的な
限界が近かったのでは、というように思わさ
れます。
では、
なぜ優馬に病気のことを話さなかったのか…。
自分の限界を悟ったからではと。


母を失い、悲しみのどん底にいる優馬に、今
また自分も死んでしまうであろうことを。





直人は幸せに逝ったのだと思います。
優馬に殺人犯だと疑われているのを知らないまま
優馬を待ちながら、公園で逝ったのだから。






『怒り』


東京編でいうと、直人を信じられなかった
優馬の自分自身への怒り。


直人は、きっと施設で育った環境の中で、
既に色々な怒りを体験していて
(それを表すセリフに「分かろうとしない人は、
何を言っても分からない」ってありましたね)
作中で直人の怒りがあるとするなら、剛くんも
言ってた気がしますが、病気によって優馬と
離れてしまうことに対する怒り、でしょうか。



とにかく、東京編に関しては
怒りというより、哀しみと儚さの物語でした。






番宣で、ブッキーと剛くんのツーショットを
見ると(良かったね~)と、素直に思います。
ホッとしますね(笑)






あぁ、いつもながら自分のボキャブラリーの
無さが嫌になります。ダラダラと書いてしまい
思っていることの半分も文章に出来てないです。


映画をご覧んになった方の感想が聞きたいです。




千葉編、沖縄編はあらためて書きたいと思います。




ちなみに原作では、直人は優馬の母と一緒の
お墓にいます。
この時の、優馬と優馬の兄との会話が、
また泣けます。





追記

怒りとは関係ないのですが、優馬と直人を連想させる
「ニューヨーク・ニューヨーク」という
羅川真里茂さんが、ずっと前に描かれた漫画が
おすすめです。是非、読んでみて下さい。